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ロードマップでわかる!当世プロセッサー事情 第499回

業界に多大な影響を与えた現存メーカー AS/400でオフィスでの地位を不動にしたIBM

2019年02月25日 12時00分更新

文● 大原雄介(http://www.yusuke-ohara.com/) 編集●北村/ASCII.jp

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プロセッサーの性能により
ソフトウェアの価格が変わる

 さて、1988年にはこのプロセッサーモジュールを利用したAS/400 B10~B60が出荷され、翌1989年にはハイエンドのB70が出荷開始される。

 ちなみにProcessor GroupではP10とP20に属する。Processor GroupというのはIBMの用語で、どのグループに属するかでソフトウェアライセンスの価格が変わるというもの。今で言えば、Core向けとXeon向けでOSやアプリケーションのライセンス料が変わる感じに近い。

 ではProcessor Groupはなにで決まるかというと基本的には性能であるが、この性能が毎年どんどん上がっていく状況であり、そういう意味では古い世代で上位のProcessor Groupのシステムを使うよりも、新しい世代で下位のProcessor Groupのシステムを使った方が下手をすると性能が上、ということもちょくちょくあったようだ。

 ただこれにより、煩雑なアップグレードが見込めたという側面もあるから、IBMとしては別に問題はなかったのかもしれない。

 プロセッサーの性能そのものはCPW(Commercial Processing Workload)なる数字が明らかになっている。これはTPC-Cというオンライントランザクションベンチマークを簡単化したようなIBM独自の指標であるが、少しラインナップで拾うと下表のような関係になっている。

プロセッサーのラインナップと性能
モデル 年度 プロセッサーモデル CPW
B10~B70 1988~1989 P10/P20 2.9~20
C04~C25 1990 P10 3.1~6.1
D02~D80 1991 P10/P20/P30 3.8~56.6
E02~E95 1992 P10/P20/P30/P40 4.5~116.6
F02~F97 1993 P05/P10/P20/P30/P40 5.5~177.4
P01~P03 1993~1995 P05 7.3~16.8
10S~140 1993~1995 P05/P10/P20 17.1~65.6
200~236 1994 P05/P10 7.3~17.1
300~310 1994 P10/P20/P30/P40 11.6~177.4
400~436 1995 P05/P10 13.8~91.0
500~53S 1995 P10/P20/P30/P40 18.7~650
150 1996 P05 10.9~35.0
S10~S40 1997 P05/P10/P20/P30/P40/P50 45.4~4550
SB1~SB3 1997~2000 P30/P40 1794~16500
600~650 1997 P05/P10/P20/P30/P40/P50 22.7~4550
170 1998 P05/P10/P20 30~1090
720~740 1999 P10/P20/P30/P40/P50 240~4550
250/270 2000 P05/P10/P20 50~2350
820 2000~2001 P05/P10/P20/P30/P40 100~3700
830~840 2000~2002 P20/P30/P40/P50 1850~20200
870~890 2002 P40/P50/P60 7700~37400
800~825 2003 P05/P10/P20/P30 300~6600
520~595 2004~2006 P05/P10/P20/P30/P40/P50/P60 500~216000
515~570 2007 P05/P10/P40 3800~58500
MMA (9406) 2007 P30 5500~76900
M15~M50 2008 P05/P10/P29 4300~18000
MMA 2008 P30 8150~76900
JS12/JS22 2008 P05/P10 7100/13800
570 (9117) 2008 P30 104800
595 (9119) 2008 P60 294700

 1993年にP05のモデルが追加されるまではP10が一番ローエンドのプロセッサーモデルであるが、1988年ではCPWが最低で2.9だったのが1992年に4.5、1994年には11.6まで引きあがっている。

 6年で性能が4倍なので、毎年40%以上の性能改善がなされていたことになる。これが可能になったのは、ハイエンド製品と同じくAS/400もCMOSで製造されていたからだ。

 1980年代末~1990年代にかけては、ほぼ毎年のようにプロセスが微細化され、動作周波数の向上とロジック密度の向上、そして消費電力の低減が実現されていった。

 これはハイエンドの方も同じで、1989年にはCPWで20だったハイエンド品は、1992年には116.6、1993年には177.4で、やはり年率43%ほどの割合で性能が改善している。

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