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業務スマホの盗難・紛失時も情シスの手をわずらわせない

SyncpitとChatworkが描く情シス業務の自動化とは?

2019年08月22日 09時30分更新

文● 大谷イビサ/Team Leaders

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 情シスの業務を効率化するためのエンジンとして開発されたエムオーテックスの「Syncpit(シンクピット)」は、ビジネスチャットと連携することで初めて自動化のメリットを得られる。チャットによる情シス業務の自動化というテーマについて、Chatworkの小西芳樹氏とエムオーテックスの厚山耕太氏に語り合ってもらった。

Chatworkからスマホのロックやワイプが可能になる

大谷:まずは自己紹介をお願いします。

厚山:はい。エムオーテックス事業戦略本部の企画開発部の部長として、これまで展開してきたモバイルデバイス管理サービスのLanScope Anとは別のプロダクトとして自動化ツールの「Syncpit」を立ち上げました。もともとLanScope Anのユーザーである情シスや総務の方々が困っていることを、LanScope Anと違った切り口で解決しようということで、スタートしています。具体的には、問い合わせや質問事項が情シスに集中するという課題をうまく解決したいと思っていました。

エムオーテックス 事業戦略本部 企画開発部 部長 厚山耕太氏

大谷:まずは自動化エンジンであるSyncpitについて教えてください。

厚山:「自分で紛失した社用デバイス、ロックの処理は自分でできませんか?」というのがSyncpitに至るまでの問いでした。情シスが利用している管理コンソールを一般社員に開放してくださいというのはさすがに問題があるのですが、Syncpitであればスマホの位置の特定、紛失届け、リモートロックやワイプなどをエンドユーザーである一般社員が行なえます。

大谷:なるほど。次に連携先となるChatworkの小西さんお願いします。

小西:Chatworkのプロダクトマネジメント室で、プロダクトの開発や企画のマネージャーをやらせてもらっています。領域はAPIと管理機能で、今回のエムオーテックスさんとの連携を担当しました。

大谷:ChatworkのAPIについての取り組みについて教えてください。

小西:Chatworkを起点にさまざまなサービスや情報をつなぎ、仕事の起点になれるプラットフォームを作っていきたいという方向性が根本にはあります。最近ではAPIの改修やサービスとの連携を進めるほか、今まであまり伝える機会のなかったオープンなAPIについて知ってもらえるよう、「サービス連携ガイド」というメディアを展開しています。

Chatwork プロダクトマネジメント室 小西芳樹氏

大谷:なるほど。連携してなにができるかをユーザーに説明し始めたというフェーズですね。では、今回のSyncpitとChatworkの連携イメージを具体的に教えてください。

厚山:たとえば金曜日の夜、家に帰る間際にスマホをなくした場合、まずは情シスや上司、あるいは24時間365日受付の代行サービスに連絡しなければなりません。とはいえ、連絡手段としてのスマホがないので、いったん家に帰ってPCや固定電話で連絡して、リモートロック・ワイプしてもらう必要がありました。

でも、Chatworkを利用できる環境があれば、常駐しているSyncpitのボットに対して、「スマホ紛失」と入力すれば、LanScope AnのAPIを叩いてスマホを探しに行きます。この時点で位置情報を特定できれば、その場所に行けばいいし、紛失した時間より後に操作のログが残っていたら、リモートロックか、リモートワイプをかけたほうがよいでしょう。どちらを操作すべきかは、Chatworkが選択肢を出してくれるので、これに従えばSyncpit経由でLanScope Anに指示できます。同僚の端末が借りられれば、その場でなんとかすることも可能です。

大谷:紛失・盗難に気がついてから、データ漏えいや不正アクセスに至るまでの時間を短縮できるわけですね。

厚山:本当は紛失や盗難に気がついた段階ですぐに連絡するのが理想なのですが、なかなかそうはなりません。カバンや机をごそごそ探し、立ち寄った場所や駅、最寄りの交番に問い合わせ、どんどん時間が経ってしまいます。われわれも人間ですから、なにかやらかしたら、なんとかならないかなと思ってしまいますよね。

でも、Syncpitがあれば、スマホ経由で紛失・盗難対応が行なえるので、情シスや上司に電話するというハードルをまず下げられます。もちろん、情シスの方も金曜日の夜にくつろいでいるところに電話がかかってくるという事態をなくせます。組織的に見ても、位置情報やログをとったり、とにかく初動対応は早くなります。

Chatworkのヘビーユーザーであるエムオーテックス

大谷:Chatworkと連携するまでの経緯について教えてください。

厚山:まずエムオーテックス自体がChatworkのユーザーなので、いろいろな業務の入り口になっています。もともとオープンなAPIなので、弊社でもChatworkとの連携は勝手にやらせてもらっていて、社員の携帯電話番号や内線番号をChatwork経由で調べられるようにしたり、勤怠システムと連携してチームごとの勤務時間を通知するようにしています。

大谷:エムオーテックスさん自体がもともとChatworkのヘビーユーザーなんですね。そんなエムオーテックスさんから見て、Syncpitとの連携でなにを実現しようと考えたのでしょうか?

