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Windows Info 第211回

2画面タブレット向けのWindows 10Xをエミュレーターで動かす

2020年02月16日 10時00分更新

文● 塩田紳二 編集● ASCII

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従来のWindowsとは異なり、Exlorerではないシェルを持つ

 Windows 10Xは、従来のWindowsとは違うシェルを持つ。これまで、Windowsでは、Explorerがシェルになっていた。デスクトップやタスクバーなどは、すべてExplorerが実現していた。しかし、Windows 10Xでは、ファイルブラウザーとしてのFile Explorerという名前のプログラムはあるものの、もうシェルとしての役目を果たしていない。

 Windows 10Xのdual-screenシェルは、画面下にバー(タスクバーと呼ばれている)を表示し、タッチやマウスカーソルを乗せることで、起動中のプログラムアイコンとスタートメニュー、タスクビューアイコンを表示する。

 タスクバーは画面ごとにあり、右側のバーにのみ、時刻やアクションセンターの表示がある。また、起動中のアプリアイコンを右クリックしてタスクバーに登録することは可能だ。スタートメニューは、Office.exeアプリやOffice.comの起動ページのような感じで、上に検索欄、中央にプログラムアイコン、下に最近使ったファイルを表示する。

スタートメニューは、OfficeアプリやOffice.comのレイアウトに似ているが、これは、Windows 10 Ver.1903のプレビューで公開されていたが、その後取り下げられたSetsという機能の画面にも似ている

 dual-screenシェルでは、登録されたプログラムの起動程度しかできない。また、画面は上下に分割可能だが、基本的に左右の2画面は別画面として扱われる。デスクトップでいえば、マルチディスプレイで液晶モニターを左右に2枚ならべているのと同じような状態だ。アプリは基本的に1つの画面を専有して表示される。

通常はアプリを起動すると2画面のうち片方のみを専有して起動する

 ただし、Windows 10のエアロスナップと同じく、1つの画面の長辺を分割して2つのアプリを同時に表示させることはできる。基本的に2つの画面があるので、最大4つのアプリを同時に表示できる。

それぞれの画面は、長辺を2つに分割でき、2画面で最大4つのアプリを表示させることができる

 また、アプリは、2画面を利用する「スパン」モードでも表示が可能だ。

画面をドラッグすると、離したときにウィンドウが置かれる半透明のプレースフォルダーが背景に表示される。ドラッグしたまま中央のギャップにマウスカーソルを触れるようにすると、半透明のプレースホルダーが2つの画面にまたがり、SPANモードでアプリを表示する

 このとき、dual-screen SDKを利用して作成した「dual-screenアプリ」は、2つのディスプレイを意識して表示できる。2つの画面の間にはヒンジがあり「Gap」と呼ばれる表示がない領域がある。

 従来アプリケーションもスパンモードで表示することは可能だが、Gapを前提にしていないため、たとえば、その部分にアイコンなりがあると、左右に分かれて表示されるといった問題が起こる。これでも使えないわけではないが、dual-screenアプリは、注目点がGapを避けたり、2つの画面を使い分ける(たとえば、概要と詳細など)といった使い方ができるようになっている。

 使ってみた感じでは、付属のメールアプリが、どうもdual-screen対応で、スパンモードで表示すると左側がメッセージリスト、右側がメッセージ本文表示になる。

付属のメールアプリは、dual-screenに対応しているようだ

 現在のWindows 10でも、ウィンドウの大きさが十分大きい場合に同様の表示が可能だが、区切り位置をマウスで左右に動かせる。しかし、Windows 10Xのスパンモードで動作させたとき、区切り位置のあたりにマウスカーソルを置いてもマウスカーソルが変化しない。バージョンも、Windows 10 Ver.1909向けのの16005.12430.20136や、Fast Ringのプレビュービルド19564に付属する16005.12607.4100.0とも違い、16005.12430.20188.0となっている。

2画面タブレットへの本気度が感じられるWindows 10Xだが
Windows on ARMとの関係はどうなる?

 こうした使い勝手からみると、Windows 10Xはかなり広いユーザー向けにiPadやAndroidのタブレットを意識した作りになっている。かつてSurfaceシリーズなどに搭載されていたWindows 10S(現在ではSモードという位置付けになっている)が、UWPしか使えない簡易なWindowsだったことに比べるとかなり本格的な改良と言えそうだ。

 そもそもマイクロソフトは、Windows for Pen ComputingやTablet Editionなど、PCのタブレット化には早くからずっと取り組んできたが、どれもうまくいかなかった。Windows 8でもタブレットを想定したシェル環境を作ったものの、デスクトップでの使い勝手に問題があり、そもそもストアアプリ(モダンアプリ)自体がほとんど使われなかった。また、初代Surface向けにWindows RTといった製品もあったが、成功しなかった。

 Windows 10Xは、こうしたタブレット市場へのマイクロソフトの“リベンジ”的な製品ということもできる。年末までには、マイクロソフトをはじめ、DELL、HP、Lenovo、ASUSからdual-screenデバイスが登場するらしい。Lakefiledプロセッサを搭載し、モバイルネットワークに対応可能で、本格的なタブレットになるという触れ込みだが、そうするとWindows on ARMはどこに行ったのか? という気がしないでもない。

 マイクロソフトには、Windows 10 MobileやWindows RTなど、出してはみたものの、そのまま放置でサポート期間の終了を迎えた製品も少なくない。Windows 10XのARM64版が出るかどうかは、1つの注目ポイントだといえる。

 次回はWindows 10Xをもう少し掘り下げてみたい。

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