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日本企業の意識の遅れも明るみに、アジア15カ国デジタルトランスフォーメーション調査

「2021年、日本のGDPは半分が『デジタル』に」日本MSが調査発表

2018年02月22日 07時00分更新

文● 大塚昭彦/TECH.ASCII.jp

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 日本マイクロソフト(日本MS)は2018年2月20日、日本を含むアジア15カ国のビジネスリーダーを対象に行った、企業ビジネスのデジタルトランスフォーメーション(DX)やその経済効果などに関する調査「アジアにおけるデジタルトランスフォーメーションの経済効果調査」の結果を発表した。

 「2021年までに日本のGDPのおよそ半分をデジタル製品/サービスが占めるようになる」という予測、「DXの取り組みでリードする企業は他の2倍以上のメリットを享受している」という実績が出ている一方で、DXに向けた日本企業の意識と取り組みの遅れも指摘される結果となっている。

「アジアにおけるデジタルトランスフォーメーションの経済効果調査」の結果概要
発表会に出席した日本マイクロソフト 代表取締役 社長の平野拓也氏ゲスト登壇したIDC Japan リサーチバイスプレジデントの中村智明氏

DXをリードする企業は、他の2倍以上のメリットを享受している

 同調査は、マイクロソフトとIDC Asia/Pacificが共同で、アジア15カ国/地域のビジネス意志決定者1560名(うち日本は150名)を対象に実施したもの。今後急速な進展が予想されるDXが、各国のGDP、企業/組織、社会のそれぞれにどのようなインパクトを与えるか、またデジタル化を成功させ“リーディングカンパニー”になるための要素とは何かを探っている。

 なおIDCにおける「デジタルトランスフォーメーション」の定義は、「第3のプラットフォーム」を活用して新しい製品/サービス/ビジネスを展開し、顧客体験の変革を図ることで価値を創出、競争上の優位を確立すること。幹部や従業員の思考/行動様式が“DXファースト”な企業を「デジタルネイティブ企業」としている。

IDCにおける「デジタルトランスフォーメーション(DX)」の定義。「株主ではなく顧客を中心に考える点がポイント」(IDC 中村氏)

 調査結果の概要を見ると、アジア経済全体において、DXが劇的に加速することが予測されている。DXは2021年までに、日本のGDPを約11兆円、GDPの年間平均成長率(CAGR)を0.4%増加させ、日本のGDPの約50%はデジタル製品やデジタルサービスが占めるようになるという。

 またビジネスに対するインパクトについては、「利益率の向上」や「コスト削減」「生産性向上」「生産・運用時間の短縮」「顧客獲得時間の短縮」といったメリットにおいて、2020年までの3年間で最低でも80%の向上が実現すると予測している。特に「利益率の向上」「コスト削減」については110%の効果が得られる見込みだという。

 回答企業の79%はすでにDX戦略を策定しているが、全社的な(あるいは全社展開中の)DX戦略があり、収益の3分の1以上をデジタル製品/サービスから得ている“リーディングカンパニー(リーダー企業)”は全体の7%(103社)にとどまった。リーダー企業とそうでない企業(「フォロワー」と呼ぶ)を比較すると、リーダー企業はDXによるメリットを2倍以上多く享受しており、このメリットは今後も拡大が続くことが予測されている。

「生産性向上」「コスト削減」「新製品/サービスの売上」など、DXのリーダー企業は、その他の企業比で2倍以上のメリットをもたらしている

 リーディングカンパニー/フォロワーの間での経営方針の違いは「破壊的テクノロジーへの関心」「ビジネスの俊敏性とイノベーション文化」「DXの効果に対する定量的な評価」「AIとIoTへの投資」といった点に見られ、リーディングカンパニーの組織文化としては、「Fail-fast、Learn-fastのアプローチ」「コラボレーションや俊敏性の高い成熟度」「全社的な意思統一」「DX推進の専任役員(CDO:最高デジタル責任者)設置」「DX部門への予算割り当て」などの傾向が強いという。

 日本マイクロソフト 代表取締役 社長の平野拓也氏は、MSでは顧客企業のDXを、ビジョンの策定、課題解決、コミュニティといった多方面のアプローチで支援していると紹介した。ユーザー企業のCDO(最高デジタル責任者)を中心としたコミュニティ組織「D-Lex」も同日設立している。

顧客ビジネスのDXを支援する日本MSのアプローチ

日本企業の遅れが目立つ厳しい調査結果、改善策をIDCが提言

 同日の発表会では、IDC Japan リサーチバイスプレジデントの中村智明氏がゲスト登壇し、個別設問の結果や、アジアのリーダー企業との比較を通じて日本企業のDXの現状や課題を説明した。

