前へ 1 2 次へ

値下げ、新サービス、最新事例、5Gへの道程までてんこ盛り

SORACOMユーザーはIoTを超えてビジネス変革にまで進む

大谷イビサ/TECH.ASCII.jp

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

 2019年7月2日、IoTプラットフォームを手がけるソラコムはフラグシップイベント「SORACOM Discovery 2019」を開催した。ソラコム 代表取締役社長の玉川憲氏がリードした90分の基調講演は、新サービスや事例、ゲスト登壇などが幕の内弁当のように詰め込まれ、IoTの可能性を改めてアピールする形となった。

ソラコム 代表取締役社長 玉川憲氏

1.5万ユーザー、100万回線突破で成長を続けるソラコム

 今回で4回目となる「SORACOM Discovery」は同社のフラグシップイベントで、数多くの新発表やユーザー事例もここで披露される。今年は昨年までAWS Summit Tokyoを開催していた品川の高輪プリンスホテルで開催され、「IoTを超えて」というテーマで50以上の事例が披露された。スポンサーは40社超、参加登録者は4000名を超え、「国内最大級のIoTカンファレンス」という謳い文句通りの大型イベントとなった。

 基調講演に登壇したソラコム 代表取締役の玉川憲氏は、ビジネスアップデートから披露。今から3年前の2016年にサービスを開始したソラコムだが、スタートアップや大企業などを含め、ユーザー数は1.5万となった。先週は契約回線数もいよいよ100万回線を突破。そのうち7割は上場企業の利用だという。玉川氏は、「お客様、パートナー様に支えられ、ソラコムは順調に成長してきています」と、厚い謝辞を述べた。

いよいよ1.5万ユーザーを突破

 ソラコムのサービスは、IoT向けの安価なSIMに、パブリッククラウドとの容易な連携、セキュアな閉域網サービスなどを組み合わせたプラットフォームサービスだ。2017年には早々にグローバル対応をスタートさせたほか、LoRaWANやSigfoxなど低消費電力な通信もいち早くサポート。KDDIの傘下に入って以降も精力的にサービス拡張を続け、2018年には可視化やクラウドネイティブなIoTデバイスを展開している。

 ソラコムでは、サービス開始以来、2週間の周期で開発とリリースを繰り返しており、これまで106回の新機能をリリースしている。基調講演では新サービス発表はもちろんのこと、スケールメリットを顧客に還元した値下げの発表も行なわれた。

SORACOM IoT SIMがマルチキャリア対応 料金も低廉に

 130カ国を超える国と地域で利用可能な「SORACOM IoT SIM」(旧称:グローバルSIM)がマルチキャリア対応し、KDDIのLTE網へ接続可能になった(Limited Preview)。NTTドコモの3G/LTE網の0.2ドル/MBに比べて1/10となるデータ通信料金で提供される。あわせて、83カ国でデータ通信料金が値下げされ、ヨーロッパの主要国は1/4になる。

SORACOM IoT SIMがKDDIのLTE網に対応

 また、日本でSORACOM IoT SIMを使う場合、これまではランデブーポイントのあるドイツ経由で利用していたが、日本と北米にもランデブーポイントを新設した。これにより、日米でIoT SIMを用いても大きな遅延が発生しないで済むようになった。さらに最大8Mbpsの新スピードクラス「s1.4xfast」も投入。これまでの2Mbpsから4倍となる高い伝送能力を実現した。

 eSIMのプロファイルダウンロードにも対応(Technology Preview)。QRコードやアプリからプロファイルのダウンロードが可能になるため、物理的な形状から解放されることになる。イベントでは、玉川氏が副回線としてプロファイルを追加し、アンテナピクトが2本になったところを披露した。

eSIMのプロファイルのダウンロードにも対応

新サービス「SORACOM Funk」「SORACOM Napter」、VPGの料金体系見直し

 SORACOMクラウドの新サービスは、ソラコム CTOの安川健太氏から発表された。安川氏は、クラウドサービスに直接データを送信できるクラウドリソースアダプター「SORACOM Funnel」について紹介。パートナー独自のPartner Hosted Adaptorとして新たにOPTiM Cloud IoT(OPTiM)とmockmock(Fusic)が追加されたことを発表した。

ソラコム CTO 安川健太氏

 新サービスとしてはIoTデバイスからサーバーレスサービス(FaaS)を利用できる「SORACOM Funk」が発表された。シンプルなプロトコルでAWS LambdaやAzure Functions、Google Cloud Functionsなどを呼び出し、実行結果を受け取ることが可能になる。デバイス側のロジックをクラウド側にオフロードできる。リクエストあたり、0.0018円(税別)で、5万リクエスト/月の無料枠も用意される。

サーバーレスと連携できる「SORACOM Funk」

 もう1つの新サービス「SORACOM Napter」はオンデマンドのリモートアクセスを可能にするサービス。アクセスポートをリクエストすると動的なグローバルアドレスとポートが払い出され、SSHやRDPでアクセスしたり、暗号化通信に対応していないカメラにつなぐことができる。SIMあたり月額300円が利用した月のみかかる。

