日本の「働き方改革」はどこで間違ったのか、IDC「働き方の未来」アジア太平洋地域調査
職場変革のための最新IT導入、日本企業はアジア内で大きく出遅れ
2018年11月21日 07時00分更新
IDC Japanは2018年11月15日、アジア太平洋地域13カ国で実施した「働き方の未来(Future of Work)」の進行状況に関する企業調査について、日本とAPeJ(日本を除くアジア太平洋地域諸国)との比較分析結果を発表した。
同調査では、職場や働き方の変革において「IT施策を展開済み/展開中」とした企業がAPeJ平均で60%を占めた一方で、日本企業は33%と低い割合にとどまる結果となった。さらには将来的な展開計画も持たない日本企業が40%を占めるなど、日本においては現在および近い将来において最新テクノロジーを採用した変革が進まない実態が明らかになっている。
記者説明会でIDC Japan アナリストの市川和子氏は「日本企業は働き方の未来の実現に向けた『行動』が、すべてにおいて遅れている。将来的にさらに水をあけられる可能性がある」と指摘。デジタルスキルを備える人材育成のための社内トレーニングなど、その解決のために取り組むべきことを説明した。
競争優位性をもたらすテクノロジーへの注目度が著しく低い日本企業
IDCが提唱する「働き方の未来(Future of Work)」は、企業が最新テクノロジーの認識や導入、利用を通じて多方面から働き方を再創造/変革し、最終目標である「持続可能な競争優位性」の獲得を図るというビジョンである。ここで言う最新テクノロジーとは、企業文化を変えてコラボレーションやイノベーションを活性化させる「ワークカルチャー」、時間/場所にとらわれない働き方を実現する「ワークスペース」、ロボットやAIなどによる労働支援を行う「ワークフォース」の3領域に関わるITソリューション/テクノロジーを指している。
今回の調査は、この「働き方の未来」の実現に向けた取り組みが各国においてどの程度進んでいるのか、今後の計画はどうかを調べることを目的としている。アジア太平洋地域13カ国で「職場変革を実施済み/実施中/検討中」であるとする企業(従業員100名以上かつ売上高10億円以上)の、CxO/取締役/部長職を回答者として実施された。回答社数は1425社で、うち日本企業は150社。
※調査対象国:日本、中国、韓国、香港、インド、オーストラリア、シンガポール、マレーシア、インドネシア、タイ、台湾、ニュージーランド、ベトナム
前述したとおり、この調査は「職場変革を実施済み/実施中/検討中」の企業を対象としたものだが、ITを用いた施策の実行が大きく出遅れているのが日本企業の特徴である。
たとえばワークスペース/ワークフォースにまつわる最新テクノロジーの導入率を見てみると、コラボレーションツール、業務自動化テクノロジー(RPAツールなど)、ビッグデータ/BIツール、EMM/MDMなど、ほぼすべての項目で日本の導入率はAPeJに大きく引き離されている。さらに、未導入テクノロジーに対する「今後12~18カ月の導入予定」についても、APeJと比べて日本企業は極めて消極的な態度を示している。
その背景としてまず、日本企業は「自社の競争優位性につながる各種テクノロジーへの認識が低い」(市川氏)ことが挙げられる。たとえば「中長期的に破壊的な影響力を及ぼすテクノロジー」について、日本企業は「コグニティブ/AI」「モバイル」「IoT」を多く挙げているが、APeJではそれらに加えて「クラウド」「5G通信」「ロボット/ロボティクス」への注目も高い。
さらに言えば、こうした新しいテクノロジー「全体」に対する日本企業の注目度、感度がAPeJ企業より低いこともグラフから見て取れる。もちろん、あらゆる企業において新興テクノロジーがすべて有益だとは断言できないものの、デジタルトランスフォーメーションの時代をすでに迎えているなかで、こうしたテクノロジーに対する感度の低さは懸念材料ではないだろうか。