EDSを買収し業績が回復
スパイ事件でDunn氏が辞任した後、CEOに就任したHurd氏。そのHurd氏が在任中の状況をまとめてみた。下表が総売上と営業利益/純利益をまとめたもの、さらにその下の表が2002年以降の部門別売上と営業利益をそれぞれまとめたものである。
HPの総売上と営業利益/純利益 | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|
年度 | 総売上 | 営業利益 | 純利益 | |||
2001 | 452億2600万ドル | 14億3900万ドル | 6億8000万ドル | |||
2002 | 565億8800万ドル | -10億1200万ドル | -9億300万ドル | |||
2003 | 730億6100万ドル | 28億9600万ドル | 25億3900万ドル | |||
2004 | 799億500万ドル | 42億2700万ドル | 34億9700万ドル | |||
2005 | 866億9600万ドル | 34億7300万ドル | 23億9800万ドル | |||
2006 | 916億5800万ドル | 65億6000万ドル | 61億9800万ドル | |||
2007 | 1042億8600万ドル | 87億1900万ドル | 72億6400万ドル | |||
2008 | 1183億6400万ドル | 104億7300万ドル | 83億2900万ドル | |||
2009 | 1145億5200万ドル | 101億3600万ドル | 76億6000万ドル | |||
2010 | 1260億3300万ドル | 114億7900万ドル | 87億6100万ドル |
2005~2010年の部門別売上 | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|
年度 | IPG | HPS | PSG | ESS | ||
2002 | 203億2600万ドル | 90億1000万ドル | 218億9500万ドル | 111億4600万ドル | ||
2003 | 226億2300万ドル | 123億500万ドル | 212億2800万ドル | 153億7900万ドル | ||
2004 | 241億9900万ドル | 137億7800万ドル | 246億2200万ドル | 145億9300万ドル | ||
2005 | 251億5500万ドル | 155億3600万ドル | 267億4100万ドル | 167億100万ドル | ||
2006 | 267億8600万ドル | 156億1700万ドル | 291億6600万ドル | 173億800万ドル | ||
2007 | 284億6500万ドル | 166億4600万ドル | 364億900万ドル | 187億6900万ドル | ||
2008 | 293億8500万ドル | 209億7700万ドル | 422億9500万ドル | 194億ドル | ||
2009 | 240億1100万ドル | 346億9300万ドル | 353億500万ドル | 153億5900万ドル | ||
2010 | 257億6400万ドル | 349億3500万ドル | 407億4100万ドル | 186億5100万ドル |
2005~2010年の部門別営業利益 | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|
年度 | IPG | HPS | PSG | ESS | ||
2002 | 32億4800万ドル | 8億9100万ドル | -3億7200万ドル | -6億5600万ドル | ||
2003 | 35億7000万ドル | 13億7200万ドル | 1900万ドル | -5400万ドル | ||
2004 | 38億4700万ドル | 12億6300万ドル | 2億1000万ドル | 1億4200万ドル | ||
2005 | 34億1300万ドル | 15億1100万ドル | 6億5700万ドル | 8億1000万ドル | ||
2006 | 39億7800万ドル | 15億700万ドル | 11億5200万ドル | 14億4600万ドル | ||
2007 | 43億1500万ドル | 18億2900万ドル | 19億3900万ドル | 19億8000万ドル | ||
2008 | 45億9000万ドル | 25億1800万ドル | 23億7500万ドル | 25億7700万ドル | ||
2009 | 43億1000万ドル | 50億4400万ドル | 16億6100万ドル | 15億1800万ドル | ||
2010 | 44億1200万ドル | 56億900万ドル | 20億3200万ドル | 24億200万ドル |
ただ自分で出しておいてなんだが、少しイメージがわかりづらいのでグラフも示してみた。下のグラフが売上/利益で、左軸が売上、右軸が営業利益/純利益である。
2005年は売上はともかく、利益率がガクッと下がった年であり、ここからHurd氏は急速にHPの財務状況を改善していく。実際2005年と2010年を比べると、売上高は5割増といった程度でしかないが、営業利益は3.3倍、純利益は3.5倍に増加しており、この数字だけを見ていれば申し分ない。
下のグラフが部門別である。ここでの略称は以下の通りとなっている。また、一覧表ではあまりに数字が少ないのでSoftware/HPFSは省いて紹介したが、グラフの方はこちらも突っ込んでみた。
略称と正式部門名 | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|
略称 | 部門名 | |||||
IPG | Imaging and Printing Group | |||||
HPS | HP Services(のちにServicesと総称:理由は後述) | |||||
PSG | Personal Systems Group | |||||
ESS | Enterprise Storage and Server | |||||
Software | HP Software | |||||
HPFS | HP Financial Services |
さて、2005年までは? というと、売上は各部門それなりに拮抗しつつも、営業利益はIPGが大半を稼ぎ出しているという構図で、実際グラフ3の2005年は営業利益の半分以上がIPGによるものである。
ところがここから各部門ともがんばって売上と営業利益を伸ばしており、2008年にはIPGの営業利益は全体の36%ほどになり、そして2009年はServicesに抜かれるという事態になっている。なにが起きたかというと、EDSの買収である。
EDSは連載495回でも触れたが、米国の独立系ITサービスの会社であり、コンサルティングなども手掛けている。2007年度における売上高は221億ドルほどであったが、HPはこのEDSを2008年に買収する。
ただ、既存のHP Servicesに統合というのもすぐには難しいため、まずはHP Enterprise Servicesという部門とされ、既存のHP Servicesと並ぶ形になった。これが、HPSが途中で“Services”に名前が変わった理由である。
この買収の効果は大きく、Servicesの売上はPSGに匹敵するほどとなり、営業利益も全部門でトップに躍り出た。もちろんIPGも別に不調というわけではなく健在であり、この結果として2010年には非常にバランスが良くなったと言えよう。
PSGやESSは景気の影響を受けやすいので2009年は一時的に売上を落としているが、2010年にはこちらも復調。ServicesやIPGに比べると利益率は低いとはいえ、どちらも20億ドル以上の営業利益を上げ、ビジネスとして存続できる筋道が立ったと言える状態になった。(続く)
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