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「ライブ配信メディア完全解剖 〜過去と今、そして未来へ〜」 第109回

世界のゲーム実況が集う「Twitch」が日本でメジャーになるために必要なこと

2018年10月03日 17時00分更新

文● ノダタケオ(Twitter:@noda) 編集● ちゅーやん

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左からJon Anderson氏、Kendra Johnson氏、Michael Aragon氏、Chase氏

 Amazonは2014年に約1000億円で「Twitch(ツイッチ)」というゲーム配信プラットフォームを買収しました。買収前からすでにゲーム実況ジャンルに強く世界的に知名度があるライブ配信プラットフォームで、いまでもさまざまなゲームタイトルを一般の人からプロゲーマーまでもが配信に使っています。

 Twitchは主に海外の配信者が多く集まり、海外からライブ配信されるゲーム実況をたくさん目にできます。いま、日本でのライブ配信のトレントのひとつとなっているゲーム実況配信は、海外でも同じように盛り上がっていることが伺えます。

 ただ、海外の配信者が多く集まり知名度があるTwitchは、日本の配信者はまだまだ少ないと感じるのが正直なところです。どちらかというと、動画共有サービスYouTubeのライブ配信機能「YouTube Live」やサイバーエージェントの連結子会社CyberZが運営する「OPENREC.tv」のほうに勢いがあるように感じられます。

 ライブ配信に携わる私としても「TwitchはこれからTwitchでライブ配信をする日本の配信者や視聴者をどのように増やしていくのか?」という疑問をずっと持ち続けていました。

 先日、東京ゲームショウ2018が開催された際に、来日したTwitchのスタッフたちへ複数メディアとの合同でインタビューする機会を得ました。そこで、この疑問を直接投げかけてみることにしたのです。

「ゲーム実況ジャンル以外のライブ配信も充実していきたい」

 まず返ってきた答えは「ゲーム実況ジャンルのライブ配信だけでなく、それ以外のジャンルのライブ配信のコンテンツも充実していきたい」ということ。

 「ゲームが好きな人たちへ向けたコンテンツだけでなく、ゲーム以外のコンテンツも配信することによって、いままでTwitchを知らなかった新しい人たちを呼び込み、それをきっかけにTwitchのユーザーとなって、また別のコンテンツにも触れてもらえるようにしていく」という考えを示しました。

 このゲーム以外のコンテンツは、アメリカでは既にアニメやスポーツ、ドラマ(最近では『ドクター・フー』(Doctor Who)というSFテレビドラマシリーズ)などを配信することで新しい人たちを呼び込むための施策も打ち出されています。「国や地域によってどのようなコンテンツが求められるかは異なるので、日本でも調査をしたうえでコンテンツを選んでいく予定」とのことです。

 また、日本でも配信者が多い雑談ジャンルのライブ配信は、Twitchでも2016年12月から「IRL」と呼ばれるカテゴリーが設けられています。ゲーム実況配信をしている配信者がゲームプレイを見せるだけでなく、雑談や料理をするライブ配信も人気となっていて、これらのジャンルの視聴数も伸びてきているとのこと。

 Twitchはゲーム実況のためのライブ配信プラットフォームというイメージが強いですが、今後はこうしたゲーム以外のコンテンツも見かけていくことが増えていきそうです。

“クリエイターファースト”の理念で好循環を日本でも生み出していく

 以前の記事では、個人のライブ配信者が求める「ライブ配信メディアのプラットフォームに求めるモノ・必要なコト」として5つの要件を挙げました。

(1)快適に利用(視聴および配信)できるプラットフォームであること
(2)配信者誰もができる・わかりやすいマネタイズの仕組みであること
(3)配信者を育成する仕組みがあること
(4)運営によって配信者が褒められる仕組みがあること
(5)配信者が公の場で広く活躍できる(目標となる)場所があること

 Twitchはこの要件の多くを満たすライブ配信プラットフォームのひとつであると考えます。というのも、インタビュー中にたびたび“クリエイターファースト”を理念として挙げられていたからです。

 マネタイズ(収益)については、広告や投げ銭(Twitchでは“ビッツ”と呼ばれます)以外にも、視聴者によるスポンサー登録(サブスクライブ)する仕組みなど、さまざまなマネタイズの手段を提供されています。また、自身の配信のスタイルによって、どの収益化手段を利用するかの選択を配信者が選択できるようになっています。

 配信者が収益を得ることでライブ配信するための継続性を保ち、それに続く配信者が増えることによってコンテンツの多様性が広がり、さらには、視聴者や視聴分数が上がっていくことで広告も増えて、結果的にTwitch自身もサービスとして成長していく。この展開を思い描くTwitchが日本でもこの良い循環を作り出せるかはこれから注目していくべきポイントでしょう。

AmazonらしいAmazonならではの面白い仕組みに期待

 その思い描いた好循環を日本でも作り出していくには、Twitch自身のライブ配信プラットフォームとしての認知度を日本でももっと向上させることが最優先されるべき課題であると考えます。

 Twitchは2016年から東京ゲームショウへ単独でブースを出展しました。ゲームに興味関心ある人たちにはその名は広がっているものの、そうでない人たちに対しては、YouTubeやニコニコ生放送といったプラットフォームに比べてTwitchを知らない人も多いのが現状かもしれません。Twitchの知名度が広がらなければ新たな市場を掘り起こしていくことも難しいでしょう。

 Twitchは年間プラン税込3900円または月間プラン税込400円のAmazonの会員制プログラム「Amazonプライム」へ登録し、AmazonアカウントとTwitchアカウントを連携させることによって、Twitchで特典を受けることが可能となる「Twitchプライム」が昨年12月より日本で始まっています。

 これは、利用者も多いと思われる日本のAmazonプライム内にいる「ゲームに興味関心が無かったユーザー」にもTwitchの存在を示すきっかけにもなりました。Twitchプライムによって、Twitchへ訪れる人は増えたはずです。

 TwitchプライムのようなAmazonと連動した「AmazonらしいAmazonならではの面白い仕組み」がTwitchで展開されていくことは、さらにTwitchが日本でメジャーとなるためのキーポイントでもあるように思います。

ライブメディアクリエイター
ノダタケオ(Twitter:@noda

 ソーシャルメディアとライブ配信・動画メディアが専門のクリエイター。2010年よりスマホから業務機器(Tricasterなど)まで、さまざまな機材を活用したライブ配信とマルチカメラ収録現場をこなす。これらの経験に基づいた、ソーシャルメディアやライブ配信・動画メディアに関する執筆やコンサルティングなど、その活動は多岐にわたる。
nodatakeo.com

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