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前田知洋の“マジックとスペックのある人生”第70回

ノートPCのスピーカーは消耗品?!外部スピーカーを使うべきか…(前編)

2018年07月17日 17時00分更新

文● 前田知洋

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 このところ、愛用のノートPCのスピーカーの調子がよくありません。YouTubeのゲーム配信などを見ながら寝入るのが習慣になっているので、スピーカーを酷使しすぎたのかもしれません。消し忘れて、朝まで再生しっぱなし…、なんてこともざらにあります。加えて。ノートPCは6年ほど酷使しているので、そろそろ買い替えのタイミングといえば、そうかもしれませんが…。

 あまり知られていませんが、じつはスピーカーはノートPCの部品のなかでもキーボードの次に消耗するパーツです。たとえば、人が聞こえる可聴範囲は20~20,000Hzといわれているので、スピーカーの振動部は1秒間に20回~2万回も過酷に動いているのです。

 近年では、iPhoneやMacBookなど、ホームボタンやタッチパッドを実際には動かない部品に変更したことで耐久性や信頼性を向上させているのはご存知の通りです。

 テクノロジーが進んでノートPCが薄く軽くなる反面、搭載するスピーカーユニットは部品としては重くて大きいほうが音質が良いというアンバランスな特徴があり、各メーカーが苦労して設計しているのが現状です。

 今回のコラムは、そんな矛盾したノートPCとスピーカーの関係を、前編は「ノートPCユーザーのためのスピーカーの基本」、後編は購入した外部スピーカーKENWOOD AS-BT77のレビュー、全2回でおおくりいたします。

ノートPCユーザーのためのスピーカーの基本

 スピーカーの役割は「電気信号を空気の振動に変えること」。通常のオーディオでは、アンプと呼ばれる部分が音楽信号を増幅してスピーカーにエネルギーを伝えています。オーディオに詳しい人にはあきれられる表現かもしれませんが、今回はノートPCの話なので触れないことにします。

●小さなスピーカーは高音、大きなスピーカーは低音が得意

 冒頭で少し触れたように、人が聞こえる可聴範囲は20~20,000Hz。最高音域だとスピーカーを1秒間に2万回も振動させる必要があります。そんなに速く空気を振動させるのは大変ですので、スピーカー全体を小さく、振動板を軽く(薄く)設計しなければなりません。ざっくりまとめると、高音は小さなスピーカーが得意な音域です。

3つのスピーカーで構成されるユニットの例

 ところが、低音は振動数は少ない(20Hzなら1秒間に20回)ですが、空気を振動させて伝えるには大きなエネルギーが必要です。大きな和太鼓やバスドラムを叩くのに力が必要なことと似ています。ですから低音用のスピーカーは大口径で重いほうが有利になります。

 通常、音の再現性の高いオーディオのスピーカーユニットは、高音用の小さいスピーカー(トゥイーター)、中音用の中サイズのスピーカー(スコーカー)、低音用のスピーカー(ウーファー)と3つの機能を持つスピーカーがセットで内蔵されています。ステレオなので左右、計6個のスピーカーで構成されます。

 よくホームシアターなどで表記される「5.1ch」は、5つの(サラウンド用の)スピーカーユニットと1つの重低音用(サブウーファー)の組み合わせのことです。

 もちろん、ノートPCでは異なるサイズの3つ(ステレオなら6つ)のスピーカーを搭載することは不可能です。そのため、2つのスピーカーで代用し、デジタル処理で幅広い音域に感じるように工夫と調整がされています。

●音の出口と耳の間に障害物がないこと

 ノートPCの小型化、薄型化にともない、各メーカーはスピーカーの設置場所に頭を悩ませてきました。ノートPCは液晶画面とキーボードが大きな面積を占有するため、画面やキーボードの両サイドに音の出口となるスピーカーグリル、網状の穴を作るスペースがなくなってしまうからです。

