3歳児くんの保護者をしています盛田諒ですこんにちは。保育室までの15分、ベビーカーをごろごろ押していると春があちこちに見つかるようになってきました。「梅びら(梅の花びら)」「椿落ちてる」「水仙だよ」「あっウグイス」。そういえば昨日は梅にメジロがいたよ。梅にウグイスってあれはコウライウグイスのことらしいね。ほら花札の。表菅原30文。いや知らんわ。
●微熱が発生「新型ウイルスか!?」
そんな早めの春のさなか、週末に37.6℃の微熱が出ました。
子ではなく私に。「新型ウイルスか!?」と緊張が走ります。私は寝室に隔離され、妻は感染症対策ハンドブックをプリントアウト。私が触れたものにもれなく除菌スプレーをかけて回っていました。その日は90歳近くになる知り合いに会っていたのですが、「(会ったのは)失敗だったなあ」という妻の声がふすまごしに聞こえてきました。切ない。
一方、ウイルスのことを知らない子どもは「お父さんお熱出ちゃったの?」くらいのゆるさで救われます。念のため子どもと寝室を分けて寝ようとリビングにテントを張ってふとんを敷いたところ、子のテンションが爆発して、遅くまで大はしゃぎする声が聞こえてきました。
妻は翌日、子どもを連れて実家に一泊。結局その日のうちに熱は下がり、私はふとんの中で海外ドラマ「トレッドストーン」を見ていました。長引かなくてよかったです。そしてトレッドストーンは面白いです。なぜロシアの兵士がカンフーで戦っているのかはよくわからないのですが。
●生活のあちこちに混乱の影響が
新型ウイルスをめぐる混乱の影響は、生活のあちこちにあらわれています。
マスクが品薄なのは相変わらず。スーパーは世界的に取り付け騒ぎのような状態になり、近所のスーパーも根菜を中心に売り切れていました。都内に住んでいる知り合いは「鍋つゆさえ消えた」とフェイスブックに書いていました。
保育室は入り口で子どもと荷物を預ける形になりました。大人が室内に入るといけないということで子どもは最初戸惑って泣きました。
近くの図書館は資料の貸し出しと返却だけになり、館内で本を読んだり作業をすることはできなくなりました。児童館は遊び場である「ひろば」が使えなくなり、乳幼児健診も延期になりました。代わりに公園が激混みになったという話も聞いています。
楽しみにしていたピクサーの新作と007は公開延期になりました。推しの舞台はどうにか観られましたが、ライブは中止が相次いでいます。
●「子どもの安全第一」高齢者は大丈夫?
首相が2月27日、全国すべての小中高・特別支援学校を対象として春休みまでの臨時休校を要請したことの影響も出てきました。
近所の小学校も要請どおりに休校になりました。自治体の判断ですが、「子どもたちの安全を第一に」なんて言われたら「休校にしないと危ないんじゃないか」と思いますよね。保育室には小学生の子どもがいる保育士さんも多く、「どうしたらいいか……」と困り顔で笑っていました。
映画館では休校にあわせて「小中学生のお客さまは利用をご遠慮いただく場合があります」といった注意書きを見かけます。一方、高齢者の姿は普通に見かけます。妻の知り合いは「子どもはスイミング禁止になったけど、高齢者は普通に泳いでいる」と言っていたそうです。「高齢者は歩かない」とやじを飛ばした議員がいましたが、少なくとも映画館やプールには行っています。
感染症専門医・高山義浩先生の記事によれば、若者の重症化率と致命率は統計的にほぼゼロ%。一方感染した高齢者は約1割が重症化し、約1%が死亡するのではという見積もりでした。
学校は休みになりましたが、電車やバスなど公共交通機関は相変わらず混んでいます。国は在宅業務を推奨しますが、在宅勤務への切り替えは2月21日時点でまだ2割弱にとどまっているという調査もありました(リスク対策ドットコム)。高齢者は大丈夫なんでしょうか。
(余談ですが慣れない在宅業務でピリピリしてケンカになったという記事もありました。自身が育休取ったときに感じましたが、夫婦が24時間ずっと顔をつきあわせてるってのはなかなか厳しいものがありますよね、お察しします)
そういえば、もし妻と子どもが実家に戻っていたとき潜伏していたウイルスを義母や義父にうつしてしまっていたらどうしましょう。子どもが大量の病原菌をもらう保育園の入園シーズンはまもなくです。子どもが熱を出したとき両親の仕事はどうすればいいのかなど、心配はつきません。
●大変なときこそ外に目を向けたい
どうすれば安全なのか。何をすれば子どもを守り、感染拡大を防ぐことになるのか。国の説明だけでは、一人一人の生活はフォローできません。人々のあいだではウソが飛びかい、テレビでは声の大きな人がいい加減なことを言っていて、まともな情報を集めるだけで目が回ります。おそらくまじめな人ほど眼球が高速回転しているんじゃないかと思います。
思い出すのは2011年の地震のことです。当時まだ子どもはいませんでしたが、東京電力が事故を起こしてからは資料や記事をあれこれ読み、信用のできる専門家は誰なのかと目を回したことをおぼえています。あれから9年、事故についてのニュースは減り、事故でいやな思いをした人の話も少なくなりました。3月11日に予定されていた東日本大震災九周年追悼式は中止となり、それぞれに黙とうを捧げる形になりました。それはいいのですが、今の混乱も、この不安や負担も、時が過ぎれば忘れられるのかということがうっすら不安になってきます。
中国では感染者数が減少傾向にあると伝えられています。東京マラソンが予定どおり開催されたように、東京五輪も予定どおり開催されるようです。やがてフェイドアウトするように騒動が終息を迎え、「今年はいやなことがあったけど、五輪は盛り上がってよかったねえ」なんて言われるのかもしれません。次は大阪万博だなんて言って、新しいニュースに移ってしまうかもしれないです。
国は時間がないからと相談や説明をすっとばして休校を要請し、小さな子どもがいる私たちに向けてまっさきに「大変なご負担をおかけする」と言って「ご理解」を求めました。子どもと過ごしていると、風にページがめくられるように時が過ぎ、春はいつのまにか夏になり、昨日の苦労は今日の苦労に上書きされて忘れてしまうものですが、いまのことは必ずおぼえておきます。
とはいえ親が怖がったり怒ってばかりじゃ子どもも大変です。幸い、災厄の中でも季節はめぐります。マスクをずらして梅の花に顔を近づければ甘い匂いがしてきます。大変なときこそ外に目を向け、体を伸ばして呼吸をしたいもんです。明日は晴れたら春を見つけに行き、雨が降ったらおうちでお花や鳥を見ることにいたしましょう。さあさ、どっちもどっちも!
書いた人──盛田 諒(Ryo Morita)
1983年生まれ。3歳児くんの保護者です。Facebookでおたより募集中。
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