ノートPCのスピーカーは消耗品?!外部スピーカーを使うべきか…(後編)
Bluetoothポータブルスピーカーのスペックとは?
2018年08月01日 12時00分更新
前回の「ノートPCのスピーカーは消耗品?!外部スピーカーを使うべきか…」(http://ascii.jp/elem/000/001/709/1709577/)でも触れましたが、筆者はノートPCを自宅のリビングで使うことがほとんど。YouTubeから映画まで、スピーカーはほとんど鳴りっぱなしです。やはり、それだけ酷使すると内蔵スピーカーも寿命のようで、だんだんと音が歪むようになってきました。最初は、修理に出すことも考えましたが、スピーカーのパーツ以外は調子がいい。そこで、Bluetoothのポータブルスピーカーを購入することにしました。
ところが、オーディオの世界は奥が深く、Bluetooth規格もわかりにくい。
今回はそんな音楽用のBluetooth規格の読み方をわかりやすくザックリと解説しようと思います。後半はKENWOOD AS-BT77 Bluetoothの自腹レビューです(笑)。
古いからダメ?Bluetoothのトリッキーな規格
1999年にBluetoothバージョン1.0が発表されて以来、最新のバージョン5.0までが登場しています。おそらく、市場ではバージョン2.1~5.0が混在している状況で、バージョンが高ければ高いにこしたことはありません。
しかし、古いからダメかというと、そうともいえないのが難しいところ。なにしろ、Bluetooth機器はスマートフォンやPCなど、接続相手があってのもの。スマートフォンやPCのBluetoothバージョンが機器と同様に高いバージョンでなければ実力を発揮できません。
さらに、Bluetoothには、CLASSやプロファイル、コーデックなど、さまざまな要素が重要になります。
CLASSは通信距離(接続距離)の区分です。オーディオ機器ならCLASS 2~3(通信距離1~10メートル)がほとんど。設置場所や目的にあわせて参考にすればOKです。
ちなみに、接続距離が100メートル(!)といわれるCLASS 1は、残念ながら日本では電波法で出力が1/10に抑えられているそう…。ちょっと残念かも。
プロファイルとコーデックは、ヘッドホン/イヤホン、スピーカーのジャンルなら、以下のように区分されます。
筆者が購入したKENWOOD AS-BT77 Bluetoothのスペックなら、以下のように読むことができます。
Bluetoothの読み方は、英数字の記号ばかり難しく見えるかもしれません。しかし、オーディオ機器だけに分類すれば、それほど分かりにくいものではないでしょう。
KENWOOD AS-BT77 Bluetooth、自腹レビュー
筆者はオーディオに詳しいわけでも、耳が良いわけでもありません。いままでは、BOSEのスピーカーやヘッドホンを好んで使用していました。今回も、BOSEの肩乗せ型の最新ウェアラブルスピーカーも候補に挙げたのですが、いろいろあってAS-BT77に決定。その理由は、スピーカーを一番多く使用する用途が、ソファーでダラダラ、ゴロゴロと寝転んで、映画やYouTubeなどを再生するため。音楽の聞き方が不真面目ですいません…。
AS-BT77を選んだ理由は、前回のコラムでも触れましたが、他社の同クラスのポータブルスピーカーが500g~600gなのに対して、AS-BT77は860gあること。スピーカーは重ければいいという単純なものではありませんが、重い方が音質でアドバンテージがあるのは確かです。
重低音がすごい、中低音もなかなか良い
手のひらに乗るサイズでありながら、打ち物の鉄とガラス製のソファーテーブルの上に置いて映画を観ると床が振動するほど。これは、ガラスのテーブル面に手を触れて気がつきましたが、スピーカーのハウジング(筐体、箱)からの振動が伝わっているわけではなく、AS-BT77の2.1chのサブウーハーと背面のパッシブラジエーターによる効果でしょう。
本格的なスピーカーにはかないませんが、AS-BT77とノートPCの組み合わせでSF映画などを鑑賞すると、爆発シーンや恐竜の足音など、かなり迫力のある音響が楽しめます。
聞いていて疲れない音、しかし…
AS-BT77には、「重低音モード」「サラウンドモード」「ノーマルモード」と、3つのモードが切り替えられます。どれも、高中音も歪みがなく、長く聴いていて疲れない音。そんなふうに筆者は感じました。
ただし、不満がないわけではありません。マイクロUSBの位置と付属ケーブルの形状が使いづらく、取り回しが不便。音質を追求するためにパッシブラジエーターを背面にした犠牲かもしれませんが、ケーブルの端子をL型にするか、多少の価格や本体の高さがアップしても、底面にドックなどを接続可能にしてほしかったところです。マイクロUSBの抜き差しが硬いこともあり、オプションで別購入であっても、欲しいユーザーは多く存在する気がするのは筆者だけではないでしょう。
製品のサイトでの、USB接続で使っているイメージ写真では、コードがL型のように曲げられています。重箱のスミのようなクレームかもしれませんが、付属の硬いコードではこんな風にはならないのが残念。撮影したフォトグラファーも気になった部分なのでしょう。
筆者の使用環境のせいかもしれませんが、YouTubeなどを再生していると、たまに音飛びをすることがあります。筆者の使用目的では気になりませんが、コンサートや映画鑑賞などが主目的のかたは量販店などで試してみることをおすすめします。
しかし、このサイズと価格帯で低音、中高音の歪みない音を再生できること、バッテリーもカタログスペックのとおり5時間使用できることを考えれば十分満足。自腹で買って幸せになった製品のひとつになりました。
前田知洋(まえだ ともひろ)
東京電機大学卒。卒業論文は人工知能(エキスパートシステム)。少人数の観客に対して至近距離で演じる“クロースアップ・マジシャン”の一人者。プライムタイムの特別番組をはじめ、100以上のテレビ番組やTVCMに出演。LVMH(モエ ヘネシー・ルイヴィトン)グループ企業から、ブランド・アンバサダーに任命されたほか、歴代の総理大臣をはじめ、各国大使、財界人にマジックを披露。海外での出演も多く、英国チャールズ皇太子もメンバーである The Magic Circle Londonのゴールドスターメンバー。
著書に『知的な距離感』(かんき出版)、『人を動かす秘密のことば』(日本実業出版社)、『芸術を創る脳』(共著、東京大学出版会)、『新入社員に贈る一冊』(共著、日本経団連出版)ほかがある。

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