普及と収益も課題
A-PABの福田理事長は「4Kテレビの世帯普及率は目安としていた10%を超えている」とするものの、「2020年の東京オリンピック/パラリンピックの開催時には、多くの視聴者が家庭のテレビで、新しい放送を楽しんでもらっている状況を目指している。それに向けて努力し、これからも訴求を続けていく。放送が始まる今日からが普及に向けた新たなスタートであり、勝負である」とコメント。
総務省の石田真敏大臣も「これからの課題は、新4K8K衛星放送の普及である。総務省としても引き続き、4K/8Kのすばらしさと視聴する方法を、丁寧に周知、広報し、新4K8K衛星放送を盛り上げたい」とする。
さらに、日本放送協会の上田良一会長は「2020年に向けた本格普及はこれからが勝負である。NHKでは、総合テレビなどで魅力や視聴方法に関して、集中的に周知、広報を行なう予定である」と語る。
新4K8K衛星放送が利益を確保できるメディアに成長するまでの時間軸も課題だ。
放送業界は多チャンネル化が進む一方、インターネットやSNSなどのメディアの多様化にともない、若年層を中心に視聴者数が減少しており、厳しい状況にあるのは確かだ。さらに、4Kや8Kに対応したカメラなどのコンテンツ制作のための投資も必要だ。
日本民間放送連盟の大久保会長はセレモニーの席上で「民放事業者の経営が厳しいなかでの新4K8K衛星放送のスタートである。一日も早く、新4K8K衛星放送が自立できるように、関係者に支援をお願いしたい」と、セレモニーに参加している関係者に呼びかけたのも、新たな放送が独立した事業として成長するまでには、時間がかかるとの危機感の表れと受け取ることができるだろう。

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