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キヤノン社有車の走行ルートを分析、“類似度”算出で運用効率化につなげる実証実験も

キヤノンITS、ルート効率化に生かせる時系列位置データ分析技術

2018年06月14日 10時00分更新

文● 大塚昭彦/TECH.ASCII.jp

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 キヤノンITソリューションズ(キヤノンITS)は2018年6月14日、「数理技術による移動体データ分析技術」の開発を発表した。移動体の時系列位置データを分析することで、トラック運行ルートや営業ルート、倉庫や工場の作業動線などの見直しや効率化、コスト削減につなげていく。キヤノングループ2社の社有車から収集したテレマティクスデータを用いた実証実験も行っている。

「数理技術による移動体データ分析技術」を利用し、キヤノンMJグループ内で行った実証実験の概要

 この技術は同社 R&D本部 数理技術部が中核となって開発したもの。同社 数理技術部は、前身である住友金属工業の中央技術研究所において、1960年代から統計解析技術などを用いた生産運用計画などの最適化(OR:Operations Research)研究に携わってきた。

 今回の分析技術は、DTW(Dynamic Time Warping:動的時間伸縮法)アルゴリズムをベースとした手法。ある移動体の移動ルートと類似度の高いルートを膨大な過去の履歴から抽出したり、その反対に、ほかに類似する履歴のない(類似度の極めて低い)特異なルートを抽出したりすることができる。

移動ルートデータにDTW(動的時間伸縮法)アルゴリズムを適用することで、異なるルートどうしの類似度(距離)が算出できる

 実証実験では、キヤノンMJおよびキヤノンシステムアンドサポート(キヤノンS&S)の各拠点で利用されている社用車(全国で数百台)のテレマティクスデータ約1年分(300~400万レコード)が利用された。この社用車は月単位でリースしている車両であり、各車両のGPS位置情報はサーバーに自動送信/集約され、Webサイト経由で参照できるサービスがリース会社から提供されている。

 今回はこのデータを、拠点出発から拠点帰着までの1ルートごとに分割するなどデータの前処理を行ったうえで、DTWによる類似ルートの抽出を行った。その結果、複数の社用車が類似ルートを回っていることが発見できれば、顧客へのサービスレベルを落とすことなく、同乗による社用車の稼働台数削減、立ち寄り先の顧客分担見直しによる業務効率改善、担当エリア見直しによるルートの効率化などの検討ができる。

 また、社用車は曜日による稼働率の変動が大きいことがわかったため、一部をリース(固定費)からレンタカー(変動費)に置き換えて、総コストを最適化する試算も行ったという。

 キヤノンITSでは今後、物流、旅客、工場内の人の動きの最適化など、幅広い業種/業態に、この技術をベースとしたコンサルティングやPOCなどのサービスを展開していく方針。

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