データで見るVTuber 第2回
この2週間で注目が集まったバーチャルYouTuberを分析 2019年1月12日~25日
人気VTuberグループ「にじさんじ」から新人・郡道美玲と復活の笹木咲をピックアップ
2019年01月30日 17時00分更新
今回はVTuberグループ「にじさんじ」に注目!
現在6000を超えるバーチャルYouTuber(VTuber)。このうち自分がチェックしている約7000のVTuberのTwitterアカウントから、過去2週間でフォロワー数が増加したVTuberを2名ピックアップし、どのような動きでどのようなフォロワーが増加したかを分析して紹介いたします。
今回は2019年1月12日から25日にかけての2週間の変化を見ました。
今回はVTuberグループ「にじさんじ」から1月17日にデビューした新人「郡道美玲」と「夢月ロア」が大きくフォロワーを獲得。また引退から復帰した同じくにじさんじの「笹木咲」も劇的にフォロワー数を増やしています。
ほか前回も紹介した「ピンキーポップヘップバーン」や「夢咲楓」ほかゲーム部は引き続き好調、ほかホロライブの「白上フブキ」や前回デビューした新人バーチャルライバー「久遠千歳」などがが大きくフォローを伸ばしました。
今回は、ともににじさんじのバーチャルライバー(にじさんじではVTuberをこう呼びます)「郡道美玲」と「笹木咲」を紹介します。
バーチャルYouTuberと言われるもののの、VTuberの活動の場所はYouTubeだけではありません。YouTubeにチャンネルを持たないVTuber、YouTubeを活動の中心としていないVTuberもいます。こうしたVTuberも共通して活用しているのがTwitterであり、Twitterはプラットフォームに依存せずVTuberの注目を比較するのに有益なサービスです。
VTuberについて、YouTubeのチャンネル登録数とTwitterのフォロワー数は相関することもよく知られています。またYouTubeのチャンネル登録と異なり、TwitterはVTuberの個々のフォロワーの情報を取得することが可能なため、後述のようなフォロワー傾向の分析などにも有効です。こうした点から本調査ではTwitterアカウントのフォロワー数を中心に調査を行なっています。
「#郡道美玲チャレンジ」がブレイク
女教師バーチャルライバー「郡道美玲」
郡道美玲(ぐんどうみれい)はにじさんじの新人バーチャルライバーで、男子校で数学を受け持つ女性教師(郡道美玲のYouTubeチャンネル)。キャラクターデザインは「Na53」。
1月17日の活動開始時にツイートした動画を同じくにじさんじの「飛鳥ひな」が真似た「#郡道美玲チャレンジ」がVTuberの間で流行し、にじさんじだけでなく外部の企業グループや個人VTuberなど広く参加して初配信前から話題となりました。
20日に初配信、以降コンスタントにライブ配信を行ない、着実に人気をつけています。同日デビューの「夢月ロア」とは親しい仲で、厳しい女教師キャラのはずがロアの初配信で優しく応援するメッセージが晒されてしまう一幕も。
フォロワーはほとんどが「月ノ美兎」など、にじさんじのバーチャルライバーをフォローしているアカウント。にじさんじはにじさんじ所属であればすべてフォローするような箱推しのファンが多く、初配信前から1万を超えるフォロワーがつくことも珍しくありません。
郡道美玲は特に話題性があったこともあり、にじさんじファンや広くVTuberを追いかけているファンの注目を集め、勢いのあるスタートを切りました。
復活直後に「笹木は嫌われてる」と歌う
問題児だが憎めない「笹木咲」
笹木咲(ささきさく)もにじさんじの女性バーチャルライバー(笹木咲のYouTubeチャンネル)。過去に「にじさんじゲーマーズ」の一員として活動し昨年11月をもって卒業しましたが、1月16日に突然復活しました。VTuber卒業からの復活は企業所属のVTuberとしては珍しく、話題となりました。
