ノイズキャンセルは効くが、遮音性の高さがメリットに感じる
WF-1000XM3のもうひとつの特徴が、ノイズキャンセル機能だ。
末尾の型番“M3”は“Mark3”を意味すると思われる。WF-1000Xから、M2をスキップし、M3になった理由は、ヘッドバンド付きの「WH-1000X」シリーズと型番を合わせたためだろう。WH-1000Xシリーズは、昨年秋発売の「WH-1000XM3」が最新機種だ。
WF-1000XM3は、「QN1e」という新しいノイズキャンセリング用のプロセッサーを採用した。これは、WH-1000XM3が搭載する「QN1」の機能をそのままに、チップサイズや電力消費を抑えたものだ。その意味でも整合性がとれている。
ノイズキャンセリング性能については、“デュアルノイズセンサーテクノロジー”の恩恵も大きい。これはハウジングの外側と内側に、2組のマイクを搭載し、より精度高く、ノイズ成分を集音する技術だ。オーバーイヤータイプのヘッドホンではすでに一般的に用いられているが、小型のイヤホンで搭載する例は稀だ。
そもそも、ノイズキャンセリング機能を搭載する完全ワイヤレスイヤホン自体がソニー以外では少ない。また、従来機種のWF-1000Xも、ノイズキャンセリング対応だが、ハウジングの外側にしかマイクを搭載していなかった。
QN1eは、ノイズキャンセリング機能のほかに、DAC機能、アンプ機能などを統合しており、音声信号の処理は32bit精度だ。DSEE HXというソニー独自の高域補完技術も採用している。DSEE HXはウォークマンなどでも採用されており、44.1kHz/16bitのロスレス音源(CD並み)や、圧縮のため高域の情報が削られたMP3音源も、ハイレゾ相当の96kHz/24bit相当にアップスケールして再生できる。
タッチセンサーの反応には少し慣れがいる
操作性の面では、ノイズキャンセリングなどの切り替えをボタンではなくタッチセンサーにした点が変更点だ。
ノイズキャンセリングの切り替えは、デフォルトでは左のセンサーが割り当てられている。ここを指で「たたく」と、「Ambient Sound」「Ambient Sound Control Off」「Noise Cancelling」といった声が出て、モードが切り替わる。
操作としては、「触れる」というよりは、ちょっと強めに「たたく」感じ。最初は加減が難しくうまく動作しないことがあった。慣れれば問題ないが、指先をそっと乗せる程度だと「ポン」という音だけがして操作を受付けてくれない。また、耳穴から頭部に振動が伝わるのは不快なので、あまり頻繁にはやりたくない面もある。タッチセンサーを置く位置を調整するなどすれば、この不快感も軽減されるはずなので、次期製品では検討してほしいところだ。
自慢のノイズキャンセリングの効果は、確かに感じられる。
ただし、ヘッドフォンタイプのもの(例えば、筆者が所有している「WH-1000XM2」や「QuietComfort 35」など)に比べると効果はだいぶ控えめだ。また、静かな場所で音楽の再生を止め、無音状態にすると、残留ノイズを感じる。WF-1000XM3に関して言えば、本体の装着性や密閉性がいいため、電源を入れない状態でも遮音性は優れている。
そこまでノイズキャンセリング性能の高さにこだわる必要もないかなと思える面もあるが、飛行機での移動時など、定常的な騒音がある環境では役立つはずだし、耳に合う人であれば、ヘッドバンド型で気になる、髪型の乱れや、メガネとの干渉などがなく、長時間使える。今回はその機会がなかったが、旅行や出張などで移動する際には、ぜひ確かめたい。
ソニー製のノイズキャンセリングヘッドホンの特徴である「ヒアスルー」(外音取り込み機能)ももちろん利用できる。センサーを長押しすると、一呼吸おいて外音が入ってくるのはほかの製品と同じだ。完全ワイヤレス型イヤホンを使用していると、コンビニなどで買い物をしたり、ちょっとした会話をする際、イヤホンの置き場所に困ったりする。ケースにわざわざ入れるほどではないし、一時的にポケットなどに入れたりすると紛失の原因にもなったりするので、ヘッドホンよりも有用度が高いかもしれない。
また、アンビエントモードでも外音はある程度聴けるので、このあたりをうまく使い分ければ快適そうだ。なお、ソニーストアでは、「紛失あんしんサービス」という片側をなくしても5000円+税で補償してもらえるサービスがある。購入を検討している人は知っておくといいだろう。