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小島寛明の「規制とテクノロジー」 第380回

イラン系偽装ハッカーの活動が激化 世界企業を襲う“見えない戦争”の実態

2026年03月24日 07時00分更新

文● 小島寛明

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 米国とイスラエルがイランに対する大規模な軍事作戦を開始してから、3週間が過ぎた。イランによる報復は現実の世界にとどまらず、イラン軍やイランを支援するハッカーによるサイバー空間での攻撃も激化している。

 ロイターは2026年3月11日、イラン系のハッカー集団ハンダラ(Handala)が、医療機器や医療サービスを手がける米国企業ストライカー(Stryker)社に対して、大規模なサイバー攻撃を実施したとする主張について報じた。

 ハンダラは、マイクロソフトの端末管理プラットフォーム「Intune」に侵入し、従業員のデバイスをリモートで強制的に初期化したと報じられている。この攻撃についてハンダラは、少なくとも175人以上の児童が死亡したとされる、イラン南部の女子学校への誤爆に対する報復だと主張している。

 ストライカー社の発表によれば、自社のMicrosoft環境が攻撃の対象となり、受注、発注、出荷に障害が生じたとされる。同社は米国に本社があり、日本を含む61ヵ国でビジネスを展開しており、従業員約5万6000人のグローバル企業だ。同社は、内部の業務システムに障害が生じたものの、同社の医療機器や、サービスには影響がなかったとしている。

 イランへの軍事行動をめぐっては、石油の供給に直接の影響があるだけに、ホルムズ海峡の封鎖に対する注目が集まるが、サイバー空間においてもさまざまな動きがある。現実世界における軍事行動は中東地域に集中しているが、サイバー空間では、戦争の当事国ではなくても、民間企業の事業に被害がおよぶ事態が現実に起きている。

「偽装ハクティビスト」

 サイバーセキュリティ大手のパロアルト・ネットワークスは、軍事行動が始まった直後の3月2日に、イランと関係のあるハッカー集団の分析を公表している。このレポートによれば、この時点で、イラン国内のインターネット接続率は1〜4%程度に低下しており、同国のインターネットインフラは壊滅状態にある。

 米国とイスラエルの攻撃が始まった2月28日に、イランを支援するハッカー集団を統合した「電子作戦室」という仮想空間の組織が立ち上げられ、おもにイスラエルや中東各国へのサイバー攻撃を実施しているという。3月2日の時点で、60以上のグループが活動していると分析している。ロシアを支援するハッカーのグループの一部も「作戦室」に加わっているという。その中で、中心的な役割を担っているのが、冒頭で紹介したハンダラというグループだ。表向きは、パレスチナを支援する「ハクティビスト(Hacktivist)」を名乗っているとされる。

 ハクティビストは、ハッカーとアクティビスト(活動家)を組み合わせた言葉で、政治的な主張のあるハッカーの集団を指す。しかし、ハンダラの実態について米国は、イランの情報省が直接運営する組織だと断定している。ハンダラはこれまで、イラン国内の反体制派の監視や、脅迫などの任務を実行してきた組織とされ、米司法省は、ハンダラを、フェイクとハクティビストを合わせた造語で、フェイクティビスト(Faketivist)と呼んでいる。

 米司法省は、3月19日から20日にかけて、ハンダラと関係のあるドメインを含む4つのドメインを押収したが、ハンダラ側は間もなく別のサイトを立ち上げる形で、対抗している。

さらにエスカレートの可能性も

 サイバー空間での攻撃の応酬は、さらに激化する可能性がある。

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