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ツールもある、データもある、人も投入した―それでもうまくいかない企業への処方箋

データドリブン経営の実現をはばむ「3つの壁」、セゾン情報に聞く

2020年01月28日 07時00分更新

文● 大塚昭彦/TECH.ASCII.jp

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3つの壁(2):今あるデータはそのままでは使えない「データ未整備の壁」

 2つめが「データ未整備の壁」だ。これについて今野氏は、「皆さんが持っているデータは『そのままでは使えない』前提で取り組んでほしい」と説明する。

 データがあっても使えないとはどういうことか。たとえば複数の業務システム間で、同じ項目名のデータでも粒度(単位や期間)が違ったり、入力形式が違ったりする。当然、これをそのままBIツールで集計しても、本来求めるものとは異なる結果しか出ない。そして、個々のデータについての説明ドキュメントが残されていることはほとんどなく、整備するにしても手間がかかる。

粒度や形式がバラバラのデータを持ち寄っても、そのままでは分析には使えない

 この問題については、前述したKPIの合意に基づいて地道にひとつずつデータを調査し、整理していく必要があるという。KPIが合意できれば、その算出に必要なデータも自ずと見えてくる。そのうえで、現状あるデータと必要なデータとの「違い」を理解し、最終的にどうするのか(データ変換、再入力、追加など)を意思決定する。そして必ず、そのデータの利用目的やデータソース、粒度などを記したドキュメントも残す。

 「セゾン情報が導入支援する場合、われわれが“データ探偵”になって、手数も使いながらデータをソースまでたどり、違いが生まれる原因を調査していく。そのうえで顧客に意思決定をしていただく。非常に地味な部分ではあるが、この部分が最も顧客に重宝されている点でもある」(今野氏)

解決策。合意したKPIに基づいて現状のデータを見直し、整備を進める。ドキュメント化も重要だ

3つの壁(3):遅くて業務に使えない「パフォーマンスの壁」

 今野氏が最後に指摘する壁が「パフォーマンスの壁」だ。分析/可視化の処理が重くなりすぎて、現実的には業務に使えないという事象である。「ここは、IT部門でなければなかなかわからない部分」だと今野氏は語る。

 原因としてはまず、セルフサービスBIで現場部門自身がダッシュボードを構築できるようにした結果、ひとつの画面に大量の帳票を詰め込んでしまうケースがあるという。ここでは、ほんとうに見たい(可視化したい)データはどれなのかをきちんと絞り込んで、画面を再設計することになる。

 もうひとつの原因は、リアルタイムでやるべきでない大量の計算処理をやらせてしまうようなケースだ。たとえば過去10年ぶんの売上を集計する場合に、過去のデータも含め全件をあらためて集計し直せば、当然ながら処理には時間がかかってしまう。対策としては、たとえば月次や年次の売上の期間集計はあらかじめ別途計算しておくことで、処理時間を大幅に短縮できる。

BIのダッシュボードに処理要素を詰め込みすぎたり、大量の過去データを再分析させたりして、現実的に「使えない」パフォーマンスになってしまうことも

 さらに、データベースの種類(OLTPとOLAP)によって向き不向きがあり、場合によってはデータベースを移行したほうが良いなど、パフォーマンスを最適化するためにテクノロジー面で解決すべきことも多くある。「こうした場面ではIT部門に相談したり、われわれ専門家に声をかけたりしていただければ」と今野氏は述べる。

最も重要かつ大変な取り組みは「ステークホルダー間でのKPIの合意」

セゾン情報が考える、データドリブン経営の実現をはばむ「3つの壁」と対処法のまとめ

 3つある「壁」のうち、顧客自身が最も力を入れなければならないのは「組織の壁」への対応、つまり「ステークホルダー間でのKPIの合意」だという。今野氏はこれまでの経験から、この最初の「壁」をうまく乗り越えることができれば、社内的な協力関係も醸成され、その後は比較的スムーズに進むと語った。反対に、この段階でつまづいてしまうと、プロジェクトそのものが瓦解してしまう可能性すらある。

 「データ未整備の壁やパフォーマンスの壁は、われわれのような外部ベンダーを使うという手段も含め、ある意味“人海戦術”でも乗り越えられる。やはり、KPIの合意が最も大変な作業だ。KPIの合意ができれば、たとえ新しいBIツールの導入で新しいKPIが示されるようになったとしても、現場の納得が得られないようなことは起こらない」(今野氏)

 TableauやDataSpiderのようなITツールも、まずはそうした企業側の準備ができていなければうまく機能しない。セミナーではツールの紹介よりも、まずはこうしたポイントを強調して話しているという。

 ちなみに、一般的なデータ分析作業において、作業時間の8割はデータの準備作業(データプレパレーション、データクレンジング)に費やされるという。その処理をセルフサービス/ノンコードで自動化するのが、セゾン情報のDataSpiderだ。同社ではこのデータ準備作業を「データ研磨」と呼んでいるが、それは「ダイヤの原石を磨き、価値を取り出すような作業だから」だと花香氏は説明した。

 「もちろんデータ研磨を自動化できるメリットもあるが、属人化した手作業やスパゲティ化した手組みコードによる処理とは異なり、DataSpiderを通すことでデータと処理の流れが可視化され、たとえ担当者がいなくなってもデータを“資産”として引き継ぐことができる。これがDataSpiderの大きなメリットだ」(花香氏)

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