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山谷剛史の「アジアIT小話」 第155回

電脳街も廃れる中、あえて中国で自作PCを買う

2018年06月28日 12時00分更新

文● 山谷剛史

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パーツの知識がないと高くつくことも……

店員が紙の表に購入するパーツを書いていく

店員が紙の表に購入するパーツを書いていく

 ショップブランドPCを販売すべく、まずはパーツショップ店員が客に「ゲーミングPCか? ちょっと使うくらいでいいのか?」などといった、ざっくりとしたニーズを聞きつつ、手元の空白のPCスペック表が印刷された用紙に「CPUはこれ、メモリーはこれな。ビデオカードもつけておくな」などと書いていく。

 書き終わったら電卓を叩き、全部でいくらと計算し、メモしていく。中国でPCパーツ屋とは、単品で買うための店というよりは、パーツを買って組んでもらう店である。

 困ったことに、日本のように各PCパーツそれぞれに値段が書いてあるわけではないので、それなりにパーツの知識がないとだまされる恐れが高い。

 「Core i3を超える」という中科曙光製の中華x86 CPUへの換装を意識して、「Ryzen 3」ベースのシステムを組むことにする。

中国語パッケージは「超耐久」と売り文句がわかりやすい

中国語パッケージは「超耐久」と売り文句がわかりやすい

 まずCPUは「Ryzen 3 1200」、マザーボードはGIGABYTEのSocket AM4の「A320-S2H」とした。

 七彩虹など中国メーカーのマザーボードのほうが理想だったのだが、店員が「GIGABYTEはいいぞ! 世界で売れている!」と推してきて、筆者の中国メーカープッシュのパワーが足りず、結果GIGABYTEのマザーに決定。

 ストレージはKingstonの120GB SSDとした。これはそもそも中国のSSDがマイナーで電脳街であまり売られていない上に、筆者の経験として中国のマイナーメーカーのSSDをいくつか導入しては、いずれも突然うんともすんとも言わなくなったことがあり、作業PCのメインストレージとしては不安で導入できない、という理由もある。

 メモリーはKingTiger Tecnology製のDDR4 8GBだ。ビデオカードには激安Windowsタブレットでも知られる「昴達」(ONDA)製のNVIDIA「GeForce GT 710」搭載カードでかろうじて中国メーカー製をキープ。

パーツが決まったら、手際よく組み立ててくれる

手慣れたスタッフによる組み立てを間近で見る

 パーツは決まった。商談が終わるとスタッフが箱から次から次へとパーツを取り出し、箱を投げ捨てては迅速にPCを組み立てはじめ、1時間もせず完成となった。

カバーをかぶせる前はこんな感じになった

カバーをかぶせる前はこんな感じになった

側面と底面にコネクター類が並ぶ。底面の端子は実につなぎにくい

側面と底面にコネクター類が並ぶ。底面の端子は実につなぎにくい

 その後、動作確認をして、デバイスマネージャーを見て異なるパーツがつけられていないことを確認後、製品代を払い、持ち帰りとなる。値段は料金3600元(約6万2000円)と安くはない。

 例によって、値段の中にOS(Windows 10)代は含まれてもいないどころか、パーツショップに用意された「PCスペック表書き込み用紙」にOSの項目がない。

 それにも関わらず、謎の中華ソフトが多数入った余計なWindows 10がインストールされていたので、まっさらにした上で新たに筆者の所有する日本語Windows 10をクリーンインストールした。

2万2000円でノートPCが買える時代
自作PCの購入はおすすめしないが……

 中国ですら情報端末の主役はPCからスマートフォンに移ってしまった。電脳街のPC売り場でもおもに売られるのはノートPCであり、さらに淘宝網(タオバオ)では1300元(約2万2000円)程度からノートPCが買える。

 なお、1300元ノートはいくつか売り出されている。11.6インチないしは13.3インチモニターでCeleron N3450搭載、64GB eMMC、メモリーは4GBないしは6GB搭載の薄型ノートだ。

 中国のPCパーツショップで自作PCを組むなんて行為は、もはやリスキーでしかなく、オススメはできない。

 それでもあえて中国で自作PCを買う奮闘記を読んでくれて(あまつさえ中国で自作PCを組んでみたくなった)読者は、昔ながらのうさんくさいB級中国が好きだからだろうか。最後まで読んでくれた読者同志に感謝したい。


山谷剛史(やまやたけし)

著者近影

著者近影

フリーランスライター。中国などアジア地域を中心とした海外IT事情に強い。統計に頼らず現地人の目線で取材する手法で,一般ユーザーにもわかりやすいルポが好評。書籍では「新しい中国人~ネットで団結する若者たち」(ソフトバンク新書)、「日本人が知らない中国インターネット市場」「日本人が知らない中国ネットトレンド2014」(インプレスR&D)を執筆。最新著作は「中国のインターネット史 ワールドワイドウェブからの独立 」(星海社新書)。

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