「あ、これいいじゃん」というのが、着けてすぐの印象だ。手にした質感、耳に入れた際の感触、結果得られる遮音性。どれも文句ない。そしてトゥルーワイヤレスイヤフォンに付き物の、左右の音切れやフェージングも、確かにぜんぜん起こらない。
Jabra(ジャブラ)の「ELITE 65t」は、左右イヤフォン間の接続に、NFMI(近距離磁気誘導=Near Field Magnetic Induction)を採用したトゥルーワイヤレスイヤフォン。NFMIは左右ユニットを遅延なく接続し、音切れを解消するためのテクノロジーだ。
JabraはヘッドセットやBluetoothイヤフォンで知られるメーカーだが、元をたどれば世界最古の通信会社。トゥルーワイヤレスの鬼門である通信精度をきっちり上げてきたのは、ブランドイメージ的にも納得感がある。
公式通販での価格は2万3130円。他メーカーの競合製品は、いずれも2万円台後半。もしかして、これはお買い得なのではないか。
NFMIの時代に入ったトゥルーワイヤレス
この先、NFMI採用のトゥルーワイヤレスが主流になりそうな勢いだが、従来、あるいは大半の現行製品は何がいけなかったのか。それは左右のユニット間も2.4GHz帯のBluetoothでつないでいること。人体はほとんどが水でできているために、この電波を通さない。
イヤフォンを着けた左耳と右耳の間を真っすぐ飛べない電波は、頭部の周囲を反射しながら迂回することになる。その途中で電波がノイズの影響を受ける。これで音が切れたり、遅延が起きてフェージングの原因になったりするわけである。
ところが電磁誘導のNFMIは、左耳と右耳の間をそのまま直進できる。だから耐ノイズ性に優れ、遅延も少ない。
実際、EARINの「M-2」や、アップルの「AirPods」など、NFMI採用と言われる製品でフェージングは経験したことがないし、左右の音切れも皆無とまでは言わないが、実用上気にならない。
たった一週間程度の試用期間だが、ELITE 65tでもそうした現象は一度も起こっていない。有線接続並みに安定しているこれを経験すると、ほかは使う気になれない。それくらい、従来は音切れで悩まされることが多いのだ。
ただ、誤解のないように言っておくと、NFMIはあくまで左右イヤフォン間だけ。再生装置からイヤフォンまでは相変わらずのBluetooth接続だから、ここはノイズの影響を受ける。音切れするときは左右同時にパサっと切れる。でも、左右のコネクションはバッチリなので、ネックストラップタイプのBluetoothイヤフォンくらいのつもりで使っていい。
使い勝手にしても、老舗だけあってよく考えられている。