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ロードマップでわかる!当世プロセッサー事情 第501回

業界に多大な影響を与えた現存メーカー ハードウェアビジネスから脱却して再成長したIBM

2019年03月11日 12時00分更新

文● 大原雄介(http://www.yusuke-ohara.com/) 編集●北村/ASCII.jp

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ハードウェア部門の売上が激減し
Gerstner CEOが更迭される

 さてそのPalmisano氏がCEOになったきっかけは売上の悪化である。連載495回に部門別の売上比率を示したが、1992~2012年の売上と損益の結果をまとめたのが下表である。

部門別売上金額と売上比率
年度 売上 粗利 営業損益 ハードウェア部門売上 ハードウェア部門の比率
1992年 645億2300万ドル 294億5400万ドル -49億6500万ドル 337億5500万ドル 52.3%
1993年 627億1600万ドル 241億4800万ドル -81億0100万ドル 305億9100万ドル 48.8%
1994年 640億5200万ドル 252億8400万ドル 30億2100万ドル 323億4400万ドル 50.5%
1995年 719億4000万ドル 303億6700万ドル 41億7800万ドル 356億ドル 49.5%
1996年 759億4700万ドル 305億3900万ドル 54億2900万ドル 363億1600万ドル 47.8%
1997年 785億0800万ドル 306億0900万ドル 60億9300万ドル 362億2900万ドル 46.1%
1998年 816億6700万ドル 308億7200万ドル 63億2800万ドル 360億9600万ドル 44.2%
1999年 875億4800万ドル 319億2900万ドル 77億1200万ドル 378億8800万ドル 43.3%
2000年 850億8900万ドル 315億7800万ドル 78億7400万ドル 377億7700万ドル 44.4%
2001年 830億6700万ドル 318億8900万ドル 81億4600万ドル 333億9200万ドル 40.2%
2002年 811億8600万ドル 302億8400万ドル 53億3400万ドル 276億3000万ドル 34.0%
2003年 891億3100万ドル 325億4700万ドル 65億5800万ドル 282億6000万ドル 31.7%
2004年 962億9300万ドル 355億6900万ドル 74億7900万ドル 307億1000万ドル 31.9%
2005年 911億3400万ドル 365億3200万ドル 79億3400万ドル 238億5700万ドル 26.2%
2006年 914億2400万ドル 382億9500万ドル 94億9200万ドル 210億9800万ドル 23.1%
2007年 987億8600万ドル 417億2900万ドル 104億1800万ドル 219億7000万ドル 22.2%
2008年 1036億3000万ドル 456億6100万ドル 123億3400万ドル 192億8700万ドル 18.6%
2009年 957億5800万ドル 437億8500万ドル 134億2500万ドル 161億900万ドル 16.9%
2010年 998億7000万ドル 460億1400万ドル 148億3300万ドル 179億7300万ドル 18.0%
2011年 1069億1600万ドル 501億3800万ドル 158億5500万ドル 176億6700万ドル 16.5%
2012年 1045億0700万ドル 502億9800万ドル 166億0400万ドル 189億8500万ドル 18.2%

 1992年/1993年は記録的な赤字決算であり、これもあってAkers氏が辞任したのは連載495回で説明した通り。

 これに比べると2000年前後の状況はそう悪くない、という見方もできるのだが、それでも2001年には売上の伸びがとまり、2002年も引き続き減少するとともに、営業利益が大幅に落ち込んだ(といっても53億ドルは確保していたのだが)こともあり、この責任を取った形となる。

 そもそも2001年の落ち込みは2000年問題への反動という部分も多かった。2001年のAnnual Reportによれば、ハードウェア部門の売上は2000年が377億7700万ドル、2001年が333億9200ドルで、11.6%ほど下がっている。

 ただしエンタープライズ向けは3.2%ほどの減少に過ぎず、ESA/390の後継であるzシリーズはむしろ売上が伸びたほか、xシリーズとUNIXベースのpシリーズも売上を伸ばしている。

 これに対してPCおよびプリンター部門は20.6%もの売上減となり、これは2000年を前にPCの駆け込み需要が大量に発生、2001年はこの反動で思いっきり売上が落ちた形だ。

 では2002年にはこれが盛り返したか? というと、より一層落ち込んだ。売上はさらに31億3700万ドル減の274億5700万ドルにまで落ち込んだ。合計すると305億9300万ドルとなり、上の333億9200万ドル数字が合わないのは、HDD部門を外部に出してしまったため、これを除外したからだ。残った部門の売上が31億ドルあまり減った、ということだ。

 1993年には売上の55%あまりを占めていたハードウェア部門は、2002年には33.8%まで比率が落ち込んでおり、これをグローバルサービスとソフトウェアの部門が補った形になっている。

 詳細を見てみると、ハイエンドのzシリーズこそ若干ながら売上が増えているが、その下のpシリーズサーバーやDASD(Direct Attach Storage Device:SANやNASといった大容量ストレージ)、xシリーズのPCサーバを含むPC全般のすべてで売上が減っている。

 問題はIBMの場合、こうした製品の自社製造の比率が高いことで、売上が減ると相対的に固定費が重くのしかかる形になり、利益率が低下することになる。

 実際2002年にはハードウェア部門は粗利率も27.1%まで減っており、こうしたハードウェア部門のお荷物ぶりが顕著になり始めており、これをGerstner氏ではどうにもできなかった、というあたりで取締役会がGerstner氏の更迭を決めたわけだ。

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