クアルコムも重視するAIエンジンは第5世代に
英語→中国語のリアルタイム翻訳をデモ
こうしたスペック向上以上にクアルコムが強調したのが、「第5世代AIエンジン」だ。Snapdragon 865には、DSPの「Hexagon 698」を搭載しており、この処理能力が大幅に向上。Tensorアクセラレーターを刷新し、ニューラルネットワークの処理能力を強化した。
Hexagon 698は、TOPSが4倍に、省電力性能も35%向上しているという。クアルコムのAI処理は、CPU/GPU/DSPを最適に使い分ける「ヘテロジーニアスコンピューティング」を売りにしているが、それぞれの機能が強化された結果、第5世代のAIエンジンでは、Snapdragon 855の2倍になる15 TOPSを実現した。
AIの処理能力を強化したことで、さまざまな機能がクラウドを介さず、端末上で実現できるようになるという。こうした実例の数々は、バイスプレジデントのジアッド・アスガー氏が紹介した。
Pixelシリーズに搭載されている音楽認識機能はその一例。クラウドに接続せず、高速かつ省電力に曲名などを表示できるようになる。音声認識したものを文字にしつつ、それを別の言語に翻訳することも端末の処理だけで実現する。
基調講演では、壇上で実際に話された英語を文字にしつつ、それを中国語に翻訳するといったデモを披露。ほぼリアルタイムに英語が中国語になる様子がスクリーンに映され、会場からは驚きの声があがった。
また、ISPのSpectra 480と第5世代AIエンジンを組み合わせることで実現する機能の一例を紹介するため、モルフォの米国子会社でバイスプレジデントを務める鳥原英俊氏が登壇。髪の毛や肌、眉毛などの写されたものの“意味”を認識し、それぞれに最適な処理をかける「セマンティックセグメンテーション」が披露された。
AIの処理能力に関しては、過去に出荷されてきたSnapdragonはもちろん、競合他社を上回っていることが強調された。基調講演で示されたデータによると、1秒間の演算回数は、Snapdragon 845が3TOPSだったのに対し、Snapdragon 855では2倍強の7TOPSに強化されたが、Snapdragon 865はさらにその2倍強にあたる15TOPSを実現した。企業名は伏せられていたが、アップルやファーウェイ(ハイシリコン)との比較でも、ピークパフォーマンスや省電力性能で勝っているという。
Snapdragon 865では、超音波センサーを使った指紋認証機能も「3DSonic Max」に進化。認識できる範囲が17倍に広がり、高速化も実現している。指紋認識が可能な面積が広がったことで、2本指での認証にも対応。クアルコムによると、よりセキュリティーの強度を高めたいときのオプションとして、2本の指を利用可能になる。