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業界人の《ことば》から 第365回

デジタルトランスフォーメーションを推進する稀有な広島県

2019年10月30日 09時00分更新

文● 大河原克行、編集● ASCII

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一瞬で新たなビジネスが創出される

 湯崎知事は、あるたとえ話をする。それは、ニューヨークの街の写真だ。

 1900年のニューヨークの街の写真を見ると、そこには馬車が写っており、移動手段が馬車であることがわかる。

 ところが、1913年のニューヨークの街の写真では、すべてが自動車に変わっている。わずか13年で街の様子は大きく変化しているのだ。T型フォードが登場したのが1908年だということを考えると、わずか5年ですべてが置き換わったともいえる。

 「クルマが登場したころは、クルマは役に立たないとまで言われていた。だが、それが一気に変わってしまった。変わるときには劇的に変化することの証である」とする。

 そして、こうも指摘する。

 「これは馬車がなくなり、クルマに変わったということが注目すべき点ではない。馬車からクルマに変わった途端に、馬の蹄鉄を修理したり、馬に藁や水を提供したりする仕事がゼロになり、代わりに、クルマを修理し、ガソリンを売るビジネスが生まれたことが注目すべき点である」

 この2つの写真が示すのは、一瞬にしてこれまでのビジネスがなくなり、新たなビジネスが創出されたことが重要なポイントだというわけだ。

 湯崎知事は「いまのDXはそれと同じである。社会がデジタル化すると、やり方が変わっていく。そこでリードを取らないと、1913年に飼い葉を売っていた人と同じになってしまう。広島県はそうはなりたくない」とし、「広島県は、オープン、アジャイル、チャレンジという3つの視座で変化していく。広島県からデジタル化を推進し、DXのファーストムーバーになりたい」とする。

 地方公共団体が率先して、ここまでDXを推進している例は日本では珍しい。広島県から、DXによるどんな成果が生まれるのか、そして日本全体にどう波及していくのかに注目したい。

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