2019年12月3日、ソースコード管理サービスを提供するギットハブ・ジャパンはユーザー向けイベント「GitHub Enterprise Roadshow」を開催。11月に開催された年次イベント「GitHub Universe 2019」での新発表について登壇者自身が披露し、参加者とのQ&Aも行なわれた。
2025年には1億人の開発者がGitHubを使う
ソースコード管理からチームでのCI/CD(継続的インテグレーション/デプロイ)環境の実現へ進むGitHub。イベントの冒頭、登壇したのはGitHub Universe 2019でも新機能を発表した米GitHubのVP of Engineeringであるダナ・ローソン(Dana Lawson)氏だ。
最新動向を披露したローソン氏は、GitHubを使う開発者がすでにグローバルで4000万ユーザーを超えていることをアピール。このうち1000万ユーザーは2019年に増えたもので、サービスが急成長を遂げていることがわかる。ちなみに日本のGitHubユーザー数も100万人以上になる。
企業数で見るとユーザーは300万社にのぼっており、Fotune 100の半分が利用しているという。また、OSSに関しては99%のプロジェクトがGitHubでソースコードを共有しているとのこと。ローソン氏は、「1つの会社で複数のOSSが動くようになっている。2025年には開発者は1億人に達すると見込んでいる」と語る。
今回のGitHub Universe 2019では「Code To Cloud」をテーマに、クラウド上でのCI/CDのサポートを強力に推進している。これを実現する2つのサービスが、GitHub ActionsとGitHub Packagesだ。
正式リリースされた「GitHub Actions」はGitHub上のイベントをトリガーにワークフローを実行する機能。Linux、Mac、Windows、コンテナなど幅広い環境に対応するほか、異なるランタイムのバージョンで並列でビルドを行なえるマトリックスビルドも可能になる。実際、PinterstではOSSプロジェクトをGitHub Actionsに移行することで、ビルド時間が80分から10分までに短縮した。さらにサードパーティにも開放されており、現在1200以上のアクションがマーケットプレイスに登録されている。
また、GitHub Packagesはパッケージレジストリとして機能し、パブリックでもプライベートも利用可能。NPMやDocker、Maven、RubyGems、NuGetなどに対応し、さまざまなCIツールとも利用できる。こちらもすでに正式リリースとなっている。
コード管理やCI/CDを手元から行なえるGitHub Mobile
もう1つの「Daily Experience」というテーマでは、まさに日常的な使い勝手の向上がアピールされた。デスクトップ版の「GitHub Desktop」はコマンドベースから、ポイント&クリックの使い勝手に進化。「コマンドをメモした付箋を使わないでもOK」(ローソン氏)だという。
操作性は大きく向上した。関数やメソッドから定義へのジャンプ、リファレンスも容易に参照できるコードナビゲーションなども用意され、検索も大文字・小文字の区別や完全一致などのオプションを選択できるようになった。また、コードレビューの割り当て機能を使えば、リーダーに集中しがちなコードレビューを複数のレビュアーに自動割り当てしてくれる。さらに、プルリクエストのリマインダー機能などが追加されており、作業の効率化につながるという。
特に通知機能はチームでの利用を前提に大きく刷新された。「10年以上に渡ってサービスを提供してきたが、正直通知の使い勝手はあまりよくなかった。システムのリフレッシュは必要だった」(ローソン氏)とのことで、ユーザーの定義に基づいたカスタムフィルタにより、重要な通知(High Signal Notification)のみに絞り込むことが可能になった。
そして今回最大の発表はモバイル版アプリ「GitHub Mobile」の提供開始だ。GitHub Mobileは閲覧やコメント、通知の受信のみならず、イシュー作成やプルリクエスト、レビューやマージまですべてモバイルで完結するフルネイティブアプリ。iOSとAndroid版も同じ操作感で扱うことができ、iPadでの利用にも最適化されているという。「電話でコードをマージできる。もはやデスクトップだけで作業する必要はなくなる」(ローソン氏)というGitHub Mobileは現在β版を提供しており、来年には正式版になるという。
続くセッションパートでは、OSSでセキュアなコードを実現するためのGitHubでの取り組みも披露。質疑応答では、オンプレ版であるGitHub Enterpriseの新機能の実装やマイクロソフトの買収による影響、他のCI/CDツールとの差別化など、ユーザーならではのディープな質疑応答が行なわれた。