Outposts/Wavelength/Local Zonesを解説、「AWSが越えられなかった壁」を乗り越える
Outpostsなど“AWS低遅延3兄弟”を知る! KDDIコミュニティが勉強会
2020年01月15日 08時00分更新
Local Zones:都市圏/固定網向けのMECサービス、日本でのメリットは?
“低遅延3兄弟”、次はLocal Zonesだ。対象の都市および周辺地域のエンドユーザーから10ミリ秒未満の低遅延でアクセスできるよう設計された、近傍型/小型のゾーンである。米国ロサンゼルスで一般提供を開始しており、AWSでは今後も顧客ニーズに応じて提供都市を増やしていく方針だ。
Local Zonesの位置付けについて大橋さんは、AWSが作った「固定網版のMEC(Multi-Access Edge Computing)」だと説明する。ちなみに、後述するWavelengthは「5G版のMEC」であり、アクセスネットワークとして有線接続と無線接続(モバイル網)のどちらを使うかや、それに伴う最適なユースケースの部分が異なる。また自社でデータセンターやハードウェアを持たずに済む点が、Outpostsとの大きな違いだ。
大橋さんは、考えられるLocal Zonesのユースケースとして「Outpostsを利用したいがコストやデータセンターの問題で自社導入できない」「自社データセンターではなくエンドユーザーの近隣にAZを持ちたい」といったものがあると説明する。
ただし、米国のように国土が広い(=近隣のAWS AZとのレイテンシが大きい)場合はともかく、日本ではメリットが出にくいのではないかと大橋さんは語る。国内で考えうる利用シーンとしては、東京リージョンと距離のある地方都市に設置されたLocal Zonesを利用して、その都市内だけで展開するサービスを低遅延化するというものだが、サービス提供側でユーザー規模とコストの折り合いがうまくつくかどうかは未知数だからだ。
Wavelength:5G網向けのMECサービス、KDDIがパートナーとして国内展開
“低遅延3兄弟”の最後として、Wavelengthが紹介された。Wavelengthは、AWSが各国のモバイルキャリアとパートナーシップを組んで展開していくMECサービスであり、日本ではKDDIがそのパートナーとして発表されている。現在KDDIは国内サービス提供に向けた準備中であり、大橋さんもそこに携わっているという。
MECソリューションとしてのWavelengthのメリットとしては、AWSサービスがそのまま展開される点だと大橋さんは説明する。従来のMECソリューションは各社独自のハードウェア、ミドルウェアにより構成されており、オンプレミスやクラウドとシームレスにワークロードを移行させたい場合には「コンテナだけが唯一の希望の光だった」(大橋さん)。WavelengthではEC2やEBS、ECS、EKS、VPCといったサービスが利用できるので、AWSクラウドからの移行が容易だ。
なお、Wavelengthで使えるAWSサービスはOutpostsとほぼ同等だが、「OutpostsとWavelengthはまったく別物」だと大橋さんは強調した。サービス提供形態はもちろん、バックエンドのハードウェアも異なるものだという。また前述のとおり、Wavelengthは5G/モバイル網のエッジ、Local Zonesは固定網のエッジでMECサービスを提供する。
会場の参加者からはWavelengthに対する質問も相次いだ。KDDIでのサービスはまだ未決定の部分が多いものの、大橋さんは現時点で答えられる範囲で説明を行った。
まずエンドユーザーへのサービス提供はAWS側から行われる。大橋さんは「あくまでも予想」だと前置きしながら、Wavelengthユーザーは、AWSのマネジメントコンソールから他のAZと同じようにWavelength Zoneを選択できるようになるのではないかと語った。
KDDIが国内に展開するWavelengthゾーンの数については、現在検討中であり未定の状態だと述べた。ただし5G回線が前提のサービスなので、5Gエリアを中心に展開が進む見込みだ。サービス料金についても未定だ(AWS側から未発表)。
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“低遅延3兄弟”解説のまとめとして大橋さんは、3つのサービスとも基本的には上位に親リージョンを持ち、コントロールプレーンもAWS側にあるものの、それぞれの提供形態と用途は異なると述べた。またもともとは低遅延を意識したものだが、今後のサービス/機能拡充によって「活用範囲は無限大に広がるのではないかと思っています」と語った。
「(Wavelengthパートナーの)KDDI本社だけでなく、KDDIグループ全体としてこれらのサービスを展開していけたらいいな、と思っています」(大橋さん)