2018年12月18日、さくらインターネットは衛星データプラットフォーム「Tellus(テルース)」での取り組みを多角的に説明する「宇宙データビジネスフォーラム」を開催。衛星データの利活用の現状やTellusの事業、衛星データ、データサイエンティスト業界の現状など幅広く説明されたほか、第1回衛星データ分析コンテスト「Tellus Satelite Chanllenge」の表彰も行なわれた。
衛星データを使いやすくし、見えないものを見えるように
Tellusは、経済産業省の「平成30年度政府衛星データのオープン&フリー化及びデータ利用環境整備事業」の委託を受けたさくらインターネットが構築する日本初の衛星データプラットフォーム。さくらのコンピューティングとストレージをベースに構築され、2018年度内の運用開始を目指している。
プロジェクトを管轄する経済産業省は、現在1.2兆円規模の国内の宇宙ビジネスを2030年までに倍増させることを目指している。経済産業省の國澤朋久氏は、「世界に比べて日本の宇宙産業の市場規模は小さいし、しかも8割が官需。これをいかに民需を拡げていくのかが鍵」と語る。現在、国内の宇宙ビジネスは機器産業と利用産業で成り立っているが、衛星データを利用しやすい形で提供することで、民間での利用産業を拡大させるちう方向性だ。
事業を受託したさくらインターネットは、Tellusによって「衛星データをコンピューティングにより使いやすくし、見えなかったものを見えるようにする」という。衛星データの活用に向けた課題になっていた「データ加工にコストと労力がかかる」「解析するためのコンピューターの処理能力が必要」という2つの課題をTellusで解消していく。また、Tellusで提供される衛星データと地上データをマッシュアップできる環境を構築し、イノベーションを促進する。さくらインターネット xData Alliance Project シニアプロデューサーの山崎秀人氏は、「衛星データを当たり前のように使える環境を実現したい」と抱負を語る。
Tellusはデータ処理基盤のクラウドに加え、プラットフォームの開発や衛星データの利用促進プロジェクトから構成される。これをドライブするのが、2018年7月に発足した民間アライアンスである「xData Alliance」だ。
東京大学 空間情報科学研究センター 教授 柴崎 亮介氏をリーダーに迎えたxData Allianceは、宇宙産業関連企業を含めた事業者・研究機関・団体から構成され、利用者からの視点でプラットフォームの使い勝手などを提言する。また、幅広い情報提供、データサイエンティスト向けのセミナーやコンテストの開催、衛星データと組み合わせる地上空間データの収集、情報提供などを実施する。
衛星データから土砂崩れを自動検出するアルゴリズムを競う
セミナーでは、第1回衛星データ分析コンテスト「Tellus Satelite Chanllenge」の表彰も行なわれた。今回のTellus Satellite Challengeは、2016年の熊本地震前後のリモートセンシングデータを使って土砂崩れを検出するアルゴリズムを表彰するという内容。陸域観測技術衛星2号「だいち2号」(ALOS-2)に搭載されたPALSAR-2という合成開口レーダ(SAR)が電波を地表面に照射し、地表面から反射される電波を受信することで得られたデータになる。2018年10月16日~12月7日までの期間中、544人が参加し、3400モデルが応募されたという。
コンテストを運営したSIGNITEは、オンラインコンペという形で高精度なAI開発や人材発掘などを推進している。SIGNITE代表取締役社長 CEO/CDOの齊藤秀氏によると、こうしたオンラインコンペは米中などAI強国ではすでに定着しており、賞金をかけてアマゾン地域の森林破壊の様子を衛星データから把握するコンペなどが行なわれている。また、駐車場の車の数を識別することで小売りの業績を推定するOrbital Insightや、農地から生産量、発電設備から発電量などを推定するDescartes Lab.など、衛星データの利活用も進んでいるという。
第2回のTellus Satelite Chanllengeも2019年現在準備中で、光学衛星データによる画像解析を推進すべく、「ASNARO-1」での高分解能光学データを用いる。また、Tellusの衛星データを活用するための技術者養成もスタートしており、東京や大阪のほか、福岡、札幌、山口などでも行なわれる。