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国際宇宙ステーション「きぼう」の船外から全天球静止画・動画を撮影

リコーとJAXAが全天球カメラを共同開発 THETAが宇宙を飛ぶ

2019年08月29日 17時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp

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 2019年8月28日、国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(以下、JAXA)とリコーは、宇宙空間で動作する全天球型カメラをTHETAをベースに共同開発したことを発表した。民生品の全天球型カメラが宇宙船外で全天球型の撮影を行なうのは国内で初めてだという。

THETAが宇宙を飛ぶ

「こうのとり」で運ばれ、ISSの「きぼう」から撮影

 今回開発された全天球型カメラは「RICHO THETA(リコー・シータ)」をベースに宇宙環境に耐えうる措置を施したもの。用途としては、JAXAとソニーコンピュータサイエンス研究所が共同開発した小型衛星光通信実験装置「SOLISS」の二軸ジンバルのモニタリングカメラとして採用される。2019年9月11日に打ち上げられる予定の宇宙ステーション補給機「こうのとり」8号機によって、国際宇宙ステーション(ISS)に送り届けられ、「きぼう」の日本実験棟の船外プラットフォームから全天球静止画・動画を撮影し、地上に送信される予定となっている。

小型衛星光通信実験装置「SOLISS」に取り付けられた宇宙向けのTHETA

 今回の共同開発はJAXA側からリコーへのアプローチでスタートしている。現在、JAXAは世界各国で注目されている月面での活動を前提に、無重力でのロケットや人工衛星だけではなく、重力のある地上での技術に注力している。こうした活動を加速すべく、「JAXA宇宙探査イノベーションハブ」という取り組みで企業との共同開発を進め、リコーとの関係が生まれたという。2018年に覚書を交し、共同開発がスタートした。

 開発に際しては、宇宙空間での利用を想定し、重さや大きさの制約をクリアしつつ、温度、湿度のほか、打ち上げ時の振動などに耐えうるスペックが必要になったという。ハイエンドモデルのTHETA Sをベースにしているが、筐体はアルミニウムを採用し、メモリも8GBから32GBに増量した。特に苦労したのが、宇宙から降り注ぐ宇宙放射線による故障対策で、ファームウェアの改良で対応したという。また、民生機として必要な省電力機能など多くの機能は省き、宇宙空間でのモニタリング利用に特化したものに仕上げた。

期待はモニタリング外の予想しない画像?

 発表会に登壇したリコー 代表取締役 社長執行役員 山下 良則氏は、イメージング技術とともに歩んできたリコーの歴史を「お客様のニーズの一歩で技術を開発してきた」とアピールした。また、「空間のすべてをキャプチャし、場をすべて写し取る価値」を追求した空間記録装置としてのTHETAと、JAXAとの共同開発の概要について説明。イメージング×宇宙という観点で、ロケーションビジネスや監視などの多様な用途、宇宙飛行士や衛星、探査車などからの全天球静止画・動画の活用に高い期待を示した。

リコー 代表取締役 社長執行役員 山下 良則氏

 リコーとの共同開発を担当したJAXA宇宙探査イノベーションハブ主任研究員 澤田弘崇氏は、「見ていて楽しい、感動する映像が撮れるのではないかと期待している」とコメントし、単なるモニタリング用途以外の幅広い利用価値に期待する。撮影された画像はJAXAから提供される予定となっており、VRコンテンツとしての活用も見込まれる。

JAXA宇宙探査イノベーションハブ主任研究員 澤田 弘崇氏

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