 それなら、「スピーカーグリルを本体の側面や背面に設置したら…」というと、それも難しい。なぜなら、ノートPCを常に机の上で使うなら音がうまく反響しますが、膝の上やカーペットなど柔らかい面に置くと音がくぐもって聞こえてしまいます。

 できるだけ、スピーカーグリルと耳の間に障害物がないことが、クリアな音を再現する条件になります。

MacBook Pro(2012)のスピーカーグリル。低音もクリアに再現されるよう面積が大きい

 ノートPCではありませんが、iPhone Xなどは、横にしたときの画面の両サイドを振動させることでスピーカーグリルをなくし、省スペースと音質のバランスを補ったユニークな設計になっています。

●できれば縦にも横にも大きくて重いこと

 スピーカーは空気を振動させるだけでなく、本体や周囲のモノも振動させます。さらに、多くの空気を振動させるためにはスピーカー本体の重量も必要になります。やっかいなのは、スピーカーの振動板の反対から出る逆位相の波。波どうしが混じると、前面からでる音を打ち消したり歪ませたりしてしまうため、一般的なスピーカーケースの場合、内側で吸音したり、クネクネとした通路を用意するなど工夫をこらしていますが、省スペースのノートPCの場合はなかなかそうはいきません。

出力する波と逆位相の波が干渉しないよう内部で吸音する構造の例

 ちなみにノイズキャンセリングのヘッドホンなどは、周囲のノイズと逆位相のノイズを発生させ、音を混ぜることで周囲のノイズを消すのがその原理。

 ステレオなら左右のスピーカーがお互いに離れていたほうが劇場のコンサートのような臨場感や立体感を感じさせます。

 以上の理由から、一体型のポータブルスピーカーは本体が横長で奥行きがあるデザインがほとんどです。

ノートPC用に筆者が購入したスピーカー(次回の予告)
KENWOOD AS-BT77 Bluetooth

 以上をお読みいただくと、ノートPCにスピーカーを搭載することのメーカーの苦労やスピーカーの弱点を理解いただけると思います。というわけで、筆者はノートPC専用のポータブルスピーカーを購入することにしました。

 筆者が選んだのは、KENWOOD AS-BT77。まず第一の理由は、他社の同クラスのスピーカーの重量が500g~600gなのに対して、BT77は1100gもあること。持ち歩くには少々重いですが、ほぼ自宅でしか使いません。そのぶん、重低音だけでなく、中音域も無理(デジタル的に加工)することなく、しっかりと出る印象だったからです。

 スピーカーの音質を表現するときの「ドンシャリ」ではなく、音域全体としてバランスの良い音に聞こえるはず。(「ドンシャリ」とは、低音域と高音域が強い音質のこと。低音の「ドン」と高音の「シャリ」をたとえた表現。ロックなどには向いたバランスだという人もいます。)

 というわけで、次回はKENWOOD AS-BT77 Bluetoothのレビューです。自腹購入ゆえの、買って良かったこと、改善をして欲しいことなど、誠実に読者の皆様にレポートしていこうと思っています。

前田知洋(まえだ ともひろ)

 東京電機大学卒。卒業論文は人工知能(エキスパートシステム)。少人数の観客に対して至近距離で演じる“クロースアップ・マジシャン”の一人者。プライムタイムの特別番組をはじめ、100以上のテレビ番組やTVCMに出演。LVMH(モエ ヘネシー・ルイヴィトン)グループ企業から、ブランド・アンバサダーに任命されたほか、歴代の総理大臣をはじめ、各国大使、財界人にマジックを披露。海外での出演も多く、英国チャールズ皇太子もメンバーである The Magic Circle Londonのゴールドスターメンバー。

 著書に『知的な距離感』(かんき出版)、『人を動かす秘密のことば』(日本実業出版社)、『芸術を創る脳』(共著、東京大学出版会)、『新入社員に贈る一冊』(共著、日本経団連出版)ほかがある。

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