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ヘルスケア領域で50超の特許を取得 FiNCの知財戦略とは

「CEOが語る知財」:FiNC Technologies 代表取締役CEO溝口勇児氏インタビュー

特集
STARTUP×知財戦略

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事業に必要な特許かどうかを精査し、一歩先の技術へ投資

 スタートアップが知財戦略を進めるうえで、信頼できる弁理士と出会えることも重要な要素となる。溝口氏が重視するのは、判断の材料となる情報を埋めるために必要な質問をしたとき、その答えが明瞭かつ誠実で、かつプロフェッショナルだと感じるかどうか。他者の評判や過去の実績もひとつの判断材料にはなるが、実際にコミュニケーションして、相性を確かめることも大切だ。

 知財は複雑なため、必ずしもCEOがすべてを把握する必要はない。ただ、自社のビジョンと特許戦略の方向性を判断するのはやはり経営者の役割だ。パートナーである弁理士や専門家との関係づくりも重要になる。FiNCでは知財戦略に力を入れていくため、2016年にインハウス弁理士として中畑稔氏を経営管理本部 知財戦略室の室長に迎えている。

 「知財に限らず、経営者がすべてに精通することは不可能だが、それぞれの分野に信頼できる専門家の仲間をもち、それぞれの専門家と会話できる程度の勉強はあらゆる領域で行なうべき。ベースとなる知見があれば、コミュニケーションによってさらに理解を深めることができ、ジャッジの質も上がる。当社の特許出願のほとんどは、私と中畑と二人で議論しながら戦略を練ってきた。中畑のようなプロフェッショナルの存在はとても大きかった」と溝口氏は語る。

 パートナーとして知財戦略を進めていくうえで、最初に伝えたことは「実際にお客様のもとへ届けるものしか特許は取らない」ということ。

 「特許は、誠実なプレ-ヤーがもたなければいけない。私たちが特許をもっていることで、その領域での事業を諦めてしまう会社が出てしまう可能性もある。自分たちが使わないものまで必要以上に取得するのは不誠実。あくまでFiNCは、ヘルスケア、ウェルネスカンパニーであり、ココロとカラダの健康に関係していない特許を取るつもりはない」というのが溝口氏の考えだ。

 この共通認識のうえで、浮かんだアイデアの中から本当に自社の事業にとって必要かを精査し、半歩または1歩先のテクノロジーに投資している。

 最初に出願した特許は、あらゆるヘルスケアデータをもとに、AIやbotが顧客にアドバイスをする機能だった。FiNC創業前から準備を始め、4年後の2015年に出願。当時のヘルスケア領域の特許はハードウェア関連が中心で、ソフトウェアやAIといった分野へは未開拓だったため、比較的にスムーズに取得できたそうだ。

 とはいえ、ヘルスケア分野での課題が現在の特許出願ですべて解決できているわけではなく、新たなテクノロジーによって、これまで解決できなかった課題が解決できる可能性はある。新技術が世に出たときには、その技術を自ら学び、自分たちの領域に活用できるかを考えて、その都度、特許を出願していく考えだ。

 最後にスタートアップはどのような観点であれば特許が取りやすいのかを尋ねると、「1つ目は、自分たちが解決したい課題を持つこと。2つ目は、今までは何がボトルネックで解決できなかったのかを理解すること。たとえば、スマホの普及によってチップのコストが大幅に下がり、技術革新が進んだ。これによりコストの課題が解決し、イノベーションが起きた分野がいくつもある。

 新しいテクノロジーも同様で、AIの登場によって今まで非効率だったところの効率化が進み、同様のボトルネックがこれから解消される。私はお客様にトレーナーや経営者として長らく向き合っていたこと、また新しいデバイスやテクノロジーに関心が高かったこともあり、自分たちの領域における一歩先、二歩先のあるべき未来を考えられた。こうした観点から世界を見渡すことができれば、特許が取れるアイデアは浮かぶ」と溝口氏はアドバイスをしてくれた。

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