“ゆうこす”の相性でインフルエンサー、YouTuber、モデル、タレント、SNSアドバイザーとして活動している菅本裕子さんが立ち上げた株式会社KOSは、「TaVision」のリニューアルに伴い、記者向けの説明会を8月9日に開催しました。
TaVisionは「旅(Trip)× 女子(Girls)× ファッション(Fashion)」をキーワードに、ソーシャルメディアを活用して、ガイドブックやネットの情報だけではわからない旅のリアルな情報を若い世代の女性たちに向けてリアルタイムに発信する「海外を中心とした旅の情報発信」の側面と、その旅先でセレクトしたファッションアイテムをEC(eコマース)のプラットフォーム・BASEを活用して販売する「オンラインショップ」な側面を備えたサービスです。
これまではインスタグラムの“フィード(投稿)”や“ストーリーズ”を通じて旅の情報を発信してきました。今回のリニューアルでは、ゆうこすさんをはじめとした20代女性たちがライブ配信の機能“ライブストーリーズ(インスタライブ)”も用いることで旅先の様子を生で伝え、「よりリアルタイム」で、ライブ配信を通じて利用者を巻き込む「より参加型」な形へと力を入れるようです。
さらに、インスタライブとBASEを活用することで、大手の企業も多く参入し始めている「ライブ配信」と「eコマース」を掛け合わせた新しい仕組みである「ライブコマース」の要素を取り入れていくことも強く打ち出しています。
印象的だったのは見ている「ファンのコアさ」
説明会ではTaVisionが取り入れるライブコマースの要素、つまり「見つけたファッションアイテムを現地からインスタライブでライブ配信しながら、eコマースのプラットフォーム・BASE上にあるTaVisionのオフィシャルオンラインショップで即日販売する」ことを実演しました。
今回はTaVisionのメンバー2人がアメリカ・ニューヨークにあるタイムズスクエアから、インスタライブで60分間のライブ配信。最初は現地からセレクトしたアイテム(=この時は“NYC”のロゴが入った、カラーが3色展開のカジュアルキャップ)を実際に身につけて商品紹介したり、インスタライブを見ている視聴者たちからの質問に答えたりしました。その後、予告された時刻にオンラインショップで販売開始します。
結論を先に言えば、発売された3色のカジュアルキャップはおよそ3分で完売されました。ここで筆者自身が印象的だったのは、3分ほどの短い時間であっという間に「完売したこと」よりも、この時インスタライブを見ていた「ファンのコアさ」です。
このインスタライブを“同時”に見ていた人たちは約100人。販売開始すると同時にインスタライブを見ていた人たちはオンラインショップがあるBASEへ移動します(スマホで視聴しているのでインスタグラムとBASEの両方を同時に開くのは、利用者にとっては若干手間)。ところが、ゆうこすさん曰く「販売が始まるとインスタライブの視聴者が一時的に減るけれども、オンラインショップへ買いに行った人が『買えた!』『買えなかった……』の報告をしにインスタへ戻ってきてくれる」とのことです。
一時的にほかのプラットフォームに移動するものの、購入結果などを報告するために決して手軽ではないのに戻ってきてくれる、そんなファンのコアな一面を目の当たりにできました。
プラットフォームは必ずしも一体化を必要としないのかも
「ライブコマース」という言葉が登場するずっと前の2011年頃から「eコマースとライブ配信は親和性がある」ことは言われてきたものの、それは実現されませんでした。なぜならば、ライブ配信とeコマースのプラットフォームが一体化されたものではなく、基本的にリンクによるライブ配信のチャンネルページから外部ページへの視聴者誘導の仕組みが基本だったことからです。ワンアクション入ることが結果的に、購買に繋がっていなかったと考えられていました。
5年以上の月日が過ぎ、2017年からライブ配信とeコマースのプラットフォームが一体化されたサービスが登場しました。そして「ライブコマース」という言葉が生まれて現在に至ります。当時立てられた「購買へは繋がっていなかった」という仮説が解消されたライブコマースにはいま、さまざまなプラットフォームが登場したり、大手の企業も多く参入したりしています。ただそれでも、繁栄しそうな勢いを正直なところまだ感じることはできません。
おそらく、当時立てられた「eコマースとライブ配信は親和性がある」という仮説は大きく外れてはいないと思います。しかし、タレントや芸能人などの誰もが知る著名人がライブコマースの画面の向こうに登場し、数百、数万規模の視聴者を集めることができるライブ配信とeコマースの仕組みが一体化したプラットフォームであったとしても、それは「必ずしも必須ではないのかもしれない」ということを説明会で行われた実演で感じます。
実は「コアなファンを確実に抱える」ことができれば、たとえライブ配信とeコマースのプラットフォームが別々であっても、関係がないのかもしれません。これまで考えられてきた「仮説」をゆうこすさんをはじめとするTaVisionのメンバーが覆そうとしていることに、ちょっとした衝撃を受けたのでした。
ライブコマースの課題は「熱量をどれだけ届けられるのか?」
といいつつも、「コアなファンを確実に抱える」ことはとても難しい問題です。これはライブコマースに限らず、ライブ配信を活用して商品やサービスのプロモーションをしている企業などにも共通することです。
その「コアなファン」を得るためにはどうすればいいのでしょうか。私は今回の説明会でゆうこすさんに聞いたところ「販売する側の熱量をどれだけ届けられるのか」という返答が戻ってきました。
先にも挙げたように、さまざまなライブコマースのプラットフォームが登場したり、大手の企業も多く参入したりしている一方で、これから繁栄していくことだろうと予想されていたライブコマースはその勢いが少し落ちてしまっているようにも感じます。
その「ライブコマースのこれからの課題」を引き続き次回以降でもう少し掘り下げて考えてみたいと思います。
ライブメディアクリエイター
ノダタケオ(Twitter:@noda)
ソーシャルメディアとライブ配信・動画メディアが専門のクリエイター。2010年よりスマホから業務機器(Tricasterなど)まで、さまざまな機材を活用したライブ配信とマルチカメラ収録現場をこなす。これらの経験に基づいた、ソーシャルメディアやライブ配信・動画メディアに関する執筆やコンサルティングなど、その活動は多岐にわたる。
nodatakeo.com
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