文部科学省は2018年6月22日、「小学校プログラミング教育への取組状況に関するアンケート調査」の結果概要を発表した。調査は全国の市町村の教育委員会1733団体を対象に、2018年2月~3月に実施したもの。全体の42%にあたる722団体から回答を得た。
都市部を離れるほど低調
小学校プログラミング教育の取り組み状況を、「ステージ0: とくに取り組んでいない」「ステージ1: 担当を決めて検討中」「ステージ2: 研究会や研修を行っている」「ステージ3: 学校で授業を実施している」と4段階のステージに分けた集計結果は、ステージ0が57%。ステージ1およびステージ2が13%、ステージ3が16%という結果になった。半数以上がプログラミング教育の準備に未着手というのは、決して楽観視できない状況だ。
「無回答の722団体は、プログラミング教育に取り組んでいないから回答していない可能性もあるが、年度末で忙しかったというケースも聞いている」(文部科学省 生涯学習政策局 プログラミング教育戦略マネージャー 兼 「未来の学びコンソーシアム」プロジェクト推進本部 本部長代理 中川哲氏)。
北海道から沖縄までを8地域に分け、地域ごとのステージ割合を集計したところ、ステージ0の割合は、北海道(82%)、東北(73%)、九州・沖縄(64%)の順で大きかった。関東の34%と比較するとその差は堅調だ。「都市部を離れると低調している。ただ、ICT整備率との相関関係は低い」(中川氏)という。
さらにプログラミング教育準備に取り組めない、もしくは実施後に課題と感じた事項については、「情報不足」「人材不足」「予算不足」との回答が多かった。
上図に示したとおり、情報不足を理由に挙げるのはステージ0の教育委員会が多いものの、予算不足はステージ1~3の教育委員会が多い。「実際に取り組む学校では、プログラミング教育の外部講師を受け入れや、同教育用教材が必要になる」(中川氏)ため、これらの費用に予算が割かねばならず、先のような回答になるのだろう。
プログラミング教育の「意義」について情報不足
今回の調査結果から文科省は、プログラミング教育の意義や必要性に対する教育委員会・学校関係者の認識不足と、情報不足が課題だと捉えている。その対応として、未来の学びコンソーシアムの活動方針は、「ポータルサイトからの情報発信」「学校・教育委員会との対話」「民間企業との対話」の3ポイントに注力すると説明した。
まずポータルサイトからの情報発信では、選別した上で優れた実践事例と、実社会におけるプログラミングの活用事例を掲載する。「学校の先生がリプロダクションできるよう、指導計画書とサンプルコード、授業報告の3点セットを提供していく」(中川氏)という。また、教科調査官や教員へのインタビュー記事を掲載し、新学習指導要領に掲載されていない情報を学校現場へ届ける。
学校・教育委員会との対話については、現段階でプログラミング教育の導入に必要な工程表の例などを含めたパンフレットを作成し、校長会や連絡会議を通じて教育委員会や地方議会へ配布する。
民間企業との対話は、日本マイクロソフトが主導する業界団体WDLC(ウィンドウズ デジタルライフスタイル コンソーシアム)との連携や、実践事例の収集と共有の強化を図る。ただし、営利企業がプログラミング教材を開発し、PR活動に使うことは望まれず、「学校への過度な経済負担や、児童生徒への安全配慮が欠けている場合は対象外すると予定」(中川氏)だ。
小学校のプログラミング教育が始まる2020年度まであと1年10カ月。中川氏は、文科省からが全国の教育委員会への要望として、今夏の夏休みを利用して、「教材研究やプログラミング模擬授業を実施し、2019年度中には必要となるリソースを把握してほしい。未準備の学校が2020年度に入ってすぐに始められるものではない」と述べた。文科省では、2018年度中にステージ0を0%へ、2019年度中にステージ3の100%化を目指す。