■世界的なロボット大会を加賀市で開催
加賀市でのプログラミング教育にはもうひとつ大きな取り組みがある。2014年から取り組んでいる国際的なロボット大会「RoboRAVE(ロボレーブ)」だ。
ロボレーブは、2001年にアメリカで始まったロボットプログラミング教育。世界大会には毎年3000人が集うグローバルな展開をしている。加賀市ではプログラミング教育実施に先立ち2014年に加賀大会を初開催。以降、毎年国際大会を開催している。さらに2020年には、加賀市が世界大会の開催地となる予定だ。
「加賀市の子ども達へのつかみは、ロボレーブの存在が大きかったと思います。ロボットとプログラミングのおもしろさを目で見て感じ取れたというところから入ってきて、そして現在は学校で行なっているプログラミング授業によって、理解がどんどん深まってきていると思います」(宮元市長)
ふだん勉強が大嫌いな子でも、プログラミングになると意欲的にやってきているのがわかると、宮元市長は話す。「内向的な子どもが、プログラミングで変わって意欲的になったのを見て、プログラミング教育の効果に驚いています」
■教育格差のない環境づくりを目指す
アワー・オブ・コード、ロボレーブ。2つの形で他の自治体にはないプログラミング教育の取り組みを行ってきた加賀市だが、3つ目として昨年12月に発表したのが日本初となるコンピュータクラブハウスの開設だ。
コンピュータクラブハウスは米国発祥、誰でもコンピュータで学べる図書館のような場所だ。「子ども達が学校外でテクノロジーに、いつでも安全に触れられる場所」としてコンピュータや3Dプリンターなどの機器を配し、世界18ヵ国に約100ヵ所あるという。一定条件を満たして認定されれば、コンピュータクラブハウス本部による豊富な学習プログラムなどのサポートも受けられる。
具体的な活動としては、「放課後や週末に週20時間以上子ども達が自由に使える場を開放」するほか、子ども達へのメンタリング、ワークショップも実施する。教材や機材は、Scratchやテキスト言語を使ったプログラミング、micro:bitやRaspberryPi、3Dプリンターなどを用意する。大人向けの市民工房「Fabラボ」の子ども版といった内容になる予定。場所としては「加賀市イノベーションセンター」内に開設予定で、現在準備中だ。
コンピュータクラブハウス開設にいたった経緯を、宮元市長はこう語っている。
「現在の年間5時間というプログラミング授業は少ないと感じてました。もっともっと、子ども達に時間をつくってあげないといけないと思って、まず、地域のICTクラブ設立へ広げていきました。コンピュータクラブハウスは、さらにその延長になります。子ども達にはより高度なものを教えたいと思っているので、海外の豊富なノウハウが現場で生かされるのは魅力的です」
また根底にあるのは「所得格差による教育格差を作らない」という思想だ。
「教育機会を均等にすること。すべての子ども達に平等な機会をあたえられる仕組みはものすごく大切です。コンピュータクラブハウスの主旨はそうですし、偶然ですが、ロボレーブの設立も同じだったそうです。家庭の収入格差に関わらず、子ども達がどんどんコンピュータが使えるように、プログラムを教えてもらえるように、そんな機会を作っていきたいと思います」