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まつもとあつしの「メディア維新を行く」 第62回

ゼネラルプロデューサー 田中宏幸氏インタビュー

愛されるキャラクター創造が軸――サイバーエージェントの新アニメレーベル CAAnimation

2018年12月29日 15時00分更新

文● まつもとあつし 編集●村山剛史

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「WUGの田中P」に期待するのはやはり……アイドル!?

―― さて、ここまでビジネス、おカネの話が続いていますが、エイベックスから移った田中さんが今後どんな作品を生み出していこうとしているのかにも興味がある読者は多いはずです。音楽・ライブ・アイドルに関連したタイトルは企画されているのでしょうか?

『ゾンビランドサガ』 © ゾンビランドサガ製作委員会

田中 残念ながら、あります(笑)

―― 残念ながら?

田中 本音を明かすと、ちょっとアイドルものから少し離れたいと思ったんですよね。アニメ制作とはまた違うエネルギーが求められますから。ライブイベントで、お客さんとダイレクトなコミュニケーションを取り、育成して花開くまで時間も掛かります。

―― 期待も当然あると思います。ASCII.jpでも以前その角度から取材させていただいていますね。

田中 ですので、5~7本の企画にはそういったものも含まれています。そして、まさにいま一緒に動いているCygamesの落合は、僕が日本コロムビアに在籍していたときの同期なんです。

―― そうなのですか!

田中 1998年入社の8人のうちの1人なんです。僕はその後2000年にエイベックスに転職して、落合は2002年にサイバーエージェントに移っています。そして落合も7年ほど前からゲーム部門にいてCygamesの立ち上げをしていて、僕も10年ほど前からアニメ関連の仕事をしていて、この6~7年間はプロデューサーをしていました。

 音楽を起点としながらも、アニメ・ゲームとどう連携を図っていくか、という取り組みを奇しくも同時期に別の場所でしていたんですね。

 ゲーム市場もレッドオーシャンになっていて、落合にとってもゲームの差別化が課題でアニメが必要だと考えていたところに、僕が再び一緒に仕事をすることになったという感じですね。

―― 音楽が共通項になっているというのも興味深いです。

田中 アイドルものもやるのは必然ですね(笑) エイベックス時代もそうでしたが、いずれにせよ音楽には拘りたいと思っています。

 音楽アーティストやアイドルと、オリジナルアニメも共通点が多いと思うんです。いずれもお客さんがゼロのところからスタートしていくことになります。そんななか、お客さんに訴求する要素としての音楽というのは、絶対に欠かせないものです。

 それこそWUGももちろんなのですが、ユーリも僕は「音楽もの」のタイトルという側面もあったと思います。これから企画していく作品についても当然音楽が重要になるものが多いのです。サイバーエージェントには音楽出版の部門はありませんので、そこは外部のパートナーとご一緒していくことにはなると思いますが。

 すでに『ベルゼブブ嬢のお気に召すまま』はアニプレックスさん、『火ノ丸相撲』はポニーキャニオンさん、そして『ゾンビランドサガ』はエイベックスと組んでいます。色々なパートナーといい企画を作りあげたいですね。

フェチシズム、声優さんの魅力、音楽……
すべては愛されるキャラクターのために

―― クリエイティブについても伺いたいと思います。アニメ単体、ゲーム単体での企画の場合と、はじめから連携を図る場合とではどのような点が異なるのでしょうか?

田中 本質的には同じで、キャラクタービジネスなのだと思います。

 特にゲームの場合は、ゲームの面白さはもちろんなのですが、キャラクターを愛してもらってナンボ、というところはあります。『このキャラクターが欲しい』『もっと強くしたい』という気持ちが生まれ、そこではじめて対価を得られるわけです。

 キャラクターに紐付けられたフェチシズム、声優さんの魅力、音楽の魅力なども、すべてキャラクターに向かって整えられていると言えるでしょう。

―― アニメを作る人たちも、それに長けているのではないでしょうか。ゲームにそういったスキルを活かすということですか?

田中 うーん、でも微妙にアニメとゲームで「作法」が違うのかなとは思いますね。アニメの場合はキャラクターを「動かす」ことが前提なので、シンプルな方向に向かいがちです。そしてキャラクター以上にストーリーが重要視されます。そのあたりの違いというのはどうしてもありますね。

 その違いをうまく混ぜていく、両方にマッチする形でデザインをしていくことが、アニメ・ゲーム一緒になだらかなヒットの軌道に乗せていくことにつながるのかなと思っています。

 たとえばゲームって、普通に100人以上キャラクターが登場しますよね。でも、アニメにはそんなに出せません。そうなると、アニメとゲームを連携させるのであれば、「キャラクターが100人という方向性はない」という判断が、初期の段階ではあるかもしれません。

―― キャラクターの設計がゲーム側であって、アニメに展開していくというパターンもありますか?

田中 実際の設定はともかくとして、頭の中では両方を踏まえておくということでしょうね。ゲームとしてヒットさせることと、アニメとして見やすいこと、その両方を満たしながら、生み出していくということだと思います。言葉でいうと簡単なのですが、なかなか難しいですね。

―― ゲームのスタッフとアニメのスタッフが一緒に企画を立てるということも当然あるわけですね。ただ、最終的にはゲームでのマネタイズ、リクープを踏まえてゲームとしてのキャラクターの魅力はゴールとして置いておく、と。

田中 そうですね。根っこにはやはり良いキャラクターと良い設定ができれば、平たく言えばどんなメディアであってもハマると思います。ドラえもんやポケモンがそうであったように、キャラクタービジネスをするために、良いキャラクターが1つ生まれれば、そこからアニメやゲームに展開していくことは可能で、まずキャラクター創造に力をかけていく

 その後、各メディアに合った文法があるので、それぞれにハマるような形でのチューニングを図っていく。そうして原作という形を作り、それぞれのスタッフに引き渡していく、そこに僕たちはプロデューサーとして立ち会う、ということだと思います。

―― CAAnimationが志向する、資金調達から企画に至る全体像がよくわかりました。本日はありがとうございました。

「愛されるキャラクター」の創造がすべてのカギ
今後登場するタイトルに期待

 発表間もないタイミングでの取材だったこともあり、まだCAAnimationが具体的にどのようなタイトルを企画しているか、その詳細を聞くことはできなかったが、その狙いはアニメとゲームとの連携だけでなく、配信の今後の展開などアニメ市場の変化を見据えたものであった。

 「愛されるキャラクター作り」というキャラクタービジネスの本質を踏まえつつ、ゲームでのマネタイズをどのように最大化していくか、その展開に注目しておきたい。

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