厚山:今まで情シスに依頼していたことを、一般社員がチャット越しでできないのかなというのがそもそもの動機です。ビジネスチャットであるChatworkと情シスが扱っているさまざまなシステムをSyncpitでつなぐことはできないかと思い、Chatworkさんにお声がけさせていただきました。

大谷:小西さんは最初に聞いたときはどう思いましたか?

小西:素直にありがたいと思いました。これは普段から社内で話しているのですが、チャットでできることって正直限られているんです。コミュニケーションを促進し、人と人をつなぐことはできるけど、チャットだけですべての業務を完結させるのは無理ですよね。業務システムが必要だし、勤怠管理が必要だし、オフィスアプリが必要です。

でも、チャットは利用時間が長いので、業務システムをつなぐハブにはなれるはずです。わざわざシステムにログインして利用しなくても、簡易的なことであればチャットの中でできるのは、弊社が目指している世界です。

大谷:こうした連携は過去にあったのでしょうか?

小西:今までMoneyForwardなど業務システムとの連携はあったのですが、情シスやセキュリティとの連携はあまりありませんでした。シングルサインオン以外でセキュリティ寄りの製品では、初の連携になります。

人手不足や働き方改革という波の中で、情シスへの問い合わせを減らしたいというニーズは確実に高くなっています。これに対して、ケータイのセットアップや使い方などを総務や情シスの代わりに教えてくれるボットのサービスが、この2年くらいですごく増えています。こうした流れの1つがSyncpitなのかなと思って、興味を持ちました。

「型化」できる業務はチャットボットで対応できるはず

大谷:今回はスマホの盗難・紛失の対応という利用例だったのですが、ほかに自動化できそうな事例ってありますか?

厚山:ご存じの通り、情シスへの問い合わせって「パスワードを忘れた」が一番多いんですよ。そのあたりはチャットボットを使って解決できる問い合わせの筆頭だと思います。社員の方々も情シスを困らせたくて問い合わせているわけではなく、手段は問わず、早く解決したいんです。

小西:確かに日常的に使う機能ではないですが、いざその事態が起こった際にはないと困るというものなので、今までと異なるお客様の課題を解決できると考えています。たまに使うサービスのIDとパスワードがわからないってありがちですよね(笑)。でも、Chatworkを普段から使っている方であれば、緊急時でも問題なく使えるはずです。

厚山:弊社のユーザーにアンケートをとってみると、チャットの利用自体は5割に拡大しているのですが、ボットになるとまだ1割行かないんです。でも、お客様にデモを披露すると、かなり積極的なので、ちゃんと使える自動化を考えてみたんです。

大谷:自動化できる業務はいろいろありそうですね。

小西:「型化できているもの」って人がわざわざやる必要ないんですよね。社内の問い合わせって、9割以上は型化された答えになるので、チャットボットで対応できるはず。バックオフィスをスリム化し、人材育成などに寄与できると思います。

電話、FAX、メール、チャットの中で、ボットのようなものがきちんと組めるのはチャットくらい。IVRやVUIのような音声対応も可能ですが、どうしても時間がかかります。

大谷:音声だと結局全部聞かないと理解できないですからね。

小西:そうなんです。文字って情報密度が高いので、型化された9割のやりとりはチャットで解決できそうです。もちろん、AIのような技術がより進化すれば気の利いた答えを返してくれるかもしれないですが、残り1割にそこまで労力を割くかという問題はあります。

自動化の恩恵を受けられるのは情シスだけじゃない

大谷:こう聞くと、情シス以外の自動化にもうまく適用できそうですよね。

厚山:弊社でも最初はSyncpitを利用しているのは情シスだったのですが、最近は総務部が噂を聞きつけて、連携を進めるようになってきました。そういう意味では当初の想定ユーザーはやはり情シスだったのですが、総務から業務部門まで幅広くバックオフィスの課題を幅広く解決していきたいですね。話を聞くと、情シス以外も同じような課題を抱えているので。

大谷:情シス以外にも拡がってくるんでしょうか?

厚山:はい。正直、情シスや総務さんて、RPAやチャットボットって検討は一巡しているんです。現時点では導入までのコストと時間が見合ってないので、Syncpitはいかに導入をスムースにできるかを徹底して作っています。だから、利用も1ユーザー100円/月ですし、スマホ紛失までのフローはすでに型化されているので、管理コンソールからポチってもらえばデプロイできます。

大谷:最近のキーワードである「ITの民主化」というところにもつながりますね。

小西:ITってある意味残酷で、技術レベルの高いエンジニアの方が活用レベルは全然高い。でも、本当に困っている人、価値を感じてくれる人はエンジニアではないんですよね。そのハードルを下げ、裾野を拡げる提案として、ITで簡単に楽になる方法を見せていきたいと思います。

厚山:Syncpitはあくまでエンジンなので、ユーザーインターフェイスは持っていません。だから、一般ユーザーが操作するためには、Chatworkのようなサービスが必須になります。Chatworkのようなビジネスチャットから、Syncpitをバリバリ活用してほしいですね。

なぜかHoloLensでSyncpit+Chatworkのデモを披露する両名

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