ハードウェア部門の売上が激減し
Gerstner CEOが更迭される
さてそのPalmisano氏がCEOになったきっかけは売上の悪化である。連載495回に部門別の売上比率を示したが、1992~2012年の売上と損益の結果をまとめたのが下表である。
部門別売上金額と売上比率 | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|
年度 | 売上 | 粗利 | 営業損益 | ハードウェア部門売上 | ハードウェア部門の比率 | |
1992年 | 645億2300万ドル | 294億5400万ドル | -49億6500万ドル | 337億5500万ドル | 52.3% | |
1993年 | 627億1600万ドル | 241億4800万ドル | -81億0100万ドル | 305億9100万ドル | 48.8% | |
1994年 | 640億5200万ドル | 252億8400万ドル | 30億2100万ドル | 323億4400万ドル | 50.5% | |
1995年 | 719億4000万ドル | 303億6700万ドル | 41億7800万ドル | 356億ドル | 49.5% | |
1996年 | 759億4700万ドル | 305億3900万ドル | 54億2900万ドル | 363億1600万ドル | 47.8% | |
1997年 | 785億0800万ドル | 306億0900万ドル | 60億9300万ドル | 362億2900万ドル | 46.1% | |
1998年 | 816億6700万ドル | 308億7200万ドル | 63億2800万ドル | 360億9600万ドル | 44.2% | |
1999年 | 875億4800万ドル | 319億2900万ドル | 77億1200万ドル | 378億8800万ドル | 43.3% | |
2000年 | 850億8900万ドル | 315億7800万ドル | 78億7400万ドル | 377億7700万ドル | 44.4% | |
2001年 | 830億6700万ドル | 318億8900万ドル | 81億4600万ドル | 333億9200万ドル | 40.2% | |
2002年 | 811億8600万ドル | 302億8400万ドル | 53億3400万ドル | 276億3000万ドル | 34.0% | |
2003年 | 891億3100万ドル | 325億4700万ドル | 65億5800万ドル | 282億6000万ドル | 31.7% | |
2004年 | 962億9300万ドル | 355億6900万ドル | 74億7900万ドル | 307億1000万ドル | 31.9% | |
2005年 | 911億3400万ドル | 365億3200万ドル | 79億3400万ドル | 238億5700万ドル | 26.2% | |
2006年 | 914億2400万ドル | 382億9500万ドル | 94億9200万ドル | 210億9800万ドル | 23.1% | |
2007年 | 987億8600万ドル | 417億2900万ドル | 104億1800万ドル | 219億7000万ドル | 22.2% | |
2008年 | 1036億3000万ドル | 456億6100万ドル | 123億3400万ドル | 192億8700万ドル | 18.6% | |
2009年 | 957億5800万ドル | 437億8500万ドル | 134億2500万ドル | 161億900万ドル | 16.9% | |
2010年 | 998億7000万ドル | 460億1400万ドル | 148億3300万ドル | 179億7300万ドル | 18.0% | |
2011年 | 1069億1600万ドル | 501億3800万ドル | 158億5500万ドル | 176億6700万ドル | 16.5% | |
2012年 | 1045億0700万ドル | 502億9800万ドル | 166億0400万ドル | 189億8500万ドル | 18.2% |
1992年/1993年は記録的な赤字決算であり、これもあってAkers氏が辞任したのは連載495回で説明した通り。
これに比べると2000年前後の状況はそう悪くない、という見方もできるのだが、それでも2001年には売上の伸びがとまり、2002年も引き続き減少するとともに、営業利益が大幅に落ち込んだ(といっても53億ドルは確保していたのだが)こともあり、この責任を取った形となる。
そもそも2001年の落ち込みは2000年問題への反動という部分も多かった。2001年のAnnual Reportによれば、ハードウェア部門の売上は2000年が377億7700万ドル、2001年が333億9200ドルで、11.6%ほど下がっている。
ただしエンタープライズ向けは3.2%ほどの減少に過ぎず、ESA/390の後継であるzシリーズはむしろ売上が伸びたほか、xシリーズとUNIXベースのpシリーズも売上を伸ばしている。
これに対してPCおよびプリンター部門は20.6%もの売上減となり、これは2000年を前にPCの駆け込み需要が大量に発生、2001年はこの反動で思いっきり売上が落ちた形だ。
では2002年にはこれが盛り返したか? というと、より一層落ち込んだ。売上はさらに31億3700万ドル減の274億5700万ドルにまで落ち込んだ。合計すると305億9300万ドルとなり、上の333億9200万ドル数字が合わないのは、HDD部門を外部に出してしまったため、これを除外したからだ。残った部門の売上が31億ドルあまり減った、ということだ。
1993年には売上の55%あまりを占めていたハードウェア部門は、2002年には33.8%まで比率が落ち込んでおり、これをグローバルサービスとソフトウェアの部門が補った形になっている。
詳細を見てみると、ハイエンドのzシリーズこそ若干ながら売上が増えているが、その下のpシリーズサーバーやDASD(Direct Attach Storage Device:SANやNASといった大容量ストレージ)、xシリーズのPCサーバを含むPC全般のすべてで売上が減っている。
問題はIBMの場合、こうした製品の自社製造の比率が高いことで、売上が減ると相対的に固定費が重くのしかかる形になり、利益率が低下することになる。
実際2002年にはハードウェア部門は粗利率も27.1%まで減っており、こうしたハードウェア部門のお荷物ぶりが顕著になり始めており、これをGerstner氏ではどうにもできなかった、というあたりで取締役会がGerstner氏の更迭を決めたわけだ。
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