ジャンルを問わないクリアーで力強いサウンド
音質に関する機能は、試聴インプレッションと一緒に紹介していく。プレーヤーはAndroid搭載スマートフォンの「Google Pixel 3 XL」。aptXに対応しているものの、TWS Plus には非対応となる。再生アプリはAmazon Music HDを利用した。
最初に聴いたのは、マイケル・ジャクソンの「Billie Jean」。イントロのベースとドラムは濃密でパワフル。こう書くとただ低域が強いだけに思われそうだが、決してそうではなく、明瞭で濁った感じが皆無だ。中域から高域にかけても同様で、シンセサイザーやギターは音の立ち上がりが鋭く一音一音が粒立っている。マイケルのハイトーンボイスは潤いを帯び、気持ちよく伸びている。
本機が搭載する6mm径のダイナミック型ドライバーは、振動板の表面にグラフェンコートが施されている。グラフェンはダイヤモンドより硬い炭素素材で、振動時の余計な変形が抑え、歪みの少ないクリアーな再生音を生み出す。また、伝播速度が速いことにより、高域の再現性に優れるのも特徴だ。
ただし、完全ワイヤレスイヤホンのように筐体が小さいと、ドライバー自体がクリアーな音を再生しても、筐体内部で音の反射や揺れが発生し、干渉する恐れがある。この問題を解決すべく、採用した技術が「HDSS」(High Definition Sound Standard)だ。ハウジングの内部に「ETL」(Embedded Transmission Line)という特殊な音響モジュールを設置し、余計な振動や音の反射を吸収するもので、ドライバーが持つ本来の性能をストレートに伝えるのに役立つ。
このグラフェンコート振動板とHDSSの合わせ技によって生み出させる、クリアーで濃密なサウンドは、聴く音楽のジャンルを問わない。例えば、クイーンの「We Will Rock You」は、ハンドクラップが塊でなく一音ずつ聞こえるため、サウンドが立体的に感じられた。ギターは、演奏の機微まで描く。
また、ビル・エヴァンス・トリオの「Waltz For Debby」などジャズ曲でも、ウッドベースの弦をはじくタッチや、筐体の箱鳴りまでも分かり侮れない。まるで、オーバーイヤータイプのヘッドホンで聴いているような、豊かな表現力に驚いた。
オーケストラ曲となる、モンスターハンターのメインテーマ「英雄の証」では、音場空間は広く金管楽器やストリングスの音色で満たされていく様がよく分かった。また、ピアニッシモ時の小さい音でも破綻なく、細部まで明瞭に再生する点も、実力が高い証といえるだろう。
クアルコムの新しいBluetoothチップを搭載したモデルはこれからも、どんどん登場するはずだ。その先陣を切って登場したのがSamu-SE04。これだけの多機能、高音質にもかかわらず1万円程度という高コスパを実現している。これこそ、新世代完全ワイヤレスイヤホンの新定番といえるだろう。
少しでも安さを求めるなら「Samu-SE03」という選択肢も
Samu-SE04の良さは分かったが、もう少し安い選択肢がないかと考えている人もいるだろう。そんな人には、7980円と格安の弟分「Samu-SE03」を検討してみるといい。
Bluetoothチップは1世代前のものとなるが、最新のBluetooth 5.0で通信が可能。コーデックはSBCとAACをサポートしている。1回の充電で約4時間、充電ケースを併用すれば最大で約28時間の再生が可能だ。
イヤホン本体も、人間工学を応用したエルゴノミックデザインを採用。コンパクトでありながら、誰の耳にもフィットする形状となっている。筆者は耳穴の入り口が狭く、フィットしない完全ワイヤレスイヤホンもあるが、本機は装着感に優れ、頭を振っても外れる気配すらない。さらに、3.9gと超軽量で付けていることすら忘れるほどだ。
搭載するドライバーは10mm径のダイナミック型で、完全ワイヤレスイヤホンとしては、特大サイズ。サウンドは明瞭で低域に迫力がある。Samu-SE04にはかなわないものの、音にはキレがあり密度も高く、音の細かい部分よりもロックはロックらしく、ジャズはジャズらしくと、楽曲の魅力をそのまま表現する。
Samu-SE03は、水しぶきに耐えられるIPX4の防水機能も備えており、比較的安価ながらも、機能や音質は必要十分。「完全ワイヤレスイヤホンをとにかく試したい」という入門者にはピッタリのモデルだろう。
(協力:オウルテック)