「KX-0.5P」「KX-0.5UB/UR」ほか、ポイントファイブ・トリプル・セレクト
塗装が変われば音も変わる、漆やピアノ仕上げが選べる「KX-0.5」
2019年05月23日 18時30分更新
クリプトン(KRIPTON)は5月22日、ブックシェルフスピーカー「KX-0.5P」を発表した。発売は7月下旬。
KX-0.5Pは、リファレンスモデルでありながら、同社のラインアップでは最も手軽かつ小型の「KX-0.5」(愛称:ポイント・ファイブ)の外装を「ピアノブラック」仕上げに変更したもの。表面がより硬くなり、音調などにも差が出ることから、内部配線や吸音材など音質面を再調整した。
エンクロージャーは、針葉樹系の高密度パーチクルボードとMDFボード(リア)で構成。これに通常モデルと同じスモークユーカリ木目の突板を貼り、一度箱に仕上げてから、改めてピアノブラックの仕上げを施している。塗装などの処理は浜松で実際にピアノの塗装を手掛けた企業に委託。単純な黒のグロス塗装とは一線を画す、ピアノと同様に手の込んだ仕上げとなっている。
KX-0.5はスモークユーカリ木目の突板の上にポリウレタン塗装を施している。KX-0.5Pでは、さらにその上に、ポリエステルを吹き、ミラー仕上げするといった工程が加わる。オーディオ事業部長の渡邉勝氏によると、「ピアノ塗装は手がかかるもので、国内でやるのは高コストで困難」とのことだが、国内生産ならではの本物の品質にこだわったそうだ。
具体的には、塗装を吹いて自然乾燥させ、一層目から表面のフラットを出しながらゆがみのない塗装を重ねる。本体をひっくり返しながら、6面すべてを旋盤のように回っているサンドペーパーで磨き、最後にバフ掛けして鏡面を出す。この品質の高さは、海外ではなかなかできないものだという。
音質面では、塗装面が硬くなるため、低域が締まり、ハイに寄ったバランスになるという。そこで、ツィーター用の内部配線は、マグネシウムの単線にPC Triple Cを6束使った「KX-3 Sprit」と同じものに変更している。
KX-0.5は、2ウェイ密閉型のブックシェルフで、直径35mmのリング型のピュアシルクツィーターと直径140mmのカーボンポリプロピレン(CPP)ウーファーを採用している。本体サイズは幅194×奥行き319×高さ352mm。インピーダンスは6Ωで、出力音圧レベルは87dB/mW。50Hz~50kHzまでの再生に対応する。
140mmと小さい口径で低域を出すため、共振周波数(f0)をユニット単体で35Hzまで下げている(エンクロージャに入れたスピーカーとしては50Hz)。渡邉氏によると「これは横ブレなどをして過酷」とのことだが、重く、ロングトラベルのボイスコイルにしている。同時にエッジワイズ線を4層巻きにすることで能率も上げている。「苦肉の策だったが、いい結果が得られた」とする。
同社では標準モデル「KX-0.5」に加え、直販限定の漆塗りモデル2種「KX-0.5UB」(溜塗)と「KX-0.5UR」(朱塗)も発表済みだ。これらにピアノブラックを加えた3種を「ポイントファイブ・トリプル・セレクト」と総称。外観の違いや、仕上げに起因する音の違いなどで、ユーザーに選択肢を提示していく考えだ。
漆塗りモデルは、標準モデルの上に3行程の上塗りを施したものとなるが、塗装面がピアノフィニッシュよりは柔らかく、余分な響きを吸収するため、音調はまた異なる。もともと、ペア40万円近い価格での販売が計画されていたが、直販価格29万8000円(税抜)に価格を下げた。結果、18万5000円(税抜)の標準モデル、22万円(税抜)のKX-0.5Pの3種類4モデルが20~30万円程度の価格帯にそろい踏みとなる。
都内にあるクリプトンの試聴室で、3種類の音を聴き比べてみたが、標準モデルに比べて漆塗りモデルでは余分な残響が減り、より整理されたサウンドに。全帯域の音が滑らかになじんでつながりがいい。一方、ピアノフィニッシュでは、ハッキリ・クッキリとしてエネルギッシュ。女性ボーカルにはハリがあり、ベースの弦を弾く音も明瞭だ。
いずれも、小型のブックシェルフスピーカーとは思えない、明瞭で深い低域が魅力だ。例えば、幻想交響曲のような大編成のオーケストラ曲では、地響きのように迫ってくる、ティンパニーや太鼓の低音も量感があり、かつ破綻しない。ピアノフィニッシュと漆塗りはキャラクターの差はあるが、どちらも良質なサウンドだった。
コンパクトで音のいいスピーカーを探している人におすすめできる。