一瞬で新たなビジネスが創出される
湯崎知事は、あるたとえ話をする。それは、ニューヨークの街の写真だ。
1900年のニューヨークの街の写真を見ると、そこには馬車が写っており、移動手段が馬車であることがわかる。
ところが、1913年のニューヨークの街の写真では、すべてが自動車に変わっている。わずか13年で街の様子は大きく変化しているのだ。T型フォードが登場したのが1908年だということを考えると、わずか5年ですべてが置き換わったともいえる。
「クルマが登場したころは、クルマは役に立たないとまで言われていた。だが、それが一気に変わってしまった。変わるときには劇的に変化することの証である」とする。
そして、こうも指摘する。
「これは馬車がなくなり、クルマに変わったということが注目すべき点ではない。馬車からクルマに変わった途端に、馬の蹄鉄を修理したり、馬に藁や水を提供したりする仕事がゼロになり、代わりに、クルマを修理し、ガソリンを売るビジネスが生まれたことが注目すべき点である」
この2つの写真が示すのは、一瞬にしてこれまでのビジネスがなくなり、新たなビジネスが創出されたことが重要なポイントだというわけだ。
湯崎知事は「いまのDXはそれと同じである。社会がデジタル化すると、やり方が変わっていく。そこでリードを取らないと、1913年に飼い葉を売っていた人と同じになってしまう。広島県はそうはなりたくない」とし、「広島県は、オープン、アジャイル、チャレンジという3つの視座で変化していく。広島県からデジタル化を推進し、DXのファーストムーバーになりたい」とする。
地方公共団体が率先して、ここまでDXを推進している例は日本では珍しい。広島県から、DXによるどんな成果が生まれるのか、そして日本全体にどう波及していくのかに注目したい。
この連載の記事
-
第606回
ビジネス
テプラは販売減、でもチャンスはピンチの中にこそある、キングジム新社長 -
第605回
ビジネス
10周年を迎えたVAIO、この数年に直面した「負のスパイラル」とは? -
第604回
ビジネス
秋葉原の専門店からBTO業界の雄に、サードウェーブこの先の伸びしろは? -
第603回
ビジネス
日本マイクロソフトが掲げた3大目標、そして隠されたもう一つの目標とは? -
第602回
ビジネス
ボッシュに全株式売却後の日立「白くまくん」 -
第601回
ビジネス
シャープらしい経営とは何か、そしてそれは成果につながるものなのか -
第600回
ビジネス
個人主義/利益偏重の時代だから問う「正直者の人生」、日立創業者・小平浪平氏のことば -
第599回
ビジネス
リコーと東芝テックによる合弁会社“エトリア”始動、複合機市場の将来は? -
第598回
ビジネス
GPT-4超え性能を実現した国内スタートアップELYZA、投資額の多寡ではなくチャレンジする姿勢こそ大事 -
第597回
ビジネス
危機感のなさを嘆くパナソニック楠見グループCEO、典型的な大企業病なのか? -
第596回
ビジネス
孫正義が“超AI”に言及、NVIDIAやOpen AIは逃した魚、しかし「準備運動は整った」 - この連載の一覧へ