リアル店舗主導で新たな顧客体験を生み出すパルコのDX戦略と、ウェブやECのこれからの役割
パルコ×BiNDup対談
提供: デジタルステージ
KPIはオリジナルで考える時代に。店舗や企業に合った独自のKPIを立てよう。
── DXに関するさまざまな取り組みについて、KPIをどのように設定していますか?
林:今後大切になるKPIの考え方は、ショッピングセンターの「売上の定義」です。テナントスタッフの皆さんの接客によりお客様の満足度が上がり、商品に納得し、はじめて商品やサービスの購入が成立します。つまり、接客の結果としての購入であって、この合計を大きくすることが、売上全体を大きくすることにつながります。
では、ショッピングセンターとしての満足度はどう測ればよいのか。この点は2つ指標があって、ひとつは「顧客維持率」です。LTV(Life Time Value)を大きくするために大切な指標で、1回の買い物金額が高いというよりは、長い期間にわたり何度も買い物に来ていただける、ということです。
もうひとつは「買い回り率」です。複数の店舗で買い物をしていただける率であり、あるショップの他店への貢献という意味合いもあります。データで見ると、あるショップでしか買い物をしなかった方の顧客維持率は34.5%、他店でも買い物をした方の顧客維持率は65.5%と、31ポイントの差があります。複数のショップで購入した方のほうが、再訪してくれる確率が圧倒的に高いんです。
熊崎:我々がリアル店舗やECからご相談いただいたとき、まずは時代の変化、具体的には「多様化の時代」ということを伝えています。他店や他企業の成功事例が、そのまま自分のところでも通用するわけではありません。KPIの設定という面でも、一定の顧客層には有効かもしれないけど、他の層には有効でないかもしれないと。
昔のトレンディドラマのように、テレビが先導して、画一的な憧れや価値観を提供し、消費者がそれについていく時代ではありません。インターネットにあふれる膨大な情報から、自分にフィットするものを選び、ライフスタイルや趣味嗜好に反映させる時代です。単に買いやすい店舗、便利なだけの店舗は淘汰されていくでしょう。
いかに顧客から学ぶか。自分たちのブランドや商品を愛してくれている方々が、どのようなライフスタイルで、どのような嗜好性をもっていて、どのようなことに価値を見出してくれるのかを学ぶことが大切です。余計な部分を削ぎ落とし、シンプルに自分たちの生業を見つめ直す。ローコストで効率のよいテクノロジーを取り入れ、実現していく。KPIについても、他社の真似ではなくオリジナルで考えることが重要です。
──最後に、パルコとBiNDupが考える未来像についてお聞かせください。
林:来店された方が、目当てのものが見つからずに探し回り、見つけたと思ったら「すみません、在庫が切れています」というガッカリ感は、インターネットショッピングではあまりないと思います。これをアナログな方法で解決しようとすると非常に難易度が高いのですが、デジタル化されたショッピングセンターでは解決できますし、その分、ショップは「おもてなし」の接客に集中できます。
探しやすさが確保されている中で、適度に歩き回った結果、偶然立ち寄ったショップで得られた接客体験がよかったり、機械的なレコメンドではなく、新しい提案があったり。リアルのショッピングセンターとして「セレンディピティ(偶然の出会いによる幸福感)」を提供する場でありたいと思っています。デジタルを活用することで、ショップの皆さんの接客を通じてそれを提供しやすい環境を整えたいと。「ショッピングセンターからセレンディピティセンターへ」というのが、私が考える理想です。
また、先ほど説明した「唯一無二」というキーワード、そこにしかない価値を提供していく姿勢は、これからも大切にしていきたいと思っています。
熊崎:われわれのパートナー企業で、画像認識のAIを開発しているところがあります。Instagramなどの写真はもちろん、それこそ街行く人を撮った写真から、大手アパレルメーカーの膨大な商品の中から似た服を抽出できるAIができあがったそうです。素材となる生地の10年分のデータベースをAIに機械学習させたそうですが、それこそ唯一無二の精度とのこと。林さんがおっしゃっていた「目当てのものを探す」という点で、リアル店舗にも活かせるしくみだと思うんです。
ECよりもリアル店舗の進化のほうが、デジタル化の効果が出やすいかもしれません。従来、「アナログにはアナログのよさがある」と踏んばっていた分、積極的にデジタル化に取り組むと、お買い物体験を一気に変えられるかもしれません。ECではインターフェイスがちょっと変わったくらいの話が、リアル店舗では新しい身体的な体験やセレンディピティが生み出せます。BiNDupも、そのような取り組みのお手伝いをしていきたいですね。
世代的な話をすると、デジタルネイティブは、むしろデジタルの環境の中にいないと不安だと思います。肌身放さずスマホを持ち歩いていますし、ショッピング中もまったくデジタル機器に触れないのは、かえって不自然です。スマホで調べてからお店に向かったり、お店についてからもスマホで調べたり、といったことが当たり前の時代です。店舗のデジタル化は、そういった環境変化にも通じると考えます。
林:渋谷PARCOは、必ずしも若者だけをターゲットにしているわけではなく、各国から来街されるお客様に楽しんでいただける施設を目指しています。例えば、地下1階の「未来日本酒店/KUBOTA SAKE BAR」では、その人に合うお酒とおつまみをAIが提案してくれますが、世代や国籍を超えて日本酒という共通言語で語り合える場であり、また、地下1階全体が「CHAOS KITCHEN」というフロアゾーン名が表すようにミックスカルチャーを楽しむフロアなんですね。
現在は世代を問わず、スマホという共通のデバイスを使って生活しています。国内だけでなく、海外から来た人もそうです。特に渋谷はインバウンドのお客様も大きい。渋谷PARCOが生み出すミックスカルチャーは、外国人や観光客の方々にも楽しんでいただけると思っています。
熊崎:渋谷PARCOの集客や接客に関するDXの取り組みは、楽天市場やアマゾンが進めるオンライン主導ではなく、オフライン主導のオムニチャネル化です。消費者との唯一無二の体験を生み出すことに注力しており、BiNDupを実店舗のホームページ運営に活用している人には、とても参考になるはずです。
クラウドでのデータ管理や強力なマーケティング機能は、これからのDXに不可欠。BiNDupは、このような新しい時代のホームページを支えるCMSとして、ますますパワーアップしていきたいと思っています。
(提供:デジタルステージ)