テスラが思い描いた夢の給電システム
昔々、ニコラ・テスラという凄い天才がいまして、無線で電力を送信する「世界システム」の研究に着手しました。いまから100年以上も前、1899年のことです。
電源コードなしで給電される「非接触給電(充電)」は、最新のiPhoneの充電や2027年に開業予定のリニアモーターカーにも採用されています。しかし、テスラが思い描いたような、住宅やワークスペースなど、エリア内ならどこでも給電される中長距離のシステムは、いまだに実用化されていません。
マスコミを含め、AIや量子コンピューターなどの研究や仮想通貨が話題に挙がりがちです。しかし、こんな「電化製品からコードがなくなる」ような、身近でありながら世界が変わるイノベーションのほうが優先度が高いのでは…、と、筆者個人としては思っております。
そんな電源イノベーションが普及するまでは、コンセントや電源コード、テーブルタップのお世話になる時代がまだまだ続きそうです。
このごろのテーブルタップ事情
コンセントのある壁と電化製品をコードでつなぐ…。人間は、そんなことをもう100年以上もやっています。ただし、スマホやワイヤレス機器など、IT製品が普及するにつれ、充電のためのテーブルタップの需要が増えているのはご存知の通りかもしれません。
ネットショッピングのランキングを見ると、個別スイッチや充電用のUSB差し込み口がついている製品が人気のよう。なかには、差込口がプラグの形状にあわせて回転するタイプや電力計がついた製品までありますが、基本はあまり変化していません。
筆者は、テーブルタップを足元で使うことが多いので、USB付きや個別スイッチ付きを使わない派。どちらかというと、コードの素材の耐久性や柔軟性、防水性などの機能、そして邪魔にならないデザインを選ぶことのほうがほとんどです。
あまり知られていないテーブルタップの注意点
●テーブルタップには消費期限がある
テーブルタップや延長コードは、買ったらずっと使える…、と思っている人が多いのではないでしょうか。じつは、電源コードは消耗品。とくに大電流で使用しがちなテーブルタップは消耗が早くなります。その原因はコードやプラグ部分の樹脂の発熱による劣化。ただし、使い方や品質にもよるので、使用期限がはっきりしないのが辛いところ。たまにコードやプラグをチェックする必要があります。対策としては、できるだけ安価な製品は避け、コードやプラグにひび割れや変形、変色などがあれば、すぐに交換した方がいいでしょう。
●テーブルタップのコードは巻いたりまとめて使うのはNG
電源は交流のため、巻いたり、たばねたりすることで電気抵抗が増え、発熱する性質があります。まとめると熱も逃げにくくなるので、コードが劣化しやすくなるだけでなく、熱で被覆が溶けることも。電流の少ない電子機器なら、そんなに心配はいらないかもしれませんが、複数の機器をつなぐテーブルタップの場合は要注意です。あと、収納時にきつくグルグル巻くと内部の銅線が少しずつ少しずつ切れ、発熱の原因に。
●トラッキング防止プラグを選ぶ
トラッキングとは、プラグとコンセントの間に埃がたまり、湿度の多いときに微量の電流が流れることで発火する現象です。プラグをコンセントにしっかり挿すことや、使用しないときにはコンセントからプラグを抜くことが事故防止として推奨されています。しかし、PCやプリンター、電話の電源プラグなどは繋ぎっぱなしで、つい忘れがちに…。そんなときは、トラッキング防止加工がされたプラグを選んだり、「タイトラキャップ」と呼ばれる自分で加工できる商品を使うと良いでしょう。また、ひねってプラグを留めるテーブルタップは、トラッキングの原因になるプラグの緩みを防止できます。
使い方をあやまると、火災や事故につながる電化製品の電源周り。夏の怪談ではありませんが、筆者もこの原稿を書きながら少し怖くなりました。皆様におかれましても、これを機会にコンセント周辺やテーブルタップのコードをチェックしてみてはいかがでしょうか。
前田知洋(まえだ ともひろ)
東京電機大学卒。卒業論文は人工知能(エキスパートシステム)。少人数の観客に対して至近距離で演じる“クロースアップ・マジシャン”の一人者。プライムタイムの特別番組をはじめ、100以上のテレビ番組やTVCMに出演。LVMH(モエ ヘネシー・ルイヴィトン)グループ企業から、ブランド・アンバサダーに任命されたほか、歴代の総理大臣をはじめ、各国大使、財界人にマジックを披露。海外での出演も多く、英国チャールズ皇太子もメンバーである The Magic Circle Londonのゴールドスターメンバー。
著書に『知的な距離感』(かんき出版)、『人を動かす秘密のことば』(日本実業出版社)、『芸術を創る脳』(共著、東京大学出版会)、『新入社員に贈る一冊』(共著、日本経団連出版)ほかがある。

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