RINK×ASCII HealthTech 細胞・再生医療先端企業最前線 第5回
多血小板血漿(PRP)や上皮幹細胞を用いた再生医療技術を研究・開発
皮膚や関節の高度再生医療を提供する「L-CAT」
2018年12月10日 06時30分更新
再生・細胞医療の産業化拠点として、再生・細胞医療事業に関わる機関が相互に連携・協力して産業化を加速させているRINK(Regenerative medicine & Cell therapy industrialization network of Kanagawa;かながわ再生・細胞医療産業化ネットワーク)。日本・神奈川県発で細胞の加工・培養・保管・供給という一連のバリューチェーン構築・産業化を狙う、イノベーション拠点にかかわる先端テクノロジー企業を紹介する。
動物由来成分を用いない培養技術を確立
安全性の高い再生医療を提供
細胞応用技術研究所(L-CAT)は、聖マリアンナ医科大学で培ってきた再生医療技術を基盤にして、現実的な再生医療を普及させるべく設立されたベンチャーだ。自由診療として、皮膚や関節の疾患に対する再生医療を提供しつつ市場を拡大させ、将来的には難治性皮膚潰瘍ばかりでなく、脊髄損傷などの麻痺を伴うような重症疾患を対象とした再生医療の薬事承認を目指している。
これまで、ヒトの再生医療に必要な細胞を培養する際には、ウシ胎児血清(FBS)などの動物由来成分が必須であった。しかしこう言った動物由来の成分のヒトへの使用は、過去のプリオン病のように潜在的リスクは否定しきれず、同社は、動物由来成分を一切用いない培養技術を確立し、安全性の高い再生医療を提供している。
高度な再生医療をどの医療機関でも安全、安価に提供できるようにするため、再生医療等安全性確保法に準拠。「多血小板血漿(PRP)」「表皮細胞」などの製造を全国約40医療機関から請け負っている。
上記のPRP療法は、従来口腔外科や美容医療で活用されていたが、近年はプロスポーツ選手、音楽家などが酷使して損傷した関節にPRP療法を施して、手術を回避したことから広がりを見せ、「変形性関節症」や「腱炎」などの整形外科領域にも積極的に用いられはじめている。今後、2020年に開催される東京五輪に向け、より一層一般的な医療としての普及が期待されるという。
また、海外から日本に再生医療を受けに来る患者が増加しているため、医療ツーリズムにも力を入れている。今後、事業パートナーとの提携も積極的に実施していく予定だ。
代表取締役社長の木苗貴秀氏は「再生医療を産業として発展させていくためには、IT技術との連携は必須。IT技術により、各々に特性が異なる製品と患者様の状況に適した施術方法を提案することができれば、より安全で効果の高い再生医療を提供することができるようになる」と述べている。
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