アドホックでデバイスにリモートアクセスできる「SORACOM Napter」

 さらに、閉域網構築のため、SORACOMとユーザー側のシステムとの間に設置されるVPGのゲートウェイもより使いやすくなる。SIMごとの料金が廃止され、ピアリングも1接続まで無料に。1000回線で閉域接続を1ヶ月利用した場合の試算では、80%以上の料金オフになるという。VPG利用時には、カスタムDNS、CHAP認証、SORACOM Beam、Funnel、Funkなどのサービスも無料になるという。

大容量データ対応とエッジプロセッシングの強化

 IoTの敷居を下げる取り組みとして、可視化サービスや大容量データ対応、エッジプロセッシング、プロトタイプ開発などのトピックや新サービスをまとめたのはソラコム プリンシパルソフトウェアエンジニア 片山 暁雄氏だ。

ソラコム プリンシパルソフトウェアエンジニア 片山 暁雄氏

 

 データの収集や蓄積が可能なSORACOM Harvestの新サービスとして、画像ファイルやログファイルを保存できる「SORACOM Harvest Files」が追加された。APIやコンソール経由でデバイスからのファイルを取得したり、ファームウェアの配信にも利用できる。データのアップロードは2年間のデータ保存料込みで1GiBあたり200円。ダウンロードも同じ料金になる。同日から利用可能。

大容量データを保存できるSORACOM Harvest Files

 動画・画像・ログファイルなど10GBを超える大容量データ向けのアップロードSIM「plan-DU」も追加された。NTTドコモのLTE回線を利用しており、アップロード速度の制限はなし(ダウンロードは4Mbps)。上り10GiB/下り1GiBで月額1200円の「DU-10GB」と上り50GiB/下り2GiBで月額2900円の「DU-50GB」という2つのパッケージを用意。両者とも、基本料金とデータ通信料金、300円分のアプリケーション利用料金を含んでいる。8月より出荷予定。

 さらにプログラマブルなカメラ「S+ Camera Basic」も発表された。左右に回転可能な広角レンズとセルラー回線を搭載したネットワークカメラで、遠隔からアルゴリズムを更新できる。これを実現するデバイスやアルゴリズムの管理機能、Web UIなどを統合したエッジコンピューティングのプラットフォームを「SORACOM Mosaic」と呼んでおり、このプラットフォーム上にユーザー自身がアプリケーションを構築できる。

セルラー回線を搭載した「S+ Camera Basic」

 S+ Camera Basicはカメラ5台、3ヶ月のサービス利用料、1dayトレーニング、スタートコンサルティング(8時間)を含んだトライアルパッケージが98万円(税別)で提供される。また、SORACOM Mosaicはパートナー向けにプライベートベータが提供される予定となっている。

IoTの敷居を下げるデバイスや新機能追加

 プロトタイプ開発を促進する施策としては、「M5Stack」の拡張ボード「M5Stack用3G拡張ボード」を発売する。M5Stackはディスプレイやコネクタ、バッテリがパッケージ化されたマイコンで、Arduino IDEやブラウザでの開発が可能になっている。M5Stack用3G拡張ボード単体が8880円、M5Stack Basicと拡張ボードのセットが1万2800円(税抜)。

 また、1クリックでクラウドの呼び出しを可能にするSORACOM LTE-Mボタンシリーズも機能強化される。電池駆動可能で通信モジュールを内蔵したボタンとして、これまでAWS IoTを利用可能な「LTE-M Button powered by AWS」やBeam/Fuunel/Funk/Harvestなどに対応する「LTE-M Button for Enterprise/Button Plus」などが提供されてきたが、LTE-Mの機能強化により新たに簡易位置測定が可能になった。通信基地局の位置情報をデータに付与し、SORACOMの各種サービスに送ることができるという。

LTE-M Buttonシリーズで新たに簡易位置測定が可能に

 さらにSORACOMの事例で用いられたソリューションをそのまま提供し、サブスクリプション型で利用できる「IoT SELECTION connected with SORACOM」には、リリース時の「スマート農業」「リアルタイム車両管理」「音声翻訳機」「トイレ満空表示」に加え、以下の9つのソリューションが追加された。

IoT SELECTION connected with SORACOM」に9つのソリューションが追加

  • センサー×AI見守りサービス(Z-Works)
  • 画像監視サービス(YE-DIGITAL)
  • 積層信号灯監視サービス(KYOSO)
  • 排尿リズム見える化サービス(Triple W Japan)
  • 屋外監視カメラソリューション(トーノーセキュリティ)
  • 高機能タブレットPOS(ティーガイア)
  • リアルタイム所在管理システム(リアルタイムシステムズ)
  • IoTオールインワンデバイス(旭光電機)
  • 見守りGPSボタン(エコモット)
前へ 1 2 次へ

この記事の編集者は以下の記事もオススメしています

過去記事アーカイブ

2024年
01月
02月
03月
04月
05月
06月
07月
08月
09月
10月
11月
12月
2023年
01月
02月
03月
04月
05月
06月
07月
08月
09月
10月
11月
12月
2022年
01月
02月
03月
04月
05月
06月
07月
08月
09月
10月
11月
12月
2021年
01月
02月
03月
04月
05月
06月
07月
08月
09月
10月
11月
12月