事前に予約しておくことですぐにドリンクを受け取れる
モバイルオーダーは、アプリからドリンクをあらかじめ発注することができる仕組みです。スターバックスでの店舗体験をどのように変えているか、見ていきましょう。
コーヒーを買う場合、通常はまず店舗に入ってレジでドリンクをオーダーします。スターバックスではオーダーが入ってからドリンクを作り始めるため、たとえレジに人が並んでなくても、そこから数分の待ち時間があります。そしてドリンクができあがってから受け取る、という形です。
そこで問題となるのが、店の混雑です。
スターバックスでは店が混んでくると、レジ待ちとドリンク待ちで2つの待ち時間が延びていくことになります。オフィスに行く前にコーヒーを買う客も、たまたま訪れて朝食を済ませようとする客も、等しくその行列に巻き込まれることになります。
モバイルオーダーは、そのレジ待ちを回避することができ、時間の短縮となります。さらに駅から職場までの徒歩の間に店がある場合、ちょうどその店舗の前を通るタイミングに合わせて事前にドリンクをオーダーすれば、レジで並んだときと同じようにできたてのドリンクを手にすることができるのです。
なじみの顧客であればあるほど、その店舗を使いこなすことができるようになり、「混んでるから別の店で買おう」という顧客の流出も防げるようになります。
店舗そのものの効率も上がる
米スターバックスの2019年1~3月期の決算では、既存店売上高は4%増、アプリのメンバーも13%増加しました。モバイルオーダーに加えてUber Eatsによるデリバリー強化も助けて、売上高の向上として効果が現れています。
スターバックスは当初、店舗を家でもオフィスでもない「サードプレイス」として人々のライフスタイルの中に定着させようとしてきました。しかしモバイルオーダーは、店舗の役割を、より効率的にコーヒーを作る場へと変えようとしています。
実際、スターバックスの店舗を見てみると、レジ対応をする店員1人に対して、ドリンクを作る人は2~3人となっていて、レジ以外から来るオーダーを裁く体制を整えていました。
米国で感じる氷河のように遅いレジは、トレーニングで改善しつつも、売上のボトルネックを回避する方法をテクノロジーで作りだした点は、非常に興味深い変化と言えます。
筆者紹介――松村太郎
1980年生まれ。ジャーナリスト・著者。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)。またビジネス・ブレークスルー大学で教鞭を執る。モバイル・ソーシャルのテクノロジーとライフスタイルについて取材活動をする傍ら、キャスタリア株式会社で、「ソーシャルラーニング」のプラットフォーム開発を行なっている。
公式ブログ TAROSITE.NET
Twitterアカウント @taromatsumura
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