オンプレミスNWもVPCで管理、ハイブリッド環境を一元管理する「クラウドファースト」新製品群
Big Switch、SDNファブリック/監視をマルチクラウドに拡大
2018年07月27日 07時00分更新
Big Switch Networks(ビッグスイッチネットワークス)は2018年7月26日、企業のハイブリッドクラウド環境に対応する「クラウドファーストネットワーキング」製品ポートフォリオを発表した。SDNファブリック/モニタリング製品を、これまでのオンプレミス環境だけでなくパブリッククラウド環境にも拡張して、統合運用を可能にする。今年後半から順次提供を開始し、大規模企業だけでなく中堅企業層へもターゲットを拡大する。
パブリッククラウドにも一貫性のあるSDNファブリック/監視を拡張
2010年に設立されたBig Switchは、ONIE準拠のホワイトボックススイッチ(ベアメタルスイッチ)向けのネットワークOSとSDNコントローラーを開発/提供するソフトウェアメーカーだ。安価なデータセンターファブリックを実現する“ベアメタルSDN”ソリューションの「Big Cloud Fabric(BCF)」、SDNを用いてネットワークやアプリケーションの可視化や分析、DMZにおけるセキュリティサービスチェイニングを可能にする「Big Monitoring Fabric(BMF)」を提供してきた。
これまでのBCF/BMFはオンプレミスのデータセンターネットワークに対応するものだったが、今回発表されたクラウドファーストネットワーキング製品群により、これらの機能をパブリッククラウド環境(Amazon Web Services、Microsoft Azure、Google Cloud Platform)にも拡張する。加えて、オンプレミス/クラウドの両環境を統合監視/制御できるコントローラーも新たに追加される。なおオンプレミス版のBCF/BMFにおいても、クラウドライクな“VPC”単位のネットワーク管理などの機能強化が行われる。
1つめの新製品である「Big Cloud Fabricパブリッククラウド版(BCF-PC)」は、AWS/Azure/GCPがそれぞれ標準で備えるVPC(AzureではvNet)機能を、BCFコントローラーを通じて制御する製品。VPCの作成やディスカバリ/可視化、論理ネットワークの設定、VPCごとのトラフィック可視化、セキュリティポリシー管理などが、単一のGUIコンソールから容易に行える。VPCごとに管理権限を委譲して、アプリケーション担当者自身で論理ネットワークの構成や設定変更ができるようにすることも可能だ。
一方、従来提供されてきたオンプレミス版のBCFは、製品名称が「BCFエンタープライズクラウド版(BCF-EC)」に変更される。BCF-ECでは新たに「VPCインテリジェンス機能」が追加され、オンプレミス環境でもVPC(E-VPC:エンタープライズVPC)単位でのネットワーク管理ができるようになる。オンプレミスアプリケーションのネットワークをE-VPCベースで管理することにより、パブリッククラウドへの移行時にも一貫したポリシー/設計を適用できる。また、マルチテナント環境の権限委譲も可能だ。
またBCF-ECコントローラーは、各種クラウド/コンテナオーケストレーター(Red Hat OpenStack、VMware、Kubernetes/Docker、Nutanixなど)と連携動作し、アプリケーションのVM/コンテナデプロイと合わせてVPCを自動構成するようなことができる。
「Big Monitor Fabricパブリッククラウド版(BMF-PC)」も発表された。これは、あらゆるVPCを対象にパケット/フローベースのモニタリングと分析が一元的に行える製品。こちらも管理者の権限委譲ができるため、複数のITチームがそれぞれ担当するアプリケーションの状況をモニタリング/分析することが可能となる。
多拠点に分散するオンプレミス版、クラウド版のBCF/BMFコントローラーを統合管理する製品「Multi-Cloud Director(MCD)」も追加される。MCDにより、ハイブリッドクラウド環境全体を一元監視/コントロールできる。
今回発表されたクラウドファーストネットワーキング製品群は、今年の第3四半期から第4四半期にかけて順次提供が開始される予定だ。
新製品投入で「ターゲット顧客は中規模エンタープライズにも拡大」
米Big Switch Networks 最高製品・技術責任者のプラシャント・ガンジー氏は、今回のクラウドファーストネットワーキング(CFN)製品ではハイブリッドクラウド環境全体を一貫性のあるかたちでコントロール、モニタリングできるようにすると語った。
「CFN製品は“クラウドネットワークの原則”に基づく。この原則は2つ。あらゆる場所をVPCで構成できること(VPC Everywhere)、あらゆる場所でフローの分析ができること(Analytics Everywhere)だ」(ガンジー氏)
過去25年間のネットワーク市場を振り返りながらガンジー氏は、“Web 2.0時代”に技術進化が停滞し、複雑化/高コスト化してしまったネットワークが、クラウドの動きに触発されて再び進化し始めたと語る。その最新形態がCFN、という位置付けだ。
既存ネットワークベンダーとの違いも、このクラウドネットワーク原則に基づくアプローチをとっているかどうかだという。既存ベンダーの多くは、これまでオンプレミスで実現してきたハードウェアベースのネットワーキングをそのまま仮想化してクラウドに持ち込む“レガシーファースト”な動きをしていると、ガンジー氏は指摘する。「その反対にBig Switchでは、パブリッククラウドのやり方や原則をオンプレミスに環境に適用すべきだと考えている」(ガンジー氏)。
多くのエンタープライズ顧客は、パブリッククラウドが持つ利便性、俊敏性のメリットは享受したい一方で、セキュリティやガバナンス/コンプライアンスにはやはり不安を抱えている。それならば、オンプレミス環境において“クラウドのようなかたちで”ネットワークを実現すればよい。これがBig Switchの考え方だ。ある大手顧客は、「オンプレミスネットワークでAWSに最も近づくことができるから」Big Switch製品を選んだと語ったという。
日本法人 カントリーマネージャーの田島弘介氏は、Big Switch製品はすでに、国内の大手通信事業者(固定/モバイル)、金融機関(大手都銀/証券/保険など約10社)、そのほか大手製造業、大学、データセンター事業者、Webテクノロジー系企業など30社以上で本番導入済みだと説明した。売上高は前年比80%以上の成長を果たしており、今後もこの成長を維持していきたいと語る。
今回の新製品群リリースによってターゲット顧客層も変化する。大規模データセンターを抱えるエンタープライズ層は引き続きターゲットだが、「新たに多くのミッドマーケットエンタープライズ(中堅企業)も入ってくる」とガンジー氏は説明する。「アプリケーションのコンプライアンスを強化しなければならない、しかしクラウドライクな(利便性の高い)体験のメリットも享受したいという中堅企業が、新たなターゲットになる」(ガンジー氏)。