あわただしい朝の台所
2歳児くんの保護者をしている盛田 諒ですこんにちは。このごろ子どもはピクニックごっこにはまっており、ピクニックシートに見立てて広げたタオルケットに座って「お父さん、もうお弁当の時間だよー!!」と大声で呼んでくれます。「お弁当はなんですか?」とたずねると「えっとねーウインナーと、からあげと、ハンバーグと、あとお肉」と紹介してくれました。プレデター弁当だ。
東京から離れて郊外の海と山のある町に移り住んで1年半が経ちました。「そっちは子育てしやすいでしょう」などと言われると同時に仕事で2時間かけて都心に行っていると言うと「大変ですね」と同情されます。まだ不案内ですが、都心で子育てをすることとの違いは徐々にわかってきました。郊外は都心に比べると不便ですがゆとりがあり、選択肢が少ないだけに余裕ができますね。
●クルマが中心
移動手段は基本的にクルマで、バスか自家用車。週末は渋滞することもあってなかなか遠出できません。23区内を電車でさっさと移動していた都心に比べると選択肢は減りました。ただ子どもは近所の公園や児童館でも十分満足するし、1ヵ所にしぼれば動物園や水族館にも行けるのであまり不便はしていません。1日でいろんな場所をハシゴしなくなったぶん余裕ができた気もします。
都心で大きなストレスになっていたのはベビーカーでの電車移動だったので、それが減ったことでラクになった部分もありますね。以前ベビーカーへの不満を書いたこともありましたが問題はベビーカーではなく公共交通機関にありました。ただベビーカーでバスに乗るのも同じくらい厄介なのでどうにかならんかなーという気持ちもあります。乗客同士の助け合いに救われる部分はあるのですが。
●お店が少ない
いちばん近いコンビニは家から徒歩15分、おむつがないと思ったらさらに先のドラッグストアへ行っています。ただお店はなければないで慣れますね。東京に比べ選択肢は少ないですが、小さないい店はちょこちょこあるので、買い支えるような気持ちで使っています。店が少ないぶん競争原理が働かないのか物価は都心と変わらないのですが。地元のスーパーはもうちょっと頑張ってくれ。
大きな店が使いたいときは郊外のショッピングモールへ。ベビーカーを大量に乗せられる広いエレベーターとか、子どもの声がそこら中から聞こえるフードコートには「まあなんとかなるだろう」という安心感がありますね。都心の百貨店で優先エレベーターにも乗れず往生したときがなつかしいです。都心と比べると落ち着いた大人の雰囲気とはあまり縁がなくなってしまいましたが。
●人が少ない
保育室に行くとき会う人がおなじです。名前は知らなくても「あの人だな」とわかるレベル。登校時間の子どもを見守っているボランティアのおじいさんとは完全に顔なじみになりました。隣近所はあいさつをする付き合いがあり、町内会にも入りました。東京にいたときはマンションの隣人と顔を合わせたこともなかったので新鮮です。「これが地域社会か!」とムダに興奮しています。
道を歩いている人も少ないので、都心のように人にぶつからないようにするストレスも少ないです。都心に比べると空気がぴりぴりしていない印象もあり、子どもが泣き出して「チッ」と舌打ちをされたことは今のところありません。人口の3割以上が高齢者という土地柄もあるかもしれないです。そのぶん小児科より動物病院のほうが多かったりして、それはそれで不便なんですけど。
●保育園が少ない
少子化が進んでいることもあり保育園は少ないです。待機児童問題があるのも都心と一緒です。都心にいたときは認可、認可外、認証、小規模保育室などさまざまな選択肢がありました。こっちもシュタイナー教育をとりいれた私設保育施設などはありますが、そもそもの絶対数が少ないのですね。子どもは運良く小規模保育施設に通えていますが、いわゆる保活事情が厳しいのはおなじです。
都心といちばん違うのは子どもが散歩で遊びに行くのが野山や海ということ。子どもは毎日泥だらけ砂だらけで遊び、全身真っ黒になりました。自然とともに育つことを重視した保育室の方針も大きいですが、都心だと難しそうです。都心では保育園同士で公園がとりあいになるという話も聞きました。園庭以外で遊ぶとき体を思いきり動かせる場所がどこなのかという違いはありそうです。
●ゆとりがある
総じて都心には洗練された良さ、郊外にはゆとりのある良さがありますね。郊外は情報や選択肢が少ないぶん、よけいなことを考えずにすみます。人が少ないのは不便な部分もありますが、混雑を避けるストレスがなく快適です。新しい施設が少ないぶん、野山や海で気持ちよくすごせます。野山や海は基本無料なのであまりお金がかからないところも庶民的にはうれしいです。
都心はなにかと狭いので大人が移動するにはラクですが窮屈に感じることもあります。郊外の住まいは都心に比べて広くなりました。便利で刺激的な都心で子育てをしていたらそれはそれで楽しかったと思いますが、いまは不便でゆったりとした町での子育てを心地よく感じます。こうした環境の違いが子どもの行動、それに対する親の行動に与える影響は大きいと思います。子どもは家庭だけではなく地域で育つものだということを実感させられる部分がありますね。盛田 諒でした。
書いた人──盛田 諒(Ryo Morita)
1983年生まれ。2歳児くんの保護者です。Facebookでおたより募集中。
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