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普通はやらないことばかり、日本でしかできない製品だった

あり得ないを積み上げた、世界最小最軽量の完全ワイヤレス「GRAIN」

2019年07月26日 15時00分更新

文● ASCII

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世界最小の達成に必要だった、意外な壁とは?

── 世界最小とのことですが、なぜ作ろうと思ったのでしょうか?

岡田 ほかがやってないことをやりたかった。これに尽きますね。市場には、完全ワイヤレスイヤホンがあふれています。Amazonなどで実際に購入し、数十台を分解し、いろいろ調べてみたのですが、「たいていのことはやられている」と感じました。ならば、「世界最小・最軽量だろう」という形で始めました。市場にはすでに何百種類もの完全ワイヤレスイヤホンがあります。いまプロジェクトを立ち上げるなら、その中で目立たなければならない。誰もやっていないことにチャレンジするしかないですよね。


「ちゃんと動くよというのを見せておきたいですね」と岡田さん。

── 一番の苦労と言えば、何でしょうか?

岡田 この電池です。LR41というボタン電池と同じサイズなのですが、ヒアラブルデバイスに使え、充電にも対応した汎用品なんて、市場にまったくありません。ただし、こういった電池を、医療機器用に製造しているメーカーは国内にもあります。しかし、部品自体が高価ですし、最低ロットを発注するにしても膨大な数になってしまいます。ちょっと行けば、何個か売ってもらえるようなものではないのです。

小さなリチウムイオン充電池の確保には苦労した。

── 門前払いをされてしまったのですね。

岡田 そもそも、供給先は医療メーカーが最優先です。無理を承知で、何度もお願いして、ようやく譲ってもらえることになりました。「少しなら分けていいよ」と。それでもわれわれのプロジェクトを実現するには十分なのです。

── GRAINは小型がウリの製品なので、アンテナ開発などに苦労したのかなぁと想像していました。電池がネックになるとは意外でしたが、言われればその通りです。

岡田 アンテナなどは頑張れば作れますが、電池は手に入らなければそれで終わりです。これが入手できる算段がついて初めて、プロジェクトを始められるめどが立ったと言えます。

なければ……作るしかないよね?

── ドライバーの直径は4mmとのことですが。小さくても一般的には6mm程度までではないでしょうか?

岡田 実は、直径4mmのドライバーサイズは、この電池に合わせて決めました。これも半年通って、ようやく作ってもらえることになったのです。バランスドアーマチュアー(BA)型のドライバーで小さくする案も検討してみたのですが、BA型は縦に長いので収まらないのですね。で、「どうしよう……作る?」みたいな話になって、部品から作るというバカなことをやることにしました。

直径4mmのドライバー。このプロジェクトのために新規に開発したものだ。

── モックアップを最初に見た感想は「小さいのか、ふ~ん」といった程度の感想しかありませんでした。本当にごめんなさい。これ(試作のスケルトンモデル)を見て、その苦労がやっと分かりました。

試作のスケルトンモデル。ドライバーは先端部分ギリギリの位置に配置。細かな配線が難しいため、フレキケーブルを利用し、それぞれの部品をくるんでいる。アンテナは筐体の内側にLDSの技術を使って実装しているそうだ。

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