「Office 365」「Azure IoT」による共通基盤「サービス連携リファレンスアーキテクチャ」提供
日本MS、スマートビル/オフィス領域でパートナー施策を強化
2019年10月31日 07時00分更新
日本マイクロソフト(日本MS)は2019年10月30日、スマートビルディング/スマートスペース(Smart Buildings & Spaces)領域における事業拡大を目指し、バートナー企業などを対象に「サービス連携リファレンスアーキテクチャー」を無償提供すると発表した。さらに、スマートビル実現に向けた実装サンプルの提供も行う。
同社では2020年度(2019年7月~2020年6月期)における新規事業分野として、「Smart Business & Spaces」への取り組みを開始。先ごろ開催された「CEATEC 2019」の同社ブースでも、これらの取り組みを紹介しており、さらに大成建設との協業を発表するなど、スマートビルディング事業の取り組みを加速している。記者説明会では、同領域における事業戦略の説明とともに、パートナーとの協業についても紹介した。
ファシリティ中心ではなく“人が中心”のビル/オフィス環境を作る取り組み
スマートビルディング/スペースは、日本マイクロソフトが新たに取り組んでいる事業領域だ。運輸・サービス営業統括本部 業務執行役員 統括本部長の及川智武氏は、この事業はオフィスビルおよびビル内の空間を対象に、「人を中心としたオフィスビル/空間の実現」を目指すものだと説明する。
「マイクロソフトでは、10年以上前から米国本社でスマートビルディングの取り組みを推進しており、今後5年間でスマート化をさらに進めようと考えている。この実績を生かし、海外パートナーが日本に進出する際の支援を行うとともに、国内でのパートナー拡充を図っていく」(及川氏)
また運輸・サービス営業統括本部 インダストリーエグゼクティブ MaaS & Smart Spaceソリューション本部 専任部長の清水宏之氏は、この取り組みでは「Office 365」や「Azure IoT」などを組み合わせて「ビルから人に働きかける」スマートビルディングを実現していくものだと述べた。これまでは設備や機器の情報共有が十分でなかったために、管理面などで無駄なコストが発生し、ビルの不動産価値低下にもつながっていた。
「ここにサービス連携基盤を提供することで、セキュリティを担保したかたちでのデータ共有、サービス間連携などを可能にし、コスト適正化や不動産価値向上につなげていく。ここではリファレンスアーキテクチャを策定し、それを活用するパートナーと共に市場への提案を広げていく。パートナーは今後も拡大していく方針であり、かなり幅広い領域の業界ニーズに対応できると考えている」(清水氏)
データ連携とサービス連携に対応するリファレンスアーキテクチャは、日本マイクロソフトとアイスクウェアドが協業して策定する。
具体的には、スマートビルディングのサービスを構成する「機能マップ」、Azureで構築するための「アーキテクチャーマップ」、技術者を対象に提供する「実装サンプル」で構成。実装サンプルでは、Power PlatformとAzureによる実装、Office 365で提供される予定表との連携、ビーコンセンサーとの連携、サイネージとの連携機能などを提供する。これらの内容は、日本マイクロソフトの本社30階展示ブースでも公開する。
清水氏は、このリファレンスアーキテクチャは「共通基盤」と位置付けられるセキュリティや認証、データ管理といった“非競争領域”の構築を支援するものであり、これまで連携が難しかった部分を迅速に構築できるメリットをもたらすと説明した。パートナー各社は、この共通基盤上の“競争領域”にあたるコアサービス、ソリューションの開発に注力し、価値を高めていくことになる。
パートナー6社も出席、スマートビルディング/スペースへの取り組みを披露
今回は協業パートナーも発表された。「トータルソリューションパートナー」にはダイダン、電通国際情報サービス(ISID)、ジョンソンコントロールズの3社が参加。また「BACnetゲートウェイパートナー」にはユニテックが、「ファシリティ管理ソリューション構築パートナー」にはアイスクウェアドが、「システムインテグレーションパートナー」にはJSOLとSBテクノロジーが、それぞれ参加する。また、東京大学グリーンICTプロジェクトとの産学連携も発表している。
説明会では6社のパートナー企業が出席し、それぞれの取り組みについて説明した。
ダイダンでは今年7月、IoT技術を活用したビル電気空調設備のクラウド型自動制御システム「リモビス(REMOVIS)」を提供開始している。これによりビル既存設備の変更やテナント入れ替え、レイアウト変更といったニーズ変更の課題解決、またウェルネスなど今後求められる新たなビルの価値提案にも対応できるようになるという。「パートナーとの連携によって新たな価値を提供したい」と述べた。
電通国際情報サービスでは、社内外のソリューションを組み合わせる「クロスイノベーション」の取り組みの一環として、スマートビルディング領域において「スマートスペースプラットフォーム」を提供している。オフィス入退出などの管理システムと、ビル制御システムが連動し、業務クオリティの平準化などを実現すると説明した。ここではダイダンのリモビスとも連携しているという。
ジョンソンコントロールズは、ビルシステムから収集される多様なデータをクリーニング、正規化するクラウドプラットフォーム「Digital Vault」を提供。これにより顧客企業におけるビッグデータ活用と、効率的なビル運用を支援すると説明した。
ユニテックでは、今回の協業において、ビル管理システムとAzureとを接続する「BACnetゲートウェイ」の提供を行い、サービス連携基盤を利用できるようにする。「東京オリンピック移行は、遠隔監視や群監視など運用面での付加価値に注目が集まると考えている」として、その領域において低コストかつ汎用性の高いソリューションを提案していくと述べた。
アイスクウェアドは、「スマートビルディングの実現には、オペレーション効率の改善と顧客満足度の向上を、高いレベルで両立することが大切」だと述べたうえで、ファシリティ管理ソリューションの「ARCHIBUS」を提供していくと説明した。これは設計情報や地図情報と連携しながら、施設に関する情報/業務プロセス/プロジェクトをステークホルダーにわかりやすく提供する情報プラットフォームだ。ここに今回のリファレンスアーキテクチャを組み合わせることで、BASやIoTセンサーなどの情報も取り込んだ、インテリジェントなビル運用を実現するとした。
SBテクノロジーでは、独自のIoTプラットフォームサービスである「IoT Core Connect」を紹介。今年度はPoCにとどまらずフィールド実装されるケースも増えているとした。さらに、建物管理の業務効率化システムをAzureで開発した実績もあり、これらをよりオープンな形で利用できるようにしていきたいと考えているため、マイクロソフトのリファレンスアーキテクチャによってオープン化が促されるものと期待していると述べた。