2020年2月6日、チーム向け開発ツールを展開するアトラシアンは自社イベント「TEAM TOUR」の開催にあわせてメディアブルーフィングを開催した。イベントでは本国のエグゼクティブや日本法人代表が登壇し、エンタープライズ企業でのデジタルトランスフォーメーションにアトラシアンのツールがどのように寄与できるかを説明した。
組織の縦の壁、横の壁を破壊するチーム向けツール
冒頭登壇した代表取締役社長のスチュワート・ハリントン氏は、アトラシアンの会社概要と日本市場へのコミットについて説明した。
2002年、オーストラリアで創業されたアトラシアンは、ソフトウェアのチーム開発を支援するツールを提供している。アジャイル開発向けのプロジェクト管理ツール「Jira Software」をはじめ、バージョン管理ツール「Bitbucket」、コラボレーションツール「Confluence」、タスク管理ツールの「Trello」など15製品を展開している。
創業から17年を経て、製品は世界190もの国・地域に展開しており、グローバルでの従業員は4000名におよぶ。最新の顧客数はAirbnb、Amazon、NASA、Spotifyなど16万社。ゲームやWebサービス開発で用いられているイメージの強いアトラシアンだが、実際は金融、メディア、自動車、コンシューマー、ヘルスケアなど幅広いという。
ハリントン氏は、日本の課題は「生産性とイノベーションのスピード」と指摘する。これに対して、アトラシアンのツールはカルチャーと生産性の向上を提供できるという。ハリントン氏は、「日本はもともとチームが強いカルチャーをもっている。われわれのツールを使うと、横の壁・縦の壁をとりはらって、アジャイルなイノベーションが実現できる」とアピールする。
アトラシアンの日本法人は7年前に設立し、横浜の馬車道にオフィスに構えている。世界中でローカルオフィスを構え、現地の言語でサポートしているのは日本だけ。「言葉の壁が大きいので、マーケティング、Webサービス、サポートなどは日本語でやっている」とハリントン氏は語る。もう1つは市場のポテンシャルは大きいこと。「創業当初から比べて売り上げは30倍に伸びている」とのことで、今後も日本語でのサポートを充実させていくという。
コラボレーションの促進によりイノベーションを加速
続いて登壇したアトラシアン プレジデントのジェイ・サイモンズ氏は、アトラシアンが掲げるミッションやDXを実現するにあたっての課題について語った。
アトラシアンは「あらゆるチームの可能性を解き放つ」というミッションを掲げている。企業が時代の激しい変化に対応するにはテクノロジーの導入が必須となり、開発やR&D、イノベーションのためにチームのコラボレーションが重要になる。しかし、ビジネスの変革を目指す多くの組織をスケールさせたり、サービスのアジャイルなデリバリー、イノベーションのスピードを向上させることに多くの課題を抱えているという。「変革のスピードについていけないと、生産性が低下し、よりスピードの速い競合により、人員の削減や利益損失などに陥る」と指摘する。
こうした課題に対して、アトラシアンはツール自体のクオリティはもちろん、実践方法のサポートに強みを持つという。「言うのは簡単だが、コラボレーションは複雑で、難しい作業だ。アトラシアンはアイデアをプランニングし、ビルド・デリバリ、メンテナンス、マネジメント、レスポンスまですべてをサポートしている」(サイモンズ氏)。いわゆるアジャイル開発に加え、運用との連携を必要とするDevOps、ITサービスマネジメントまで含めて、役員レベルや現場まで一貫してサポートしているのも大きな特徴だという。「ユーザーはおおむね開発者が1/3で、残りはビジネス部門になっている」(サイモンズ氏)とのことで、組織全体の「アジャイル化」に大きく貢献しているという。
アトラシアンは創業以来アジャイル開発を支援してきた。「15年前に生まれたアジャイルをもっと進化させるためにアトラシアンは生まれた」とサイモンズ氏は語る。2030年には約8割のエンタープライズ企業が市場投入までの時間短縮のためにアジャイルを活用すると見られており、この数年はクラウドへの移行も急速に進んでいる。
事例として挙げたのは、玩具メーカーのレゴだ。長らくブロックを作っていたレゴは、デジタルトランスフォーメーションを経て、今も世界最大の玩具メーカーとして君臨している。「レゴにとっては『マインクラフト』のような画面上で動かせるビデオゲームがディスラプターだった。しかし、レゴはアトラシアンを活用したDXにより、ビジネスプロセスや開発体制を変え、今や新しい映画が上映されると同時に商品をリリースすることが可能になっている」とサイモンズ氏は語る。
現在、アトラシアンの売り上げの2/3はJira SoftwareとConfluenceが占めているが、成長率で言うとITサービスデスク管理を行なう「Jira Service Desk」とカンバン型タスク管理のツール「Trello」の2つが高いという。他社との差別化について応えたサイモンズ氏は、「開発者向けのツールは世の中には数あるが、われわれは創業以来コードより、むしろコラボレーションに焦点を当ててきた。ソフトウェア開発は開発者だけではなく、デザイナー、事業部門、サポートなどのさまざまなチームが関わってきている。すべてのステークホルダーをカバーできる製品を提供していることが評価されている」と語る。