業務を変えるkintoneユーザー事例 第58回
現場目線でkintoneをタフに強化し続ける体育会系事例
ユーザーの不満をプラグイン活用で乗り切った京都リハビリテーション病院
2019年08月27日 09時00分更新
kintone hive osakaの4番手は、医療・介護業界から京都リハビリテーション病院の瀧村孝一氏の登壇だ。自身も積極的に情報発信している瀧村氏だけに、kintone活用もパワフル。kintoneやプラグインや連携サービスの活用、病院での働き方改革、ユーザー満足度の向上など幅広いトピックは聞き応え抜群だった。
申し込みから受け入れまでの時間に課題
登壇した瀧村氏は高校は体育科、大学も体育学部、趣味は筋トレというわりとガチな体育系。就職の際は教師か、それ以外かを迷った末、介護業界に入ったという。医療介護グループの介護職、相談員、営業職を経て、現在は医療法人清水会の京都メディケアシステム 京都リハビリテーション病院の医療連携室で入退室の事務を担当している。
京都市伏見区にある京都リハビリテーション病院は、名前の通りリハビリテーションに特化した病院。命の危機や急性期を脱した回復期の患者になるので、ほとんどが他の病院からの紹介という特徴がある。「しかも京都市の回復期のベッド数は増え続けているので、きちんとアピールポイントを作らないとほかの病院に患者さんが流れてしまいます」と瀧村氏は語る。
課題になったのは、移転の申し込みから受け入れまでの日数が伸びてしまったこと。受け入れまでの時間がかかるとキャンセルにつながり、他の病院に患者さんが流れ、ネットの評判も悪くなってしまう。「もともとお電話をいただいてから、全部Excelでの管理。誰が明日入院するのか、誰が判定するのか、電話で聞いた内容などを入力すればするほどファイルが重くなっていました」と瀧村氏は語る。
Excelに登録されていた情報を見やすく、共有しやすく、なおかつ印刷する手間も省きたいということで、行き着いたのがkintoneだ。昨年のCybozu Days 大阪で発表された宇治徳洲会での病院間連携に京都リハビリテーション病院も参加していたため、瀧村氏もkintoneはすでに知っていた。とはいえ、単にExcelのデータをkintoneに登録しただけではなにも変わらなかったので、瀧村氏はプラグインによるカスタマイズを開始する。
誰が入院するかが一見ではわかりにくかったので、まずは「条件書式プラグイン」を導入し、脳梗塞か、骨折か、判定の優先度などを簡単にわかるようにした。また、一覧から編集画面に入ってレコード編集のボタンを押すという作業が面倒だったため、「一覧画面編集プラグイン」(TiS)でExcelライクな編集まで行なえるようにした。
さらに標準機能だとプレビューできないPDFをプレビューできるようにするため、「PDFプレビュープラグイン」(ジョイゾー)を導入した。「PDFをダウンロードするということは、職員の個々のPCに患者情報を残してしまうことになる。僕がいちいち消しに回らなければならないので、ブラウザで確認してもらうことにしました」(瀧村氏)。
職員からの不満の声、プラグインで乗り切る
こうして見やすく、使いやすくを追求し、kintoneのカスタマイズを続けてきた瀧村氏だが、導入から半年経て職員からは「前の画面に戻してほしい」とか、「そもそもkintone使いたくない」という声が挙がってきた。「結局、自己満足に浸っていただけだった。上司からもkintone辞めて、Excelに戻したらどうだと言われた」と語る瀧村氏だが、この難局もプラグインで乗り切った。
このとき導入したのは、TiSの「ログインユーザー連動各種設定プラグイン」だ。文字通り、ログインユーザーごとに画面を使いやすく変えられるという。また、アールスリーの「gusuku Customine」も導入し、生年月日、年齢、郵便番号、住所などの入力も容易に行なえるようにした。
それでもわからないユーザーのためにはWeb会議サービスの「Zoom」でkintoneの勉強会まで行なった。「Zoomは動画を残せるので、動画ファイルをkintoneの添付ファイルに入れておくことで、みんな見てくれる。同じ質問は2度はされない」(瀧村氏)。さらにドメイン独自のQ&Aアプリを作り、使用方法への質問と回答を蓄積し、問い合わせも減ったという。ポータルもカスタマイズされており、上部にレコード一覧、下部にレコードの登録画面を載せている。
kintone導入の結果、申し込みは増えたが、受け入れまでの日数は減った。また、途中からはkintoneに参加する部署も増えた。「結局、情報を入力しても、看護師や薬剤の方々にはコピーして渡していました。院内で担当者を探さなければならなかったので、みんなkintoneにしてくれとお願いした」とのことで、ユーザー数も増えた。
瀧村氏は、「自己満足のkintoneカスタマイズを脱却し、徹底的に職員の満足度を追求した結果、kintoneが院内に浸透した。ずっとkintone、kintoneと言っているので、自分はサイボウズの社員なのでは?と思う(笑)」と語る。実際、ブログで積極的に情報を公開し続けた結果、「kintoneでこんなことできる?」といった相談も受けるようになったという。
ユーザー同士や医療・介護業界での連携でさらによいkintone活用へ
瀧村氏のkintone活用術はまだまだ続く。たとえば、名刺にはQRコードが印刷されており、読み込むと「kViewer」(トヨクモ)というサービスで介護サービスの空き状況を確認できる。もちろん、印刷したかったら、「プリントクリエイター」(トヨクモ)を使えばよい。「職員がWordPressを使ってホームページの情報を修正する必要もないし、ケアマネージャが訪問リハビリテーションを進めたいときに空き状態を調べて、患者さんに提案できる」と瀧村氏は語る。
また、宇治徳洲会病院とはkintoneゲストスペースでつないでおり、過去のトップや全国平均と比べて圧倒的に短い日数で入院にこぎつけている。「kintoneだけでもいい。でも、kintone同士がゲストスペースで無料でつながることで、よりよい環境ができる」と瀧村氏は語る。
少ない人数でも、業務はこなさなければならないし、子どもの帰宅とともに両親も仕事を終えて帰宅したい。「僕らは楽して、いかにkintoneに負担をかけるかを、常日頃ずっと考えている」と語る瀧村氏はつねに現場目線だ。訪問リハビリテーションにおいても、kintoneを使うことで、職員が現場で体温や血圧、作業記録をとれる。会社に戻らずとも作業が完了し、セキュアアクセスを経由することで安全に個人情報を扱えるという。
このように京都リハビリテーション病院では、ジョイゾー、アールスリー、TiS、トヨクモなどの多種多様なプラグインを活用しているが、kintoneに精通した各社の情報発信やSNSも非常に有意義だという。「kintoneってすごいですよね。スライムがドラゴン倒せるくらいまでレベルアップしたんじゃないかと考えています」(瀧村氏)。最後、「楽しくない業務改善は嫌」「kintoneで楽しい職場作り」「無理はしない、させない」「楽することは、悪ではない」と、頭文字がタキムラになる「タキムラ式」のkintone活用のポイントを語り、kintoneユーザーや医療・介護の業界関係者がお互いつながる重要性をアピールして、講演を終えた。
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