「しばらくは清く真っ当な活動を心がける」と復活後最初の動画で宣言した2日後に替え歌動画「笹木は嫌われている。」を投稿。「復帰流石に早いよ。」「あの時なげたスパチャを返せよ。」と潜在する不満を自ら取り上げて歌い、運営や仲間のバーチャルライバーをいじり倒し、従来のスタンスを続ける覚悟を示しました。
この動画は広く話題となり、視聴回数の伸びも良かったことから、にじさんじ・VTuberの文脈に留まらず変わり種の歌ってみた動画としても評価されたものと思われます。動画で「誰やねん」と触れられたにじさんじの男性バーチャルライバー「ベルモンド・バンデラス」のフォロワーも関連して増えています。
フォロワーはこちらも「月ノ美兎」などをフォローしているVTuber全体のファン層やにじさんじファン層が大半ですが、月ノ美兎以外のにじさんじ関連のフォロワー(交友の深い「椎名唯華」のファンなど)も2割ほどと多く、またにじさんじ外のVTuberフォロワーも2割弱とにじさんじ以外のファン層からもフォローされてる点が注目されます。
にじさんじ以外のVTuberでは動画でも「親友」と歌われたゲーム部の「道明寺晴翔」のフォロワーが目立ち、今回の成長では前回紹介したゲーム部の勢いも引き込んでいることが伺えます。
卒業によって一時離れたファンが戻っただけでなく、動画が注目を集めたことで卒業から復活までの間に、にじさんじのライバーや交友VTuberが獲得してきたフォロワーが流れ込んだことが今回の増加の要因のようです。その後も精力的に動画を投稿、配信も再開しており、さらなる拡大が期待されます。
まもなく1周年を迎える「にじさんじ」
VTuberの信頼のブランド
2018年2月から継続してこれまで数十名のバーチャルライバーを輩出してきたグループ「にじさんじ」はVTuberのブランドとしての信頼が高く、新人は活動前から多数のファンから期待を受けてフォローされる傾向があります。デビュー時点で高い注目を得られることは、VTuberとして人気を得るきっかけとしては得難いチャンスです。
一方で、一定以上の人気を得るにはやはり本人の魅力や際立った活動が不可欠で、にじさんじのバーチャルライバーでも伸び悩む者は少なくありません。
にじさんじでは、AbemaTVで毎週放送され、先日セカンドシーズンも決まった「にじさんじのくじじゅうじ」や1月12日に開催された樋口楓の1stライブ「KANA-DERO」などの企画は話題となり、いずれも成功裡に開催されましたが、出演者のフォロワー数などの指標をみると際立った影響は出ておらず、どちらかというと既存ファンへのサービスであり、新規開拓策としては十分でないようです。
こうした点で、外部のVTuberも巻き込んだ「#郡道美玲チャレンジ」や、にじさんじ外からも注目を集めた笹木咲の復活などは新しいファンを呼び込む1つのきっかけとなるかもしれません。
まもなくにじさんじも月ノ美兎ら1期生のデビューから1周年を迎えます。にじさんじの今後がどうなっていくのかは分かりませんが、新年に入ってのこうした新しい動きは今後の参考となるかもしれません。
告知など
調査対象のVTuberのTwitterアカウントをまとめたリストはhttps://twitter.com/myrmecoleon/lists/VTuberほかで公開中。ニコニコ動画での「バーチャルYouTuber」タグの盛り上がりも紹介している「ニコニコ動画統計データハンドブック2019」はCOMIC ZINに委託中。
筆者紹介:myrmecoleon
趣味で同人誌やニコニコ動画関連の研究をしてる人。コミケ・ニコニコ動画・pixiv・deviantARTなどの調査を行ない、『ニコニコ動画統計データハンドブック2019』など同人誌としてコミケで頒布。2014年に自身の企画で「次元の壁をこえて 初音ミク実体化への情熱 展」を開催。元明治大学米沢嘉博記念図書館スタッフで元ニコニコ学会β実行委員。
Twitterアカウントは@myrmecoleon。
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