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ドローン空撮画像から保護シートの破損箇所を自動検出

南相馬市、除染土の保護シート点検業務にドローンと深層学習とGCP

2019年02月12日 07時00分更新

文● 羽野三千世/TECH.ASCII.jp

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 東日本大震災からまもなく8年が経とうとしているが、福島県では、原子力発電所の事故で放出された放射性物質の「除染作業」が今も続いている。

 福島県南相馬市では、放射性物質が堆積した土や草を除去する「面的除染」が2018年3月に完了した。除去土壌は現在、市内36地点160カ所の「仮置き場」に保護シート(通気性防水シート)で覆った状態で保管されている。この仮置き場で3年程度保管したのち、中間貯蔵施設へ運ばれ、30年以内に県外で最終処分される予定だ。

 南相馬市の仮置き場は、市から除染作業の委託を受けた竹中工務店・竹中土木・安藤ハザマ・千代田テクノルで構成される共同企業体が管理している。保管された除去土壌が飛散・流出しないよう、保護シートの定期点検が欠かせない。市内の仮置き場の総面積は24万平方メートル、高さは3~5メートルほどあり、人が登って目視点検する作業には膨大な時間と転落の危険が伴っていた。

南相馬市の「仮置き場」。高さ3~5メートルに積み上げられた除染土壌の入った容器が保護シートで覆われている。

 そこで同市では、2016年から仮置き場の保護シートの点検作業にドローンを導入した。2017年11月からは、ディープラーニングを使って画像から保護シートの破損箇所を自動検出することも行っている。協力したのは、ソニーとZMPの共同出資会社エアロセンスだ。

 2019年2月5日、南相馬市の仮置き場で、ドローンとディープラーニングを使って保護シートの点検作業を行う様子がプレスに公開された。

上空10メートルの高さで飛行するドローンから仮置き場を撮影。

空撮画像から保護シートの破損を自動検出する仕組みをGCP上に構築

 エアロセンスは、指定した経路を自律飛行して空撮するドローン「AEROBO」、ドローンを使って測量を行う「AEROBOマーカー」、測量データを解析するクラウド「AEROBOクラウド」を開発している。同社はまず、ドローンで1区画(約1万平方メートル)あたり100~500枚を空撮した画像から高精度な全景画像を生成。画像上で保護シートの破損箇所を目視点検できるようにした。2015年12月から検証を開始し、2016年6月に南相馬市の仮置き場の点検作業に本格導入している。

エアロセンスの自律飛行型ドローン「AEROBO」AEROBOの腹面に搭載されたカメラ

 次にエアロセンスは、破損箇所の画像データをもとに、新たに撮影した画像から破損を自動検出する深層学習モデルをTensorFlowで作成。深層学習モデルを実装した画像解析システムをGoogle Cloud Platform(GCP)上に構築した。ドローンで撮影した仮置き場の空撮画像をGCP上のシステムへアップロードするだけで、保護シートが破損していると推測される箇所が赤枠で示される。最終的には、赤枠で示された部分の画像を拡大して、人が確認する。破損を見逃してしまうことが最大のリスクのため、人の確認作業を入れる形にしたという。2017年11月に点検作業に導入したところ、導入前と比較して人の作業時間が約60%削減できた。

画像から保護シートの破損と推定される箇所を自動検出して赤枠で表示赤枠の付近を拡大して目視確認する

 破損箇所を自動検出する深層学習モデルは、TensorFlowで実装したCNN(畳み込みニューラルネットワーク)を使って、約1000枚の正解データと1万枚の不正解データから作成している。モデルの作成自体は1週間ほどで完了したという。また、深層学習モデルを実装した画像解析システムはGoogle Compute Engine(IaaS)で構築されており(Webフロントの一部はGoogle App Engine)、画像解析処理はGPU搭載インスタンスで行っている。

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