 中村氏はまず、リーダー/フォロワー企業の格差について言及した。IDCがアジアの銀行業界において、DXに取り組んだ/取り組まない企業間の違いを調査したところ、2006~2016年の10年間で「43%もの売上ギャップが出ていた」と語る。また、前述した今回の調査でも、「利益向上」の面でDXのリーダー企業はフォロワー企業比で2.5倍もメリットを享受している。

アジアの銀行業界におけるDXリーダー企業/フォロワー企業の売上推移(2006~2016年)。売上で43%もの差が生じている

 「予測ではなく2017年の『実績』として、あらゆる側面で2倍以上のメリットの差が出ており、それが最低でも3年間は続く。DXの取り組みは『強制』ではないが、こうした結果を受け、自社の経営方針としてどちらを選ぶべきかという判断が非常に重要になる」(中村氏)

 また、アジア全体のリーダー企業(103社)と日本企業(150社)の傾向を比較した結果、多くの点で課題が見えてきたことも中村氏は指摘した(なお、リーダー企業の一部には日本企業も含まれる。以下は、あくまで両集団の平均値を比較した結果であることには注意されたい)。

 たとえば、DX実現に向けて設定している「新しいKPI」にはどのようなものがあるか。「データ資本を用いた売り上げ、ビジネスモデルと生産性」を目標とする企業の割合は、リーダー企業の51%に対して日本企業は31%と20ポイントも低かった。昨今では、データは“デジタルビジネスの石油”と呼ばれるまでになっているが、日本企業では経営者の意識がそうした変化に追いついていない。同様に「業務プロセスやサービスの効率」「顧客の口コミ」「イノベーション頻度」など、DXに向けて重視すべきKPIの導入が大きく遅れていることを、中村氏は厳しく指摘した。

 「もっと直接的に『デジタルビジネスの売上比率』をKPIとして見る、ということさえ日本企業は遅れている。DXをやるうえで、まずはきちんとKPIを設定しないといけないという当たり前のことを、日本企業の経営者は考えていない」(中村氏)

DXに向けた「新たなKPI」の策定状況(赤字で示した項目が、国内企業の割合がアジアリーダー企業より低いもの)

 日本企業の“データの価値”に対する無理解は、DX実現に向けたIT投資分野にも現れている。「クラウド」や「AI」「セキュリティ」といった分野への投資では比較的積極的なものの、「ビッグデータアナリティクス」に対しては大きく消極的だ。

 「DXとは何か、そのためには何をやるべきかを考え、当然のようにやらなければならない施策を、アジアのリーダー企業では素直にやっている。一方で、日本企業はまだそこまで行けていない」(中村氏)

DXに向けたIT投資分野。「ビッグデータアナリティクス」がアジアリーダー企業より約7ポイント低い

 DXの効果については、現状(2017年)では当然リーダー企業群のほうが「効果が出ている」率が高い。ただし、2020年の予測になると、リーダー企業よりも日本企業のほうが「楽観視」しているという結果となった。

 「アジアのリーダー企業は現実的に、それほどいきなりは効果が出ないだろうと見ている。一方で、日本企業はものすごく楽観的に、2020年には効果が出るよね、と思っている。あまり施策はやっていない、課題はわかっていない、だけど効果はこれだけ出るだろうと、この意識の差は何なのか。わたしはここに、日本企業のDXの進め方の危うさを感じる」(中村氏)

DXの効果(2017年の現状、2020年の予測)。施策の遅れている国内企業だが、なぜか楽観視している

 最後に、DX推進に適した組織文化、つまりデジタルネイティブ企業への適合性/志向性についての調査結果も紹介された。ここでは、アジアのリーダー企業のみならず、アジアのフォロワー企業よりも日本企業のほうが“デジタルネイティブ化”が遅れているという結果を示している。

DXに適した組織=デジタルネイティブ企業の特性を持っているか。リーダー企業だけでなくフォロワー企業にさえ後れを取っている

 これらの調査結果を受け、中村氏はこれからDXを推進していくための提言をまとめた。DXを推進する組織やリーダーを設ける「デジタル文化の創成」、DXにおけるデータの価値を重視しつつ新たなKPI策定や投資を進める「情報エコシステムの構築」、そしてスモールスタートで“経験”を積み重ね、新しいビジネスモデルを開拓する「マイクロ変革からの始動」という3点を挙げている。

DXのリーダー企業、デジタルネイティブ企業になるための、IDCからの提言

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