携帯電話向けに開発されたBluetooth
PC向けOSとは相性が悪い部分もあった
Bluetoothは1998年に提案され、エリクソン、インテル、IBM、ノキア、東芝がBluetooth SIGを設立して仕様の策定を開始した。最初の1.0は、1999年に発表されたものの、いろいろと不備があり、結局、実装が始まったのは2001年に発表された1.1から。
このときの仕様はBR(BASIC Rate)と呼ばれ、最大1Mbpsの論理データレートを持っていた。携帯電話での実装を考え、Bluetooth上の各種の機能はプロファイルという形で定義された。プロファイルとは、通信する両側の機器の役目やその間のプロトコルなどをまとめたもの。
当時の携帯電話は、購入後に内蔵ソフトウェアがアップデートされることがない前提であるため、このような定義がなされた。このあたりが、PCのようなバージョンアップや機能追加が可能という特性とうまく合わず、また、階層構造を持つデバイスドライバーなどでハードウェアやプロトコルなどに対応するというWindowsなどのOSとの相性も悪かった。
その後のBluetooth 2.0で、速度を最大3Mbpsに向上させたEDR(Enhanced Data Rate)が登場し、高速なインターネット接続や画像や動画の転送なども可能になった。また、2.1ではNFCを利用したペアリングが可能になった。
さらにBluetooth 3.0では、無線LANの部品(MACとPHY)を流用して高速化したHS(High Speed)が定義されたものの、無線LAN自体が普及したこともあって、ほとんど採用されなかった。Bluetooth 3.0対応をうたうアダプターなども登場したが、実際にはEDRまでのサポートと3.0における基本的な改良のみに対応したものがほとんどだった。
このため、2.1以降ではBluetooth自体の停滞が見られた。2.1はちょうどスマートフォンの普及時期にあたっていたため、ほとんどの端末がBluetoothをサポートし、大きく普及することになった。数多くのBluetoothヘッドセットやハンズフリーアダプターなどが登場したのもこのあたりからである。しかし仕様的には、Bluetooth 3.0の特徴的な機能はほとんど採用されず、2.1までの範囲での利用が大半だった。
通信速度ではなく、超低消費電力に舵を切った4.0
方向性としてはこれが正解だった
大きく方向が転換したのは、2009年のBluetooth 4.0である。4.0では、無線方式を改良し、超低消費電力を可能にする「Bluetooth LE」を定義した。
仕様としてのBluetooth 4.0は、Bluetooth 3.0までとは別になっており、4.0に対応したものをBluetooth LE(Low Energy)と呼んで区別した。これに対してBluetooth 3.0までの機器をBLuetooth BR/EDRと呼ぶ。
Bluetooth 4.0は、3.0とは互換性を持たないため、多くの場合、BR/EDRのハードウェアとLEのハードウェアを統合した「デュアルラジオ」と呼ばれる構成がほとんどとなった。のちに、Bluetooth 4.0と3.0の部分は、Bluetooth Coreとして1つの仕様書となったが、お互いに直接通信ができない方式であることには変わりはなく、現在でもデュアルラジオ構成が取られている。
Bluetooth 4.0は、3.0までの反省を生かし、プロファイルではなく、汎用のプロトコルとなるGATTを定義し、その上にさまざまな機器向けのプロトコルや仕様を構成できるようにした。4.0以降は、無線方式だけでなく、機能やアプリ開発の方法までがまったく違っている。
また、無線技術としても「超低消費電力」を第一義として、すでにある無線LANなどとの競合を避けている。実際、WiGigのようにさらなる高速化を目指した無線技術も登場したが、実際のところIEEE.802.11acで十分なこともあり、高速な無線方式のほとんどが無線LANに集中している。また、近年のIoT技術の普及などもあり、Bluetoothが4.0で採用した方向性はある意味正しかったと思われる。
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