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日本のスポーツ事業の問題点と解決策とは

スポーツのビジネス化は企業依存を脱却し、コンテンツ強化が必要

2018年12月20日 06時00分更新

文● 本田雅一 編集● ガチ鈴木 /ASCII編集部 写真● 曽根田元

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 コミュニティの核としてスポーツクラブがあり、その周りにスポーツファンが構成するエコシステムが存在する欧米型の事業環境を構築するには、発想の転換が必要だと高橋氏は提案する。

 「誰もが毎回、試合会場に行けるわけではありません。だからこそ放送枠の確保が大切でした。しかし、昨今はネットワークのライブ配信を行うハードルが下がり、消費者側もスマートフォンなどから、いつでもどこでもライブ配信にアクセスできる環境を持っています。かつては企業がスポーツチームを保有し、自らスポンサーして放送枠を確保していましたが、新しい時代はチームの価値を高め、ファンコミュニティを育て、試合中継というコンテンツを通じて、直接、ファンコミュニティとつながる形へと変化していくでしょう」

 第二次産業中心の時代、製造業がスポーツチームを広告塔として保有した時代は終わり、第三次産業時代はスポーツというコンテンツそのものを事業に活かせる企業が、広告塔としてではなく、スポーツ事業そのものを育て、発展させる時代が来る。

 そうした時代に向け、将来、日本のプロスポーツがアジア地区で「売れる」コンテンツになっていくという見立てもある。DAZNがJリーグと大型契約を結び、10年分の放映権を2100億円で購入したのは、そうした「未来のスポーツ事業環境」を示唆していると高橋氏はいう。

 「スポーツ事業は本来、コンテンツ事業です。スポーツというコンテンツを、いかに消費者に愉しんでもらうのか。欧州は衛星放送、北米はケーブル局ネットワークを通じて多チャンネル放送が根付き、スポーツコンテンツは各チームのファンコミュニティと直結できる環境があります。このためチーム自身が”試合の中継”というコンテンツを管理できている。ところが、日本は地上波放送中心で多チャンネル放送時代がなかったこともあって、これまで映像コンテンツ事業を積極的に行えなかった(高橋氏)」

 DAZNの例を挙げるまでもなく、ネット配信業者によるスポーツ中継はコンテンツの多様化を促し、小さなチームにも事業機会を大きく広げる機会になる。放送波チャンネルや、各チャンネルでの放映権を獲得しなくとも、ネットを通じた配信ならばハードルは大きく下がる。そして言語対応やマーケティング地域のスコープを広げれば、事業の核となるエリアを広げることが可能になる。

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