2018年8月31日、アマゾン ウェブ サービス ジャパン(AWSJ)はAWSの教育プログラムについての説明会を開催した。圧倒的なIT人材の不足という課題に対して、衆議院議員の小林史明氏は国家戦略と取り組み、AWSJ代表取締役社長の長崎忠雄氏がAWS教育プログラムをそれぞれ披露した。
圧倒的な人材不足時代で必要なスキルとは?
発表会に登壇したAWSJ代表取締役社長の長崎忠雄氏は、AWSビジネスアップデートを披露した後、「このままだと2030年までに約60万人のIT人材が不足する」という経産省の調査について言及。また、Linkedinの「持ちべきスキル 2018年のトップ10」での1位がクラウドのスキルになり、IT系の年収ランキングでもAWS資格保持者が上位にランクインしていると説明し、クラウド分野での教育の重要さをアピールした。
続いて登壇したのは、自由民主党の衆議院議員で総務大臣政務官 兼 内閣府大臣政務官を務める小林史明氏。「通信事業者という規制を受ける側から、ルールを変える側に移り、日本にテクノロジーを実装し、多くの人がフェアに参画できる仕組みを作っていきたい」と語り、人口減少・人生100年時代、テクノロジー進展という3つのトレンドに向けた国の施策について披露した。
人材に関しては、2030年には78.9万人が不足するという認識。内訳としてはIT企業が61.6万人、ユーザー企業が17.3万人不足すると見込まれており、情報セキュリティや先端IT人材も不足が見込まれるという。また、求められる人材も、ビジネスを作り上げられるトップ人材、サービスをデザインできるIT人材など多様な人材が必要なほか、ビジネスパーソン自体のITリテラシの底上げも重要になるという。
そのため、初等中等教育、大学においてはリテラシを醸成しつつ、工学系・情報系などの専門人材の教育を強化。さらに社会人の学び直しを進める「リカレント教育」も積極的に推進していく。「リカレント教育は、海外では20%くらいあるのに、日本では2%程度。まだまだ伸びしろがある」(小林氏)。また、トップ人材発掘のための「未踏プロジェクト」や「異能べーション」、裾野の拡大については子ども・学生、社会人、障害者、高齢者などがICTを学ぶ「地域ICTクラブ」などを展開する。
さらに行政も積極的にテクノロジーを採用しており、保育所入所選考にAIを活用した埼玉県さいたま市、子育てシェアと就業を進めた奈良県生駒市、秋田県湯沢市、マイカー相乗りを進めた北海道天塩町など、いくつかの事例も披露された。また、中央省庁のシステムも2018年6月の各府省庁CIO連絡会議で「クラウド・バイ・デフォルト原則」が決定し、パブリッククラウドの優先的な利用が推進されるほか、日本版のFedRAMPにあたるクラウド安全性評価制度の検討も開始されたという。
学生向けプログラムのほか、開発者向けのAWSマンガもスタート
続いては、長崎氏からのAWSの教育プログラムの紹介に移る。AWSの資格認定制度と言えば、AWS CERTIFIED(AWS認定)が知られているが、これとは別に高等教育機関向けのカリキュラムとして「AWS academy」が用意されている。教育機関はAWS Academyに申請すると選出された2人の教育者はまず入門コースの「AWS Academy Cloud Foundations」と専門知識までカバーする「AWS Academy Cloud Computing Architecture」を取得し、認定資格に合格し、さらに技術審査員にプレゼンを行なうことで、コースプログラムに組み込むことができる。現時点では、麻生情報ビジネス専門学校と船橋情報ビジネス専門学校で授業でAWSを学ぶプログラムを2019年4月からスタートさせるという。
また、オンサイトのAWS Academyに対して、オンラインの学習カリキュラムとして「AWS Educate」も用意されている。すでに1500を越す学校がAWS Educateを採用しており、日本では早稲田大学、九州大学、広島大学、近畿大学などが利用できる。登録することで、学習に必要なコンテンツやトレーニング、コラボレーションツール、Job Board、AWSへのアクセスが可能になるという。
AWS AcademyやAWS Educateのような学生向けのプログラムだが、 社会人向けにはおもにデベロッパー向けの学習支援プログラム拡充していく。まず、6月のAWS Summitで発表されたデベロッパーとスタートアップ向けの施設である「AWS Loft Tokyo」が10月にオープンする。また、発表会同日にオンラインコンテンツ「なな転び八起きのAWS開発日記」も開始された。ある女性プログラマーがAWSのSAの助けを受け総合力を持ったエンジニアとして成長するマンガで、Amazon Lightsail、AWS Cloud9、Amazon Amplifyなどが紹介される予定となっている。
発表会ではSTANDARD代表取締役、日本ディープラーニング協会 試験委員でもある石井大智氏も登壇。エンジニア時代に人材不足の課題を痛感し、人材教育を手がけるようになった石井氏は、AI人材の不足感や個人だけでなく組織教育の重要性を共有し、AWSの教育プログラムへの期待を示した。
初出時、小林史明氏の名前の記載に誤りがありました。お詫びし、訂正させていただきます。本文は訂正済みです。(2018年9月3日)