サービスを整理、データ基盤サービス「Smart Data Platform」や「Enterprise Cloud」へ経営資源を集中
NTT Com、2020年末でパブリッククラウド「Cloudn」提供終了へ
2019年10月25日 07時00分更新
NTTコミュニケーションズ(NTT Com)は2019年10月24日、2012年から提供してきたパブリッククラウドサービス「Cloudn(クラウド・エヌ)」を、2020年12月31日をもってサービス提供終了すると発表した。新規申込受付は2019年12月1日まで。
同日の記者説明会では、Cloudnの提供終了とクラウドラインアップの整理を通じて、同社が新たな“ビジネス成長エンジン”と位置づけるデータ基盤サービス「Smart Data Platform」を支える企業向けクラウド「Enterprise Cloud」へ経営資源を集中していく方針が説明された。
大口顧客はEnterprise Cloudへ、小口顧客はWebARENAへの移行を促す
NTTコミュニケーションズでは2012年以降、“低価格/Webサーバー・開発環境向け”のCloudnと“高品質/基幹業務システム向け”のEnterprise Cloudという、2つのクラウドサービスをラインアップしてきた。現在の契約件数は、Cloudnがおよそ5000件(個人も含む)、Enterprise Cloudがおよそ1万件。
Cloudnのサービス終了に伴い、既存の顧客に対してはEnterprise Cloudおよび、NTTPCコミュニケーションズが提供するホスティングサービス「WebARENA」への移行を促す。説明によると、移行に時間のかかりそうな大口顧客の一部にはすでに告知を開始しているという。
既存顧客に対し、NTT ComからはEnterprise Cloudで提供するOpenStackベースのパブリッククラウドサービス、またはWebARENAのVPS(仮想プライベートサーバー)サービスを中心に紹介していく。なおWebARENAでは、10月中に低価格/シンプルな新プラン「VPSクラウド」を提供開始する予定。
NTT Ltd.の大角氏は、Cloudnの既存顧客の大半は、使い勝手が近く、シンプルなWebARENAのほうへ移行するのではないかとの見方を示した。また、新たなクラウドへのマイグレーション作業は原則として顧客自身で行うことになるが、移行のためのドキュメントやツールを提供する予定だと述べた。
またNTTコミュニケーションズの林氏は、Enterprise Cloudにも共有型パブリッククラウドのラインアップがあり、さらにNTTPCのWebARENAもあることから、Cloudnの終了後も「NTTグループとしては引き続き、幅広い顧客ニーズをカバーしていく」姿勢であると強調した。
「データ活用基盤サービスの強化」と「プライベートクラウド需要増加」への対応
Cloudnの提供終了とクラウドラインアップの整理は、同社が今後のビジネス成長エンジンとして期待を寄せるSmart Data Platform(SDPF)と、それを支えるEnterprise Cloudへの経営資源集中を図るものだという。
デジタルトランスフォーメーション(DX)を支援する“DX Enabler”として、顧客企業におけるデータ活用を促すデータプラットフォーム=SDPFを継続的に強化していく方針は、先日開催された「NTT Communications Forum 2019」においても繰り返し強調されていた。
同社ではこのSDPFを支えるクラウドインフラとして、Enterprise Cloudのさらなる機能強化を図っていく方針だ。
林氏、大角氏は、これまでのように単体のクラウドプロダクトとしてEnterprise Cloudを提供するだけでなく、SDPFの提案を通じて、そのベースとなるEnterprise Cloudも拡大していく販売戦略を考えていると語った。個々の顧客企業が考えるデータ戦略に沿ったサービスの組み合わせを提案できるように、サービスラインアップの拡充だけでなく、社内の各担当部門間での連携と提案力の強化も図っていく。
もうひとつの背景として、国内におけるクラウド市場環境の変化もある。市場調査会社の予測によると、数年後にはパブリッククラウド市場よりもプライベートクラウド市場のほうが市場規模が大きくなる。特にNTTコミュニケーションズにおいては、すでにCloudnよりもEnterprise Cloudのほうが売上も顧客ニーズも高く、ここ数年はCloudnの契約数が横ばいを続ける一方で、Enterprise Cloudは着実にビジネスを伸ばしてきたという。
なおSDPFでは、他社パブリッククラウドとの閉域網接続を行える「Flexible InterConnect(FIC)」もサービスラインアップの1つとして提供している。同社はMicrosoft AzureやGoogle Cloud Platform(GCP)の再販契約も結んでいることから、SDPFは他社パブリッククラウドも“組み込んで”利用できるマルチクラウド環境が前提となっている。こうした特徴も生かしながら、同社では顧客のデータ戦略とニーズに合った提案をしていく方針だ。