“AI Ready”なデータプラットフォーム要件とは、「ICP for Data」や「Watson Studio」をアピール
「Watson導入の障壁は『データがない』こと」IBMがデータ基盤構築訴え
2018年09月05日 07時00分更新
日本IBMは2018年9月4日、アナリティクス事業の最新動向に関する記者説明会を開催した。IBMクラウド事業本部長の三澤智光氏は、ビジネスAI活用に取り組む多くの企業で「データが使える状態になっていない」ことが大きな障壁になっている実態を指摘。社内外のデータを統合的に収集/蓄積/整備/分析/提供できるデータプラットフォームの構築を訴え、そこにおける「IBM Cloud Private for Data」や「IBM Watson Studio」といった製品/サービスの優位性をアピールした。
企業における「デジタルトランスフォーメーション(DX)」の推進は、すでに必須の取り組みとして認識されるようになった。AI技術や高度なアナリティクス技術の適用により、自社が保有する膨大なデータから洞察を導き出し、新たな収益源やビジネスモデルの発見と開拓につなげていく。それがDXの大きなストーリーである。
現実にそうした取り組みを迅速に進めていくうえではデータプラットフォームの存在が不可欠になると、三澤氏は指摘する。日本IBMでは数多くのWatson本番導入事例を手がけてきたが、その導入プロジェクトにおいてすぐに利用できた“AI Ready”なデータは「30%以下」だったという。多くの企業では使いたいデータが異なる分析基盤に散在していたり、ノイズが多く正確さに欠けたりしており、プロジェクトを立ち上げるごとに、あらためてデータの収集と整備からやり直さなければならないのが現実だという。
「新たにAIプロジェクトを立ち上げるたびに、データ整備の手間と工数がかかってしまっている。これを一元化、共通化できないのかという顧客の声は多い」(三澤氏)
こうした課題を解決するために求められるのが、統合的なデータプラットフォームだ。そのデータプラットフォームが備えるべき要素として三澤氏は、あらゆるタイプ/ファイルシステムのデータソース(Any Data)に対応する「収集」、カタログ化されたデータ管理やデータ品質担保の機能を提供する「整備」、データサイエンティストだけでなくビジネスユーザーなどあらゆる主体(Anyone)が実行できる「分析」、そしてWatsonだけでなく幅広い機械学習/ディープラーニングフレームワークにデータを提供できる「Any AI」の4つを挙げる。
こうした要件のうち、データを社内の共有資産として管理するカタログ管理(エンタープライズカタログ)は「意外とできていない」と三澤氏は語る。あらゆる主体、AIが活用できるデータとするために、データそのものだけでなくメタデータやデータの来歴も併せて管理し、それをビジネスユーザーにもわかる言葉で提供するのがポイントであると言う。さらにはファイアウォール内でのデータ保存、コンテナベースの俊敏なデータ整備基盤、統合されたUIなどもポイントに挙げる。
そして上述したような要件をカバーするのが、オンプレミスに設置されるIBM Cloud Private for Data(ICP for Data)や、パブリッククラウドサービスのIBM Watson Studioである。
両者はいずれもKubernetesベースのコンテナ環境として構築されているため、サードパーティのパブリッククラウド(Kubernetes環境)も含め、データ/アプリケーションを必要に応じて柔軟に移動させることができる。三澤氏は、AIの取り組みを実験的にスモールスタートさせたい場合にはWatson Studioを、またデータをファイアウォール内にとどめておきたい場合にはICP for Dataを使うという選択肢があることを説明した。
「IBMの場合はこうしたデータの一連の流れを、エンタープライズカタログを中心としてアナリティクス製品群が途切れなく支えることができる。そこが(単体の)パーツを提供している競合他社との大きな違いではないか」(三澤氏)
もう一点、三澤氏は「データのマネタイズ」においてもICP for Data/Watson Studioには優位性があると語った。自社特有のデータをAPI経由で社外パートナーなどにも提供する、いわゆる“APIエコノミー”の推進において、単に集約した社内データを公開するだけでなく、AI/アナリティクスに基づく洞察を通じた「より高付加価値なデータ」を提供することで他社との差別化が図れるはずだと言う。「そのためにもデータプラットフォームの整備が必要だ」(三澤氏)。
日本IBMのアナリティクス事業としては、ICP for Data/Watson Studioといったプロダクトだけでなく、コンサルティングやインテグレーションのサービスも積極的に提供していくという。グローバルな知見をまとめた「DataFirst Method(DFM)」に基づくコンサルティング、グローバルのデータサイエンティスト100名(うち日本は7名)で構成される「Data Science Elite Team」による各種支援などを行っている。
さらに、IBMクラウドのビジネスパートナー協業第3弾となる「IBM Cloud Partner League for Data」の展開開始も発表した。このパートナー組織は「サードパーティデータ提供者」「データプラットフォームの構築(SI)提供者」「データ分析サービス提供者」で構成され、すでに既存のIBMパートナー30社強を組織化しているという。ただし、顧客需要に対してまだまだパートナー数が足りないのが実情であり、今後は「データサイエンス、データプラットフォーム構築に特化した新規パートナーのリクルートも積極的に行っていきたい」と三澤氏は語った。