Huawei(ファーウェイ)がついにスマートフォンの世界シェアで2位の座に上り詰めた。Appleを上回っての2位で、7年続いたSamsungとAppleがトップを争うというスマホ2強体制が崩れた。頂点を狙うHuaweiは、Samsungを2019年内に倒すべく猛攻をかける。
ついにApple超えを達成したファーウェイ
Huaweiのスマートフォンビジネスを立ち上げたRichard Yu氏が2016年、「2年でAppleを超える」と言ったとき、不可能ではないだろうし、この会社ならやるのだろうという受け止め方が多かったと思う。そしてその言葉どおりとなった。
7月31日、CanalysとIDCの2社が発表した2018年第2四半期(4~6月期)のスマートフォン市場調査で、HuaweiはAppleを超えて2位となった(台数ベース)。その台数は5400万台で、前年同期比41%増という素晴らしい伸びだ。Appleは1%増の4100万台、シェアはHuaweiが15.8%でAppleは12.1%。
秋に最新のiPhoneを発表するAppleは第2四半期は例年振るわないのは確かだ。しかし、決算発表ではハイエンドの「iPhone X」が好調で予想を上回る内容となった(当然ながら製品単価が高いため)。実際、Canalys/IDCともにAppleは前年同期比1%増となっている。
スマホ市場全体で見れば、マイナス成長(IDCはマイナス1.8%)となるなかで、あおりを受けたのはHuaweiに2位の座を譲ったAppleではなく、王座を維持するSamsungだ。Samsungは2月にフラッグシップの「Galaxy S9」「Galaxy S9+」を発表したが、前年ながら振るわず。第2四半期は、Canalysのデータでは前年同期比8%マイナス、IDCでは同10%マイナスとなった。
Huaweiは3月に発表した最新のフラッグシップ「HUAWEI P20」「HUAWEI P20 Plus」が好調で、すでに出荷台数は700万に達している。中国以外の市場での両機の出荷台数は、前モデルの倍以上とのこと。さらにはその翌月に新機種を発表した「honor」シリーズもある。CanalysによるとhonorシリーズがHuaweiの出荷台数に占める比率は、1年前の24%から36%に拡大しているとのことだ。
もはや「iPhoneに未練はない」というティーンエイジャー
2007年のiPhoneとともにスタートした現在のスマートフォンブームだが、その構図はAndroidトップのSamsungとAppleの2極体制が続いてきた。2社はフラッグシップモデルで戦い、法廷でも争った。HTC、ソニーなどの存在感が薄くなる中、Huaweiは約6年前にホワイトレーベルから自社ブランドでの携帯電話メーカーに切り替えた(Huaweiは今でも同社最大の収入源である、通信機器ベンダーとしてスタートしている)。
しかも、Huaweiは大きなハンデがある中で世界2位を成し遂げた。そのハンデとは米国市場だ。Huaweiの通信機器に対しては、米国政府が主要キャリアに使用しないよう勧告しているが、端末においてもほとんど存在感はない。最大手VerizonのキャリアショップのマネージャーもHuaweiブランドのスマートフォンを知らなかったので、一般の認知は低いと言っていいだろう。そんな中での世界2位なのである。
一方で欧州の存在感は大きい。フランス、ドイツなど欧州では地下鉄など街中でHuaweiの着信音を聞く機会が確実に増えた。中でも驚くのが、若い人にブランドとして定着しつつある点だ。InstagramとSnapchatを愛する知人の娘(17歳)は、「iPhoneに未練はない」と言い切る。
セルフィーから食事まで写真が欠かせない彼女は、iPhone SEの次のスマートフォンを選ぶにあたってHuaweiを選んだ。Samsungは選択肢になく、iPhoneかHuaweiかなのだったという。結局、HUAWEI P20のリリースをきっかけに価格が下がった、HUAWEI P10を春に購入したという。HUAWEI PシリーズでのLeicaとのコラボは奏功したと言えるだろう。娘の影響か、母親はタブレットにHuaweiを選んだ。このような女性層の取り込みは、日本の端末トップの呉波氏も目指しているところだ。
Huaweiは当初からブランド戦略を重視しており、世界のブランドランキングに入るようになった。BrandZの「Global Top 100 Brands 2018」では、YouTube、NTT、FedExなどをおさえて48位だ(http://brandz.com/charting/54)。
この連載の記事
-
第342回
スマホ
AR/VRの長すぎる黎明期 「Apple Vision Pro」登場から6ヵ月、2024年Q1は市場はマイナス成長 -
第341回
スマホ
世界で広がる学校でスマホを禁止する動き スマホを使わない時間を子供が持つことに意味がある? -
第340回
スマホ
対米関係悪化後も米国のトップ大学や研究機関に支援を続けるファーウェイの巧みな戦略 -
第339回
スマホ
ビールのハイネケンが“退屈”な折りたたみケータイを提供 Z世代のレトロブームでケータイが人気になる!? -
第338回
スマホ
ファーウェイはクラウドとスマホが好調で大幅利益増と中国国内で復活の状況 -
第337回
スマホ
米司法省、アップルを独禁法違反の疑いで提訴 その中身を整理する -
第336回
スマホ
Nokiaブランドのスマホは今後も出される! バービーとのコラボケータイ、モジュール型などに拡大するHMD -
第335回
スマホ
ファーウェイスマホが中国で好調、次期HarmonyOSではAndroid互換がなくなる!? -
第334回
スマホ
Nokiaのスマホはどうなる!? HMD Globalが自社ブランドのスマホを展開か -
第333回
スマホ
アップルがApp Storeで外部決済サービスを利用可能に ただし手数料は27% -
第332回
スマホ
米国で特許侵害クロ判定で一時は米国で販売停止のApple Watch、修正は認められるか? - この連載の一覧へ